【KAC20245】俺の友達と友達の兄貴とその彼女が修羅場過ぎる。
姫川翡翠
東藤と村瀬と修羅場
「(しっ! しゃべるな!)」
「(お、おう。ごめん。でも俺までついてくる必要あったんか?)」
「(なんやねん! もう!)」
「(正直気まずいだけやから巻き込まんといてほしいんやけど)」
「(黙れ!)」
「(さっきからうるさいのは村瀬の方やからな?)」
「(ええから静かに素早くついてこい! 東藤遅いねん! あんまり離れ過ぎたら見失うやろが)」
「(す、すみません。なんやこいつ怖っ。んで事情が事情なだけにツッコミにくいし)」
「(あ、コンビニ入った)」
「よし、これで一旦息抜きできるな」
「そんなことはない」
「それより、ホンマにあれお前の兄貴なんけ? そんで女の方は彼女じゃないん?」
「完全にあれは兄貴で、女は彼女——
「それじゃあ、あの女の方に心当たりは?」
「知らん。一応佐奈にも写真送ってみたけど、心当たりないって。つーか正直知りたくもないわ、クソ兄貴と手を繋いでるクソ女の素性なんて死ぬほど興味ない」
「そうか」
「そんで佐奈も後から合流するらしいから。バイト終わったらすぐこっち向かうって」
「え、気まず……」
「あぁ?」
「あ、はい。すみません」
「(おい、出てきたぞ)」
「(おう……でもお前いつまでこうやって尾行するつもりなんや? これ以上どうしようもないやろ)」
「(浮気の決定的な証拠を押さえるまでや)」
「(手ぇ繋いでる写真で十分な気がするけど)」
「(それやったらどうにでも言い訳できるやろ)」
「(それは……そうかもしれんけど)」
「(まあ……そやな。別に東藤は帰ってもいいで。確かに、東藤にはいい迷惑やったな。すまんかった)」
「(……嫌や。今村瀬を解き放つと暴れまわりそうやし。誰かが手綱は握っておかないと)」
「(……別になんでもええけど。足だけは引っ張んなよ)」
「(何をいまさら。俺が引くはお前の手綱や言うたやろ)」
「(……ほな頼むわ。放すなよ)」
「(うん、って、村瀬ストップ。お前のお兄さんたち、立ち止まってるわ)」
「(ちょっと待て、これって……)」
「(うわっ、おい待て!)」
「待つか! 手を放せ!」
「(黙れ! バレるやろ!)」
「今からあいつのこと殴りに行くんやからバレるも何もないわ!」
「(放さへんわ! 舌の根も乾かんうちに、このアホ! そんなもんあかんわ! ええから1回落ち着け! どう考えても今が決定的証拠を取るチャンスやろが! ホテル入る瞬間を撮れ! それまでは絶対にバレたらあかん!)」
「……!」
「(ほら、今や!)」
「……」
「よし。撮れたな。そんならまた出てくるまで待とう。その間に一旦頭冷やせ。暴力は絶対にあかん。そんで佐奈さんとも合流しよう。彼女の話を聞かんと部外者が勝手に盛り上がってもしゃあないやん。どこまで行ってもお前の兄貴とあの女と、そんで佐奈さんの問題やろ。当事者なしで進めていいことじゃない。わかったか?」
「……わかった」
★
「けー君?」
「……ああ、佐奈」
「その……
「……」
「……」
「……知らん女と手つないで、そのままホテルに入っていったのは写真で送った通りやけど」
「……」
「……ごめん」
「なんでけー君が謝るんよ。悪いのは翔やのに」
「ホンマ、さっき一発殴っといたらよかった」
「それはアカンよ」
「……佐奈もそういうんやな」
「当たり前やん! そんなんアカンに決まってる! けー君が怪我するかもしれへんやん!」
「そっか。うん、それならさっき東藤が止めてくれたんは正解やったな」
「そうそう、あなたが東藤君やな。けー君からいつも話聞いてるで。ごめんな巻き込んでしまって」
「あ、いえ、友人のためならこれくらいなんてことないです」
「ついさっきも帰りたい言うてたくせに」
「黙っとけ」
「ふふふ。2人は本当に仲いいんやね。……でもごめん、今はいろんな意味でゆっくり世間話する余裕はないかも、ごめんね。また改めて3人でご飯にも行こな」
「あのアホどもが入って1時間半くらいになる。だからもしかしたらそろそろ出てくるかも」
「……そんなん言ってたらちょうど出てきたっぽくない? あれちゃうか村瀬の兄貴」
「……翔」
「村瀬、どうする? 今度こそ行くか?」
「佐奈。行こう」
「……」
「佐奈」
「……」
「…………怖いよ」
「……大丈夫やから。僕だけは絶対に佐奈の味方やから」
「……じゃあけー君、手ぇ出して」
「ん」
「何があっても最後まで、この手だけは放さないで」
【KAC20245】俺の友達と友達の兄貴とその彼女が修羅場過ぎる。 姫川翡翠 @wataru-0919
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます