第26話 ソマとケラス2

『翌日』


 朝、ソマがいつものように台所へ行くとケラスが朝食を作っていた。


「あっ、お、おはよう」昨日の悪夢といい、思いがけない告白でソマは頭がいっぱいで寝不足気味だった。


「おはよう。今日はゆで卵を作ったよ」ケラスはいつものようにかえす。




「昨日はありがとう。紅茶も美味しかったし、絵本も楽しかった」そう、ソマもなるべく平静を装ったつもりだった。




「いいってことよ。錬の分も出来たから、持って行ってくれる?」




「わかったわ。ありがとう」


ケラスから手渡されたお皿を持った時、少し態勢を崩した。その時、ケラスが腕を伸ばしてソマの身体を支えようとした。




思わず持っていた食器類が床に落ち、入っていたピーマンやニンジン等色とりどりの野菜が勢いよく床に散らばっていった。ケラスは、ソマの身体を支えたままだった。


「あ、あの。ごめんなさい。私ったら」ソマはケラスの腕を振りほどいて、自分の部屋に小走りで戻っていった。


丁度、マネがソマとすれ違うように起きて来た。


「ソマ、おはよう」


「‥‥」


「ケラス、ソマはどうしたの?様子が変だったけど。あっ」床に散らばった、おかずや食器に目がいった。ケラスは、それらを床にかがんで拾い集めている。




「お、おれさ。昨日ソマによけいなことを言ったかも」食器を拾い集めながら、やや興奮気味に言う。




「何を言ったんだよ」マネも、散らばったおかず類を拾いながら聞く。


「俺の想いは伝わっているかって」


「そ、そんなことを言ったのか⁈ それは流石にストレート過ぎるだろ」


「昨日ソマが悪夢を見たらしくて、すごくうなされていたんだ。その時に声をかけたら『リンネ助けてって』必死で、そいつにすがろうとしているんだ。それを聞いたらなんだか無性に腹がたってきて、誰だよそいつって」




「だから、告白したのか⁈ まあ、気持ちもわからんでもないが。その男は多分、この間言っていたリキッドだろうなあ。ソマ以外は皆、お前の想いに気がついているんだよな。でもソマにはきっとお前のことは大事な家族なんだよ」




「ああ、そんなことは初めからわかっているよ。でも、たまらなくて口からでちゃったんだ。今朝も変に意識させちゃってさ、なんだかとても後悔しているよ。しばらくは俺と顔あわせずらいだろうから2、3日ぐらい、最近手がけている現場に泊まってくるわ」


「それはそれで、ソマは悩むだろうなあ」


「じゃあ俺は、どうすればいいんだよ。くそぉ」ケラスは頭をかきむしる。


「まあ、言ってしまったものは仕方がないよな。わかった。現場に泊まるって伝えとくよ」マネは、ケラスの様子をみながら声をかける。

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