第10話 101 拷問部屋

 1階の各部屋に入ったメイド達は、らるにこれからこの部屋で始まる新しいイベントまで待機しているように指示があった。


101

部屋に入ったシグナは、らるに待っているように言われた部屋に入る。ドアを開けると3畳ぐらいの手狭の応接セットが収まった部屋だった。そこには、庭にあった花々が花瓶に生けてあった。初めて入った部屋に(誰がここの掃除や、セッティングをしたのだろうか?)そう思いながら、ソファーに座り待っていることにした。


(私たちは幸せ者だわ。らるは同じ下級エリア民なのに顔が広いおかげで、こんな豪勢な中級エリアや上級エリアのお客様達のお世話が出来るなんて、こんなポンコツな私でもお給料が破格によくて感謝しきれない)シグナは、22,3歳の年頃の娘の設定で作られたロボットであった。容姿は、過去に流行ったモデルというものをベースに作られていた。それゆえに、顔は小さく手足が長くてスリムで長身である。顔のパーツも目がくりっと大きく、瞬きするたびにまつ毛が揺れるのがチャームポイントだ。


「待たせたね」ガチャと、ドアが開くと同時にお客様の一人が部屋に入ってきた。

「えっ、あっあの、新しいイベントが始まるそうなので‥」せわしなくシグナは瞬きをしながら答える。

「そう。まあ、緊張しなくてもいいから。リラックスしてね」相変わらず仮面の下の表情は分からないが、やさしげな年配の男の人の声である。その人は、座りもせずソファーの後ろのドアに行くように促す。

(気づかなかった。こんな所に扉があったなんて)

先に行くように言われドアを開ける。と、いきなり後ろから身体を突き飛ばされて部屋の床へと倒れ込む。

「痛っ!! い、いったいどうしたんですか?」急なことに、わけが分からなかった。もちろん、体は頑丈な金属でできているのだが、痛み的な感覚を受けるように精巧にプログラムされている


「これから、私のことはご主人様と呼ぶんだ」

「ご、ご主人様?」今までとは全然違う印象に戸惑いが隠せない。

そして、徐々に部屋の様子に視線を移す。

その部屋は、壁も床も今までの部屋と違い黒一色に塗られていた。その壁にはノコギリや、キリ、包丁など大きさや幅など大小数種十類ぐらいはあるであろうか。そして、その中の一つの鞭を男は手に取り、シグナに向かってしなやかに振り下ろした。男はその鞭がおきに入りなのであろう。手さばきに慣れが感じられる。


「ご、ご主人様やめてください。そんなことをしたら、壊れてしまいます」

「ふふっ、どうせおまえら屑なんだ。かまやしないだろう。そのいつも被っている白い帽子もとってみろよ。壊れて中身の部品が出ているんだろう?」

「な、なぜそんなこと知っているの?!」シグナは、前にらるにジョーダンまじりに聞かれたことを思いだした。

「や、やめて」長い両手で編み込んだ帽子を押さえる。

「どうした?所詮おまえらロボットは、何をされても人間様には逆らえないようにプログラムされているからな。ロボットの新五原則があるんだろう?!」

「うぅ」

「泣けばなんでも許されるってか、甘いんだよ。屑ロボットのくせして。いくら、人間のマネをしたって所詮人間にはなれないんだよ」

(な、何をいってるの? 今まで穏やかだった人が、いったいどうしたっていうのよ!)

「ふふっ、いっそのこと一思いに楽にしてやるよ」そういった瞬間、シグナは振り下ろされる大きな斧を見た。そして、その斧はシグナの首を根こそぎ持っていった。

顔はボールのように壁におもいきりぶつかり、帽子のおかげで少しは守られた気がしたものの床にころがったそれは、破損した頭の中身が毛糸の帽子に開いた穴からいくつもつきだしていた。そして、閉じられた眼に長いまつ毛がシグナの名残を思わせた。


男はまだ興奮がつきないらしく、顔のないシグナの体に壁の道具を取り出して試作品を試すように変えながら、何度もつきさしたり叩いたりとスクラップになるまでやめなかった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る