第6話 私の夢に、一歩ずつ近づいている。
アンナ、ベベリッヅィ、アラクレカラー
アンナは最近ソマたちといるより、らるの家で仕事をしている時間の方が多かった。そして、らるを通して中流階級や上流階級のお客達といると、とても満たされていた。また昔の自分に戻れるのかもしれないと夢見ることができた。今までの下層エリアの利用者様達と比べると、少しは現実可能な夢にも思えてくる。
そしてこの眼帯の下の壊れた目(飛び出した目玉は伸びたワイヤー線を切り、繋げてなんとか窪みの穴の中に収めてある)と、捥げた片腕を元に戻せるかもしれない。そして最上級の、ううん。贅沢はいわない。中流階級でもいい。あの雲のようにポッカリ浮いたドームの上から、もう一度下層エリアを見下ろしたい。
私は過去にたくさんのメイドロボットの中で、最上級の称号をもらった。あの長い名前は私の誇り‥。それがごみ屑同然にすてられて心も体もボロボロ。ロボットだって、限りなく人間に近く作られたのだから痛手を負う。今ではバッテリーもいつ切れるか分からない安物だし、燃料電池だって安物。こんなの私じゃない。
分かってる。もちろんソマにはとても感謝している。もう、かれこれ6年もの間一緒に過ごしたんだもの。それに安物のバッテリーや燃料電池だって生活費を圧迫しているのも分かっている。
それでも、それでも。こんな暮らしは嫌なの。
ケラスは、私のことを我がまま娘だっていう。マネだってこんな私を見下していると思う。錬はとても可愛くて。マネが必然てきに教育担当になってから、大人びた思考になってきたけれど。お姉ちゃんって、いつも甘えてきてくれる。
けど、けど、けど。もうこんな貧乏は‥‥うんざり。
そんな時
「上の階級連中がまた、集まるんだけど時間延長できるかい?」と、らるに声をかけられる。
「うん、いいわよ。今回も泊まりになるの?」
「ああ。ただ今回は参加人数が多くて、メイド達も他の派遣先にも声をかけてあるんだよ」
「だいたい何人ぐらいなのかしら?」
「参加者はいつもの3倍位かな、メイドも10体くらいは欲しいね」
「すごいわ。本当に、らるは社交上手なのね。皆、階級なんて関係なく楽しめているものね。羨ましいわ」
「それもこれも、君たちのおかけだよ。美味しい料理や家事も満遍なくこなしてくれるし、色んなところにセンスの良さや気配りを感じるよ。特に、俺はアンナを一番に推しているんだ」
「またあ。本当にらるは、おだてるのが上手いんだから」
「本音だからね。スッーと口から出るんだよ。あっ、そうそう。2週間後の火曜日の予定だから、絶対忘れないでよ。まあその間にも我が家のシフトに入るときに、耳にタコができるぐらいに言うと思うけど。それと今回は仕事からの解放も兼ねてリラックスしたいから、3日間は泊まりたいと言っているからそのつもりでいてよ」
「大イベントになりそうね。料理の仕込みやセッテング等、大変だわね」こんなに家をあけるのは初めてだけれど‥構いやしないわ。
「そうなんだ。具体的なことが分かり次第に、メイド長に伝えるからね」と私に、軽くウインクをする。えっ!私のこと? 私もまんざらでもない。私を認めてくれる人がまだ、金持ち連中の中にもいるんだ。もしかしたら、このイベントを通して個人メイドとしてスカウトされるかもしれない。そんな、幸せな空想が頭を占めるようになった。
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