第27話 マネ先生とアンナ先生

マネは、一週間ぶりの出勤である。気持ちが不安定なアンナと家に籠っていたためだ。


「本当に、大丈夫かしら⁈ アンナが仕事にでるのは、もうちょっと後にしてもいいんじゃない?」ソマは、マネの後ろからひょこひょこついていくアンナを見ながら言う。


「ちょうど今、学校側も先生の補助要員を探しているんだ。僕も小等部は週2


日だから、学校側に話をしたら早速連れてきなさいって言われて。もちろん、今のアンナの細かな様子は伝えてあるから」


(もちろんアンナの優秀さはわかっている。でも、今はメンタルが病んでる。それに、優秀さはあくまでもメイドでの範囲である。先生だなんて、務まるのかしら?もし、新しいことをして行き詰まったら‥)


昨日アンナがスリープモードにしている時に家族全員で話し合った結果、多数決(4人しかいないが‥)でしっかりもののマネに任せてみようということに決まったが,


やっぱり反対したソマは心配でたまらなかった。


◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇


 マネとアンナはジャックを含めた五人の生徒と合流して学校についた。


学校と言っても、まだ小規模の建物だ。小学部と中学部が隣合わせに形ばかりの塀で仕切られている。独自なペイントで動物『今現在、動物は絶滅して存在していない。ゆえに初めて見るものはもちろん皆が、魅了される』が至る所にかくれんぼしている様子が描かれていてかわいらしい。この下流地区では、まだまだ学問というジャンルに関心を示す親も子も少なかった。それでも、はじめた頃は2,3人だったのが今では、40人程度には数が増えていた。それにつれて先生達も国からの斡旋や募集で集まったもの、口コミで優秀な人材を探して来てもらったりしていた。


マネとアンナは、学校につくと職員室へと入っていった。机が向かいあうように並べてあり、先生方がお喋りをしていたり朝の学習準備などをしていた。その間を通って、一番奥の校長室へと向かう。ノックをして戸を開けると、校長は立ち上がり歩み寄ってきた。


「おはようございます。校長先生」マネが声を掛ける。


アンナも、会釈をする。


「おはようございます。マネ先生。こちらが、今日から新しく来てもらえるアンナ先生だね」恰幅がよく、人の良さが顔に滲みでている。


「‥よ、よろしくお願いします」小さいながらも、なんとか聞き取れるぐらいの声をだした。


「私は、校長のキャキルといいます。事情は、マネ先生から伺っています。大変な思いをされましたね。とにかく今は、生徒の見守りというか傍にいることから初めてください。よろしくお願いしますね」そういうと、片手を差し出した。


アンナも、健常の方の腕を伸ばした。


すると、にこやかな顔でもう片方の手で包み込むように握手をされた。


そんな些細なことが、アンナはとても嬉しかった。


 その後、この学校の方針等を簡単に説明される。

まず、主要科目は4教室に分かれること。Ⅰクラスは特別クラスと呼ばれている。体育や音楽やアート各々でのエリアでの上位3位以内は特待生と呼ばれるが、大概その子たちこのクラスにほとんどいる。その得意科目以外はやる気がないもの。朝早く作物の取入れなどを手伝って教室ではほとんど寝ていたり、給食を食べにだけ来ているものなどがこのクラスの特徴だ。基礎的な主要3科目を取得するまでは卒業ができない。その他の子達は成績で2、3のクラスに分けられる。まだ、Ⅰクラスの子達よりは勉強に対して前向きであるが、指導しやすくするために成績で分けられている。また体育や保健、音楽は、選択制にしてある。


子供達に寄り添いながら基本的な教育(義務教育)を、卒業までに習得してもらうのが、この学校の指針なのだ。子供達が将来知識があるものに騙されて利用されたり、陥れられたりして悪の道に進ですさんだ人生を歩まないように基本的な教育をする場所なのである。


また下級エリア民は、貧困さゆえにそうなりやすい。現に、家の裏の畑ではやっと実った作物を盗まれたり荒らされたりして、その対策に始終追われている。


(素晴らしいわ。あの子たちの将来‥そんなことまで考えたことがなかった)説明を聴いているうちに、アンナは、今朝一緒に登校してきたジャックや他の子供たちの顔が浮かんでいた。


キャキルの指示によって、アンナは先生方の机の前に立って自己紹介をする。


「ア、アンナです。いろいろとよろしくお願いします」


らる邸のことがおきるまでは、陽気で自信がみなぎっていたが今ではすっかり内向的になってしまっていた。


「皆さん、アンナ先生は仕事先でつらいことがあってしばらく家に籠っていたそうです。初めは生徒の見守りから初めてもらいます。アンナ先生には教科の担任ではなく生徒たちの話相手というか、今後出来ることを見つけていってもらいます」


そして、机に座っている順番に先生方の自己紹介が始まる。


「私は、教頭のアインハです。マネくんをみても、ロボットは優秀ですから私の地位が脅かされていますよ。今後ともよろしくお願いします。わからないことがあれば、なんでも聞いてください」背が小さく痩せていて神経質そうな男は、目を細めて愛想笑いをしている。


「算数担当のサイリです」不愛想だが、几帳面さが前面にでている男だ。


(えっ!!)


「国語の担当のコイガンです。よろしく!!」背は低いが、声が大きい男だ。


「音楽の担当のオトバです。色んな曲持ってきてるから、貸してあげる。よろしくねー」陽気で人見知りしない性格の女。声が頭のてっぺんからでている感じだ。


(に、似てる)


「僕は体育の先生のカラダンです。生徒達にもっと楽しみながら、身体を鍛えてほしいと思っています。この中で、最年少です」ガタイがよいが、少年の目のように澄んでいる。


(うっ)アンナは1人の先生が気になって仕方がなかった。

「アート全般の担当アーケンです。アートに関してなら、なんでも相談に乗るから、いつでも言ってね」着ているものと言い、机のモチーフといい独自な美意識を持っている女


「アーケン先生にこの学校のデザインをしてもらったんですよ」校長が、笑いながらいう。


アンナは、校舎の壁に描かれていたゴリラがバナナを食べていたり、おしりとシッボだけが、ちょこんとでている豚を思い出していた。


(あ、あ)そして、いよいよその気になる人に順番は回ってきた。


「私は保健の担当でホシカです。授業がない日は、保健室でケガ人や運ばれた子たちを見ているの。まあ、簡単な処置しかできないんだけどね。よろしく」とてもきれいで清楚なイメージの若い女である。顔が小さくて手足が長くその容姿はまるで、そうシグナを思い出された。


「うっ、うっ」堪えていた涙が、溢れだした。

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