第21話 ソマとリンネ   

ソマは、フラが帰ってからもやるべきことを探せなかった。


(私のやるべきことって?いったい何?)


とりあえず、家の中をウロウロと歩いていた。中利様宅や、らる宅とは(思い出すだけで、怒りが蘇るが‥)比較にならないほど豪華で広い。一つ一つの調度品が、初めて目にしたものである。


ふと、飾り棚の何脚かの写真立てが目についた。写真立ては、裏返しに無造作に重ねてあった。その下には、カリアン(オセロゲーム)があった。


気になって写真立てを裏返してみると、中利様とリンネ様との写真だった。


(どうして、裏返しにしてあるのだろう?)ソマはこの写真立てを、持っていた雑巾で丁寧に拭き表にして飾った。それからまた歩きまわった。


(んー。私のやるべきことかあ。難しいなあ。そうだ。リンネ様もいないし、ちょっとだけいいかしら)




大きな壁に向かって手をつき、頭を壁でささえて床から足を蹴った反動で逆立ちをする。(供の頃に、よくやったわ。懐かしいなあ。近所の子供達の中で一番長く逆立ちができたっけ)でも身体を支えている両腕が、ブルブルと震えだした。顔がほてってきて、たった何秒かで床に倒れ込んだ。


(時が経ったとはいえ、なんだか悔しいわ。よし、もう一回)




◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇◆◆◇◇◇




「うーん、もうお昼かあ。あの、人間の様子でも見にいくか」仕事に没頭していたリンネは体内アラームに気づく。


部屋から出て階段を降りようとすると何やら、せわしく動く様子が目に入った。


「な、何やっているんだ⁈」


階段を降り、飾り棚の前を通ろうとして違和感を感じた。


「写真立てが、飾ってある!!」一言いってやろうと、足早にソマの所へいそぐ。


「お、まえ、いったい人の家で何やっているんだ?」


「えっ、リ、リンネ様? きゃあ」急に視界に入ったリンネにとまどい、体制をくずして床に倒れる。


「あ、あの、すみません。やることが、見つからなくて」


「だからって。‥おまえは、今日何しにここへ来たんだ?」


「‥‥すみません」


怒った態度に、言い返す言葉がなかったソマだった。


「まあいい。確かに、フラの後じゃあ。何もやることはないだろう。そうだ、いいことを思いついた」そういうと、リンネは少し後戻りして再び来た時にはカリアン(オセロゲーム)の箱を手にしていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る