●11 七剣大公と観光名所 2







 魔界――『魔の領域』と呼ばれる大陸の東に位置する、魔族によって治められた大国家。


 人類は未だ知らないが、その名を『エイドヴェルサル』という。


 その央都おうと『エイターン』にて。


「コリースーダンが?」


 魔王の居城たるエイドヴェルサル大城、その周囲を守護するように建設された七つの城砦じょうさい――『七剣大公セブンスター要塞ようさい』。


 その一つを治めている七剣大公セブンスターが一人、破軍はぐん大公たいこうアルカイドは、家来からの報告に太い眉をひそめた。


「侯爵ともあろう者が、人間にんげん風情ふぜい惨敗ざんぱいした上、おめおめと生きて帰ってきたというのか?」


 ザフォッスルメント・コリースーダン侯爵、敗走――


 人界との境界である『果ての山脈』近辺を守護する西部方面軍の一部が、昨日さくじつの爆発について調査するため、百万の手勢を率いて出動したという報告は受けていた。


 央都エイターンからでも『果ての山脈』の爆発は確認できた。爆音が空を裂き、大地を揺らした。ここ十年はなかった異常事態が起こったのは、一目瞭然だった。


「は。西部方面軍の本部に帰還した第一司令――コリースーダン侯爵の報告によれば、昨日さくじつの爆発は【あの】〝蒼闇の魔道士〟の仕業とのこと。さらに、その近くには【あの】〝銀穹の勇者〟の姿もあったとのことで……」


「ほう? そのせいで西部方面の虎の子であった〝十二魔天将〟が全滅させられた――と」


 続く部下の報告にしかし、アルカイドは退屈そうに、此度こたびの戦闘における最大の損失そんしつを口にした。


 ただ一度の戦い。それも、調査が名目だった作戦行動において、十二人もの幹部が戦死したのである。


 甚大じんだい、という表現が生易なまやさしく思えるほど、それは度を超えた損害そんがいだった。


「は。貪狼どんろう大公たいこうドゥーベ様からもたらされた情報によれば、それも間違いないかと……」


 あるじの言葉を肯定する家来は、口調こそ乱れてはいないが、全身の毛穴から脂汗をにじませている。


 状況は最悪だった。


 あまりにも突然すぎる凶報きょうほう。『果ての山脈』の爆発、その調査に向かった百万の軍勢が、なんと半日と経たず壊滅させられてしまったのだ。


 大半は再生産可能な魔物で編成されていたが、中には魔族、上級魔族も含まれていた。


 あり得ないことに最高責任者であるコリースーダン侯爵を除いて、将官クラスが全員戦死したという。


 十年前に魔王陛下が崩御ほうぎょしてからというもの、これほどの大失態があっただろうか。


 家来としては、あるじである破軍大公アルカイドの反応が肝が冷えるほど恐ろしかった。


「――ふざけているな」


 雷鳴を思わせる声が、低く響いた。それだけで家来は、思わず肩を震わせてしまう。


 魔界において魔王陛下に次ぐ権力を持つ大公。魔王陛下がお隠れになった今、その怒りはもはや魔界の王の怒りである。


 力なき者としては畏怖せざるを得なかった。


「……だが、そうだな。私一人で考えることではないか。ドゥーベからは他に何かなかったか?」


 ふ、と力を抜き、アルカイドが問いを放つ。


 魔界に七人いる大公――即ち『七剣大公セブンスター』と呼ばれる者達の中で、貪狼どんろう大公たいこうドゥーベは主に情報を扱うことにけている。


 国の内外に限らず、重要な情報は全てドゥーベの手元に集まる。そのような仕組みが古くから形成されているのだ。


「は。コリースーダン侯爵の報告によると〝銀穹の勇者〟はこう告げたそうです」


 一息吸い、声音を整えて家来は言う。


「『人界に近寄るな。手を出せば俺達が黙っていない』――と」


「なるほど、警告というわけか。それならコリースーダンが生還したのも頷けるな」


 勇者アルサルが残した言葉を聞いた途端、アルカイドは全てを了解した。


 コリースーダンは逃げ帰ったのではない。〝銀穹の勇者〟にメッセンジャーボーイにさせられたのだ。


 そうでもなければ、百万の魔物の軍勢を半日で全滅させるような相手に、コリースーダンが生き残れるわけがない。


 理解の早いあるじに家来は頷き、さらに続ける。


「は。つきましてはドゥーベ様から緊急会議を開きたいとの申し出を受けております。いかがなさいましょう?」


 アルカイドは重厚な頷きを返す。


「無論、参加するとも。この国は我ら七剣大公の合議でもって動いている。魔王様の亡き今、エイドヴェルサルの行く末を決めるには大公七人の話し合いが必要だ。で、日時は?」


「は。可能であれば、今すぐにでも、と……」


「よかろう。繋げ」


 破軍大公の決断は早かった。


 かしずいていた家来は頷くと、立ち上がり、部屋の隅へと移動した。素早く通信の魔術を組み上げ、発動させる。


 アルカイドの眼前に立体映像が浮かび上がった。


 おぼろげな光で編まれたのは、六人の大公の姿である。


『お待ちしておりましたよ、破軍大公アルカイド殿』


 真っ先にアルカイドの参加を認め、声をかけてきたのは貪狼大公ドゥーベだった。


「うむ、私が最後だったか。遅れてすまない」


 立体映像のドゥーベは首を横に振り、


『いいえ、アルカイド殿。他の方々も今ちょうど参加されたところです。遅れてなどいませんよ』


 見え透いた嘘だとわかりきっているが、これも社交辞令である。アルカイド自身も、遅れて申し訳ないとは微塵も思っていない。


 アルカイドは視線で他の参加者の姿を確認する。


 巨門こもん大公たいこうメラク。


 禄存ろくぞん大公フェクダ。


 文曲ぶんきょく大公メグレズ。


 廉貞れんてい大公アリオト。


 武曲ぶごく大公ミザール。


 七剣大公の揃い踏みである。


「して、議題は?」


 聞くまでもないことだったが、話のきっかけのためにアルカイドは敢えてそう質問した。


『もちろん、〝勇者〟と〝魔道士〟について』


 ドゥーベが答えると、他の大公らもつられたように口を開き始めた。


『意味がわからないな。何故、今になって〝勇者〟や〝魔道士〟が我が国にちょっかいをかけてきたのだ?』


『知ったことか! 奴らの行為はもはや宣戦布告だ! 打って出るべきであろう!』


『それはどうだろうか。〝勇者〟は魔王陛下を倒した相手であろう。我らが総出で戦ったところで、勝てる相手なのか?』


『関係あるまい! 正面から喧嘩を売られたのだ! 買うしかないであろうが!』


『落ち着きたまえ、武曲ぶごく大公殿。貴殿はいつもそうだ。国家運営も戦争も、勢いで決めるものではない』


『私としては人間との戦争になった方が、儲かるのでありがたいのですけどね? んふっ』


禄存ろくぞん大公フェクダ! この死の商人め! いいだろう、私が貴様を儲けさせてやる! まずは手始めに軍へ投資してもらおうか!』


『待ちたまえ。まずは人間、ひいては〝勇者〟と事を構えるかどうかを決めてからだ。安易な決断はよくない』


 早くも話がこじれ始めた。


 当然だ。


 七人もの権力者がつどっているのだ。


 抗戦派、慎重派、中立の者が揃えば意見など入り乱れるに決まっている。


 まとまる話もまとまらない。


 故に、満を持して破軍大公アルカイドは口を開く。


「貴殿らに聞く。この中に、〝勇者〟と〝魔道士〟のみならず、〝姫巫女〟および〝闘戦士〟の【記憶】を持つ者はいるか?」


 質問を繰り出した途端、大公らの口が閉ざされた。


 沈黙が落ちる。


『……どうやら、どなたも記憶しておられないようですね』


 やがてドゥーベが全員の答えを代弁するように、穏やかに言った。


 アルカイドは頷き、


「私もだ。【記録はあるが記憶はない】――やはり全員がそうであることが確認できたな。我ら七剣大公セブンスター、魔王様を守護するため確かに〝勇者〟一行と戦ったはず……なのだがな」


 自嘲の笑みを浮かべた。


 彼ら七剣大公はかつて、〝銀穹の勇者〟率いる四人の人間と死闘を繰り広げたことがある。


 激闘の果てに敗れ、おめおめと魔王陛下を討たれた――その記録が残っている。


 だが、誰の記憶にもその当時のことは残っていない。


 何故なら――


『仕方あるまい。我ら全員、魔王様の傀儡かいらいになっていたのだからな』


 一人がそう告げると、他の者が次々に同意の頷きを見せた。


しかり! 当時の我々は魔王様の魔力によって操り人形同然だったのだ! 覚えているわけがない! むしろ生き残ったのが奇跡だと言っても過言ではなかろうよ!』


『魔王様に操られていたのは我々だけではない。エイドヴェルサルに住まう全てのものがそうだったのだ。我らが生み出す魔物さえ例外なく、な』


「その通りだ」


 アルカイドは深く頷く。


 魔王陛下が生まれた瞬間より、魔界『エイドヴェルサル』は一個の生命体と化す。魔族も魔物も例外なく、魔王陛下の意思に従う手足となる。


 十年前、魔王陛下が〝勇者〟に討たれるまではずっとそうだった。


 そこに魔族および魔物の意思はなく、故に記憶は定着せず。


 現在、エイドヴェルサルに生きる者の全てが、十年前の戦いを記録として、知識として知っているが、実体験としては欠片も覚えていない。


 気が付いたときには戦いが終わり、魔王陛下は〝勇者〟に討たれ、国土のほとんどが焦土と化していた。


 彼ら七剣大公はそこを始点として、十年かけて今の状態にまで魔界を復興させたのである。


「我らには戦いの記憶がない。故に――【我々は勇者の強さを知らぬ】」


 再び、しん、と場が静まり返った。


 今日までは国を復興させるのに手一杯で、人界への侵攻など考えもしなかった。


 しかし、昨日の今日で事態は急変した。


 いきなりの『果ての山脈』の大爆発に、その調査に派遣した西部方面軍の全滅である。


 あまつさえ〝勇者〟からは『人界に手を出すな』という警告が突きつけられた。


 ふざけるな、とこの場にいる全員が思ったことだろう。


 誓ってエイドヴェルサル側から人類に対して行動を起こしたという事実はない。これは完全な言いがかりだ。


 だからこそ、この場合の〝勇者〟からの警告はいっそ挑発ちょうはつとも取れる。


 ある日突然、あちらから殴りかかってきておいて『反撃してきたら許さない』と言っているのだから。


 こんな理不尽な話があるだろうか。


 主戦論を唱えている武曲ぶごく大公ミザールではないが、アルカイドの脳裏にも『さては遠回しな宣戦布告だな?』という思考がよぎったほどである。


「知らぬが故に、判断が難しい。勝機が見いだせぬ」


 アルカイドの立場としては、ひとまず慎重論を唱える他ない。


 国の復興はまだ完遂していない。今の状況で人類と戦争状態に入るのは避けたいところだ。


『しかも記録によれば、〝勇者〟一行は魔王様を討っているのだからな。当然、我らが束になったところで敵うはずもないが……』


 一人がアルカイドの意見に同意するが、


『だが待って欲しい。何故〝勇者〟は突然そのような警告をしてきたのだ? 何か理由があるのではないか? 我らの目をそらすため、もしくは、人界に攻め込んでは欲しくないがために先手を打ってきたとは考えられぬか?』


『おお、それはつまり、我らに攻められては困る状態であるが故に、〝勇者〟はコリースーダン侯爵を使って脅しをかけてきたと?』


『ならば好機ではないか! 〝勇者〟めの策略を逆手に取り、やはり我らから打って出るべきである! 今こそ勝機! しゃらくさい謀略など粉砕して蹂躙じゅうりんして撃滅あるのみだ!』


 奇妙な〝勇者〟の行動に違和感を覚え、深読みする者も出てきた。


 武曲ぶごく大公に至っては、何はともあれとにかく戦いたいだけのようだが。


『そういえば、結局のところくだんの爆発については何かわかったのですか? ドゥーベ殿』


 ふと貪狼どんろう大公ドゥーベに問いが呈される。ドゥーベは瀟洒しょうしゃな動作で頷き、


『ああ、そういえば。その件についてお話があったのです。現地での映像がありまして。皆様、どうぞご覧ください』


 言うが早いか、記録映像を再生させた。


 新たに表示された立体映像は、どうやら『果ての山脈』周辺を撮影したものらしい。


 突如、魔術で増幅された大きな声が響いた。




「 魔族、そして魔物の諸君! よくぞ集まってくれたね! 」




「 君達がここにつどった理由はわかっているよ! あそこの大穴がどうして出来たのか、それを調べに来たのだろう? 」




「 何を隠そう、あれの犯人はボクだ! おっと、この距離じゃ顔が見えないかな? ほうらっ! 」




 次の瞬間、『果ての山脈』上空に超巨大なスクリーンが現れ、幼い少女の顔が映し出された。




「 知っているかな? 君達の大事な魔王を倒した一人――そう、〝蒼闇の魔道士〟とは、このボクのことさ! 」




「 わかるかい? ボクは君達の魔王様のかたきだ! にく怨敵おんてきだ! そのボクがこの山脈に大穴を空けた! 」




「 理由は特にない! ムシャクシャしたからやった! それだけだ! 」




「 というわけで、君達に言いたいことは一つだけ! 」




「 文句があるならかかってこいっ! ボクは誰の挑戦でも受けるぞーっ! 」




 そこでドゥーベの再生した映像は終了した。


『――以上です。いわゆる〝犯行声明〟というものでしょうか……』


 立体映像が消えた途端、得も言えない沈黙が降りる。


 七剣大公全員が、言葉には出来ないほど微妙な表情を浮かべていた。


 やがて、


『――何だ今のは。意味がわからん』


 正直な一人がはっきりと言った。


 んんっ、と何人かがわざとらしい咳払いをする。


『……そうだな。確かに少し意味がわからないが……』


『犯人はこの人間、いや、〝魔道士〟ということか……』


『うむ、そのようだな』


『そうか……』


 言葉に詰まる。


 またぞろ気まずい静寂が訪れ、


『――いやまて。ムシャクシャしたからやった、と言ったのか? この子供、いや、〝蒼闇の魔道士〟は? ただの腹いせか八つ当たりで、我々との境界線である『果ての山脈』を攻撃したと?』


 改めて一人が問題提起しようとするが、


『うむ……』


『そのようだな……』


『なんともはや……』


 七剣大公の大半が、歯切れ悪く首肯するだけ。


 アルカイドとしても二の句が継げない。


 それほど衝撃的な映像だった。


 さらに言えば、何の参考にもならないことこの上なかった。


「――色々と裏があると深読みすることも可能だが、ひとまずは額面がくめんどおりに受け取るというのはどうだろうか、貴殿ら」


 意を決してアルカイドはそう提案した。


『額面通り、と言いますと?』


「そのままの意味だ。〝蒼闇の魔道士〟は腹いせに『果ての山脈』を爆発させた。他に他意はない。となれば〝銀穹の勇者〟の警告は、我らが爆発を機として人界に手出しするのを防ぐためのもの。つまり〝勇者〟は〝魔道士〟の尻拭いをしたものと考えられる」


『ほう。それは確かに』


『あり得るな!』


『なにせ子供のやることだからな』


 半ば思いつきの考察であったが、意外にも大公らにはすんなりと受け入れられた。それだけ先程の〝魔道士〟の言動が支離滅裂しりめつれつにして傍若無人ぼうじゃくぶじんだった、ということなのだろう。


「であれば、我らが手出しをしない限り、〝勇者〟もことを起こすことはあるまい。おそらくだが、その可能性が高いと思われる」


『いやはや、私としては戦乱を希望したいところですが、残念なことに同感でございます。考えてもみれば、〝勇者〟がその気ならコリースーダン侯爵は帰らぬ人となっていたでしょうからね』


『はははは! 死の商人がこのように言うのだからな! その可能性が最も高いということか! オレとしても非常に無念である!』


禄存ろくぞん大公フェクダ殿に、武曲ぶごく大公ミザール殿まで同意見か。これは珍しく意見が割れないな』


『しかし、だからといって何もしないというのもどうなのだ? 我が国の威信はどうなる? このままでは泥を塗られたままになるぞ』


 新たな問題提起に、アルカイドは頷く。


巨門こもん大公メラク殿の言う通りだ。当然、このままにはしておけん。ついては、人界に間諜かんちょうを送る、というのはどうだろうか?」


 この提案に真っ先に反応したのは、情報を一手に担う貪狼どんろう大公ドゥーベだった。


『人間の世界にスパイを送るというのですか?』


左様さよう。これまで我らは人間に関する情報をまったく集めていなかった。その結果が此度こたびの事態だ。やはり何をするにも情報が必要なのだと、ここにいる皆が痛感したことだろう。これを機に人界へ工作員を送り込み、情報収集にあたらせるのが得策だと思うのだが、どうだろうか」


 立体映像として映る大公らの顔を一人一人確認すると、


『賛成だ』


『確かに妙案だ』


『むしろ今までしていなかったのが、おかしかったのですよねぇ』


 おおむね賛同が得られた。


『それでは、人選と運用については私にお任せください。このドゥーベ、我が栄誉あるエイドヴェルサルの情報をつかさどる者として、必ずや成果を上げてみせますとも』


 ドゥーベが率先して名乗りを上げるのは、アルカイドも想定していた。本人の言う通り、情報に関することは歴代の貪狼どんろう大公たいこうが担うべきものという気風がある。このような提案をすれば、真っ先に食い付くだろうと思っていたのだ。


「無論だ。我々にそのような技術や知識はない。もとよりドゥーベ殿にお任せしようと思っていた。こころよく引き受けてくださるということで、よろしいか?」


『当然でございます。どうかご期待ください』


 うやうやしくうドゥーベに、アルカイドは内心で嘲笑を漏らす。


 ――知っているぞ。貴様はそうやって我らの中にも間諜を放っているのだろう? やり口が見え透いているぞ、薄汚い犬めが……


 遠回しの皮肉に、果たしてドゥーベは気付いているのか、いないのか。あるいは気付きながらも、表には出していないだけかもしれないが。


「では決まりだ。まずは人界の情報を集める。その内容によっては、また我ら全員で揃い、会議を開こうではないか。人界と戦争ことを構えるのは、それからでも遅くはない」


 大公らはそれぞれが『賛成』と、異口同音に答えた。


『それでは、今回の緊急会議はここまでということで。皆様、ご苦労様でした』


 進行役のドゥーベが結ぶと、会議はお開きとなった。立体映像の大公らは次々に姿を消し、最後にはドゥーベの姿も消失する。


 かくして、魔界から人界へ諜報員が派遣されることが決定した。


 この結果、魔国エイドヴェルサルもまた『第一次人界大戦』に巻き込まれていくことになるのだが――


 混沌こんとんから混沌こんとんへ。〝勇者〟と〝魔道士〟、力ある者の行動はそれが例えどんな些細ささいなものであっても、世界を揺らす。


 波紋は広がっていく。どこまでも。


 やがてそれは、とある少女が言ったように、津波のごとく――







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