●16 激闘、魔界の空の下 6
ついには氷山の揺れが大きな音を
氷山の内側から溢れてはち切れそうになる力と、それを封じ込めようとする力とがぶつかり合い、
氷塊の表面から細かい
際限なく増えていく罅割れから、黄金の輝きが噴き出す。さながら日の出のようだ。
「来るな」
「来るね」
そういえば〝金剛の闘戦士〟の力は太陽の力だ、って伝承にあったな――と思い出す。
俺が〝勇者〟なのに銀色で。
シュラトは〝闘戦士〟なのに金色で。
いやいや〝勇者〟で金色か銀色かってなら、普通は金色の方じゃないのか? と思ったところ、この世界に伝わる伝承にその理由が記載されていたのだ。
銀は
俺が元いた世界では太陽の力も
さらに言えば〝銀穹の勇者〟の力は
だから、むしろ金色なシュラトの方が〝勇者〟みたいな力を持っているのに、銀色の俺の方が〝勇者〟だなんておかしいよな――みたいな話を、当のシュラトとしたことがあった。
――そういえば、あの時のシュラトはなんて返答してくれていただろうか?
「――ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォッッッ!!!!」
雄叫びと共に巨大な氷山が砕け散った。
黄金の
一瞬、目を灼く
エムリスの〈
煌めく細氷が地上へと降り注ぎ、
そんな中に、異質な存在が一つ。
金色の〝
もはや筋肉が増えすぎて、人間のサイズを超越している。
どう見たって俺の三倍以上はある体長に、樹齢千年を越える大木がごとき
英雄だとか〝闘戦士〟とか〝氣〟とか、そんなものは全然関係なく。
あんな筋肉の
「――どうやらシュラトも【本気になった】みたいだね」
「ああ、久々に見たな、
俺とエムリスの視線は、揃ってシュラトの頭部へと注がれている。
目を模した
それが今、シュラトの
「――いくぞ」
「――ああ、やろう」
互いに申し合わせてから、俺達は素早く後退した。宙を滑るようにして、シュラトから距離を取る。当然、味方同士でも間合いを離すことを忘れない。
こっちもあっちも本気モードだ。お互いが近くにいては、存分に本領を発揮することができない。
よって、遠く遠く、俺達はそれぞれに
まるで導火線を伸ばしているみたいだな、と頭の片隅で思う。
最終的に、俺達三人は赤い空に三角形を描くような形で展開した。
俺が言うのも何だが、しっかりと距離を取るまで待ってくれるシュラトもシュラトで、何というか間抜けな時間が流れているなと感じる。
下の魔族の街では俺達がどう見えているだろうか。
いきなり現れて好き勝手して、戦いの余波で街を破壊しまくっているのだ。それこそ悪魔か何かだと思われているかもしれない。まぁ、魔族から悪魔に見られるとか何の冗談だって感じだが。
あるいは、先程のダイアモンドダストで天使か何かだと思われているだろうか。しかし天使ということは神の使いで、この世界で神と言えば魔族と敵対している聖神を指すので、結局は同じようなものか。
――いかん、つい思考が変な方向へと
「――よし」
俺は気合いを入れ直すと、改めて自身の左胸に当てた右手に意識を集中させた。
同時、エムリスやシュラトもまた、俺に合わせたように動き出す。
俺は覚悟を決め、十年振りに【この一言】を
「
決着の
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