第16話 一月後
ソマは仕事が終わり、いつものように可愛い花が数本描かれた我が家の扉の前にいた。
そして深呼吸をして、笑顔をつくり元気よく扉を開けた。
「ただいまー。ふっー。本当に、いい運動になるわ」そして、アンナの様子を伺いながら、錬とケラスに視線を送る。二人は、無言で首を横に振る。
「皆、ありがとう。アンナ」そしてテーブルに座っているアンナに近づいて、声をかけながら頭を撫でる。最近では、それが日課になっていた。
あの事件から、アンナは時が停まったようだった。ほとんど動かず、そして時折思い出しては涙して彼女たちの名前を呼んだ。会話もほどんどなかった。
そんなアンナのために何ができるか、私たちは話し合った。
「僕はなるべくアンナの近くで声かけながら、食事やおやつを食べることにする」錬が、いち早く答える。
「僕は、手を握ってやろうと思う」ケラスの言葉にマネの動揺は隠せなかった。
「僕は、絵本を読み聞かせようと思うんだ」と、平静を装って答えるマネ。
「私は、声掛けしながら頭を撫でようと思うの。この娘はやさしいから。あまりにもショックなことが起こって、対応しきれていないのよ。この先あせらず、アンナを見守っていましょう」と、皆の意見は固まった。
そして、充電も定期的に皆の補充時に合わせてアンナに行う。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「アンナ、今日はね。三匹の子豚っていう、絵本を読むよ」マネは、教師の特権で特別に文化記念館の絵本を借りることができた。
「そのまえに、髪の毛を少し拭こうか。補充も絵本の後でするからね」べたついてきたアンナの髪を濡れタオルで拭き取る。少し、香料を垂らして丁寧にふく。
「すっきり、したね」無表情のアンナを前にして、なるべく話しかける。片付けて、テーブルの隣に絵本を広げて座る。
「ちょ、ちょっと、ア、アンナどうしたの」いきなり、抱きつかれてマネは動揺する。
「い、いつも。ありがと。私もう、疲れたの。補充はいらない‥」くぐもった声でアンナは話す。
「な、何いってるんだよ。そ、そんなこと、出来る訳がないだろう」
「私ね‥‥。今回のことで、わかったことがあるの。もう、こんな私なんて誰も必要としていないんだってこと」そういうと、顔が見えないアンナのすすり泣く声が聞こえる。
「そんなことあるわけないだろ。ちょ、ちょっと、来なよ」少し怒ったようなマネに、無理やり抱きついた体を起こされ手をひっばられる。
「な、何するのよ。痛いわ。離して」見かけは幼くても男子ロボットである。アンナが、抵抗しても入口付近までつれてこられた。
「いいから。ちょっと、来てほしいんだ。それから、自滅するかどうか決めてくれる?別に、。それぐらい待てるだろう」
「‥‥」
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