●16 激闘、魔界の空の下 3
その日、
「――!? 何事だ!?」
落雷と呼ぶにはあまりにも大きすぎる
ただごとではない、と一瞬で理解した。
次の瞬間、通信の魔術によって配下の者から報告が入る。
『
「何事だ!
まず結論を述べろ、と要求したアルカイドに、通信をよこした配下は命令に従ってこう
『と、都市を
「な――」
魔族国家『エイドヴェルサル』、その首都である央都『エイターン』には魔王の居城があることもあって、厳重な防衛結界が張り巡らされている。
外敵の攻撃を完璧に阻止するこの大結界は、その名を『七星極大結界』といい、誰あろうアルカイドら
「馬鹿な!? そんなわけがあるものか! 何かの間違いではないのか!?」
央都の中心に
魔王に次ぐ実力者である大公七人の力と技術を結集した大結界は、どんな攻撃を受けても崩れることなどない――それこそ、かの魔王を討った〝勇者〟達の攻撃でもない限りは。
それほどの自負を持っていたが故に、自慢の大結界が突如として大破したという事実を、アルカイドは
しかし。
『ま、間違いなどではありません! お、央都の上空に何者かが現れ、結界に攻撃を加えたのです! その結果――たった一撃で防衛結界の【六割】が消滅しました!』
アルカイドの怒声に
「なん……だと……!?」
魔族の最高峰に位置する自分達が、柄にもなく力を合わせて張った大結界――たとえ
この瞬間、アルカイドの心の聖地にそびえ立っていた
「あ、あり得ない……! 一体何が……!?」
あったというのだ、という
『……!? か、閣下! 破軍大公閣下! ぞ、続報です! と、都市の上空に三つの影を確認! ま、まだ推定に過ぎませんが――その二つの正体は〝勇者〟と〝魔道士〟である可能性が高いと!』
「な――!?」
「〝勇者〟と〝魔道士〟、だと……!? ならば残る一つは何だ!?」
『ふ、不明です!
「――――」
もはや声も出ない。
まさにだ。
この場合、〝勇者〟一人が乗り込んできただけでも大変な事態だというのに、かてて加えて〝魔道士〟や〝闘戦士〟あるいは〝姫巫女〟が連れ立ってくるなど、最低最悪のドミノ倒しであった。
意味がわからない。
「な、何故だ……何故、こんなにも早く……!?」
はっきり言って、あちらがここまでドラスティックな手を取るとは予想していなかった。アルカイドの見解は先日の緊急会議で述べた通りだったのだ。
むしろ、このような展開になるとは思っていなかったからこそ、人界に間者を放ち情報収集するなどという穏当案を提出したというのに。
まさか、こんな形で予想が裏切られようとは。
「――ッ!? や、奴らは現在どうしている!? 都市への攻撃を続行中か!? それとも侵入されたか!?」
だが今は苦悩している場合ではない――と我に返ったアルカイドが情報を求めると、配下からさらに意外な返答があった。
『そ、それが――な、【仲間割れ】です! 〝勇者〟と〝魔道士〟および
「……っ……!」
かつて魔王を倒した〝勇者〟とその仲間が、再びこの『エイターン』の上空に現れ、一撃で『七星極大結界』を破壊したかと思えば、そのまま仲間割れをしている――
意味のわからないことに、さらに意味のわからないことが加わり、もはやアルカイドから理解しようとする気力すらも
マイナスにマイナスを掛ければプラスになるが、マイナスにマイナスを足した場合はマイナスのままなのだ。
そうしてアルカイドが絶句した直後、
『ゆ、〝勇者〟と〝魔道士〟および
矢継ぎ早に悲鳴のごとき報告が
そして、アルカイドが口を開くよりも早く、
『こ、こちらまで、こちらまで来ますっ! 閣下、閣下!! 今すぐお逃げ――!?』
そこで通信が
回線を繋いでいた魔力が途切れ、通信魔術が崩壊したのだ。
次いで、頭上からいくつもの轟音と衝撃が降ってくる。要塞の屋根に遮られて見えないが、おそらく〝勇者〟一味がこちらへと近付いてきているのだろう。
しかも音が鳴る毎に、相対距離はあからさまに
もう次の瞬間には、アルカイドの居る破軍要塞の
「馬鹿な……そんな、馬鹿な……!?」
寝室で一人、身を震わせる。
予想外の状況、早すぎる展開。アルカイドの生存本能が必死に『今すぐ逃げろ!』と
「こんな馬鹿なことが――」
あってたまるものか、と言おうとしたのだろう。
だが、その前に彼のいる要塞は〝勇者〟と〝魔道士〟、そして〝闘戦士〟の激突の余波を喰らい、跡形もなく吹き飛んだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます