第18話 家族団らん
「ただいまー」いつものようにソマは、部屋に入る。
「お帰りー」マネの声がかえってくる。
そして、マネに抱きついたアンナの姿に微笑む。
あの日久し振りにジャックと外に出てからのアンナは、マネの後をずっと片時も離れようとしなかった。そして、時おり愛おしそうに抱きついた。
マネは、その日から1週間仕事を休んでアンナの傍にいた。
◆◆◇◇◇
「おい、おい、稼ぎ頭の一人がこんなに休んじゃあ。生活が、まわらないぜ」と、ケラス。
「あれから仕事先の上司とも話して、明日から出勤することにしたよ」
「そうね。また私たちが交代でアンナは見守るわ」
「でも、ちょっと姿が見えないと、また、泣き喚くぜ。本当に、どうしちゃったんだか」アンナの方に視線を移しながら、ケラスは小声で言う。
「でも、恋人がいない人間のソマには刺激が強すぎないか」と、ジョーダンっぽくケラス。
「姉ちゃんは、俺らのお母さんの役目もあるんだって!!」すぐさま、錬がほろうしてくれる。
「そ、そうよ。あんた達の世話で大変なのよ。別に、恋人とか興味ないわよ」と言うと今日初めてあったAIロボットのことを思い出していた。
「そういえば中利様宅でデジャンの時にお世話になった『頼もしい男』っていっていた人が来たの。AIロボットよ。」
「デジャンかい?」
「キリッ何とかって言ってたわ」
「もしかして、キリット(大統領)じゃないか⁉」マネは、アンナに抱きつかれながらも声を出す。
「あっ、そうそう。それだわ」
「えっ!!」とマネ。
「えっ、キリットが来ていたの」錬は、思わず大きな声が出ていた。
「な、なんだよ。そのキリットって」ケラスは、その様子を見逃さなかった。
「俺たちが、今この整備された家に住んでいるのも、学校制度や仕事やそういった環境もみんな今のキリット(大統領)が決めたことなんだよ。今まで、下級エリア民なんか放置状態だったろ。今までにない、改革を行ってくれてるんだ」アンナに抱きつかれたマネの代わりに、知識のある錬がわかりやすく話す。
「へえー」
「あ、あのロボットが、キリット‥」
「キリットって、ロボットなんだな。確か、今までは人間のはずだろ?でも、なんで姉ちゃんの仕事先に来てるの?」錬は皆が知りたがっていたことを訊いた。
「そういえば、アマンって呼んでたわ」
「お、お母さん?ソマの利用者様って、名前何て言ったっけ?」マネが、振り返りながら聞く。
「メルナ 中利様よ」
「確か、カリフィ(前副大統領)じゃないか。前大統領の補佐だよ。大統領をいろいろ、助ける役目なんだ。」マネは、納得したように言う。
「えっー。姉ちゃんすごいじゃん。そんなすごい人のところへ、仕事行ってたの?」
「へぇ、よくソマが務まったな」と、ケラス。
「わ、悪かったわね。私で。あ、あのお婆ちゃんが、カリフィ?でもいつも、貧乏人って言われてたわよ。確かに気が強くて、それでもやさしい所があるから続けてこれたんだけれど。な、なんだか。急にいろんなことがわかって、びっくりよ」
アンナはマネに抱きつきながら、うつろな瞳で話を訊いていた。いや、聞こえていた。
(いいわね、ソマは。私よりも仕事ができないのに、いつも皆に愛されている。今回もキリットとカリフィだって。比べられないくらい運があるのね。それに比べて私は‥)
そんな心の声が聞こえたかのようにマネは少し力を入れて、再度アンナを抱きしめ片手で頭を撫でる。
「アンナ、マネに飽きたら、俺がいつでも変わってやるからな」ケラスもマネに睨まれつつ声をかける。
「あら、大もてね」とソマ。
(ちがうでしょ)皆の声だった。そう、ケラスはソマが大好きだった。なのに好きな子にはいつも、つっかかってしまう性格なのだ。ソマ以外は、みんな気がついていたが。案外ソマは気がついているのかも‥。アンナは、時おりそう思うことがあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます