第2話 屑ロボットたちとの話し合い
頭をフル回転して思案していると‥‥。
「おねえちゃん、もしかしてあの赤ん坊が気になるのかい?」声のする方を向くと、片腕と頭半分程がもげた立っているのがやっとと思えるヨレヨレの古い型のロボットがいた。
この地区では、金持ち連中が期限切れや流行おくれの壊れたロボットなどをよく廃棄処分する場所でもある。ロボットは期限が切れるとメンテナンスが必要であるが、その費用を出し惜しみして新たにロボットを買い替えて、古いものはポイ捨てするのである。購入時には体の一部にシリアル番号がついている。その番号で飼い主の住所と電話番号がわかるので捨てられたロボットは、無造作にはぎとられた跡が残っている。
「俺たちが、あの赤ちゃんを助ける手助けをしてもいいんだよ」
まだ、充電があるロボットはこうしてまだ動くことができるのである。が、どう見たって、私より力があるようにはみえないし、ツンと指で押したらバランスを崩して倒れそうなのである。
私の考えを見透かしたのか、私の返事も聞かずに
「おーい、みんな力を貸してくれないかあ」と言う声と共に、ピィという大きな音が鳴り響く。すると瓦礫の下や隅から、ゾロゾロと何体ものロボットが這い出して来る。近くに来ると、人間型の比較的新しいタイプのアンドロイド型や力仕事用のロボットとみられる頑丈なロボット等色々なタイプが終結した。だが、みんなどこかが壊れているか不要物の理由があるものばかりだ。
「なんだ。なんだ。どうしたんだ。緊急ボタンを押して。もう俺たちには守るものがいないというのに…」
「そうよ。そうよ。それに、この人間は何? ボロボロじゃない。まさか、この人間の為に働けというの?!」察しがいいメイド型ロボットは、自分も目玉が飛び出て片腕がもげているが、ソマのことを見下しているようだ。
「俺たちここにいるロボットは、ご主人様に捨てられたんだ。それは、皆自覚しているだろう? 旧型の俺だって、少しの感情はある。それでも、俺たちは自由になったんだ。これからは、自分の意志で行動ができるんだよ」一番初めに声を掛けてきたロボットのミショが、皆を諭すように言葉を選んで話している。
「あの、今近くの瓦礫の下に赤ちゃんがいるの。力を貸してくれない?! 時間がないの」ソマは20体はいるであろうロボット達に囲まれながら、勇気をふり絞って訴える。
「なんで、今さら人間のために働かなきゃならないのよ」
「虫がいいんだよなあ。人間は」
「遠慮するよ」口々に言葉を吐き、過半数のロボットはバラバラに去っていった。
見ると、7体のロボットが残っていた。
「別にやることないしね」ジョニーと名乗るアンドロイド型
「俺がいると心強いぜ。まあ、いつまで充電が持つかわからないがな」大型の見るからに頼もしい。ケラス。
「ふん。私だって、家事を任せられたらプロなのよ。ベビーシッターだって経験ずみよ」先ほどのメイドロボットも残ってくれた。アンナ、ベベリッヅィ、アラクレカラーだそうだ。
「僕も残るよ」子供のアンドロイドだ。マネ。
「頼もしいのは、ケラスだけじゃないぜ」というものの。一見、弱そうに見える旧型ロボット型とAIの融合。キャネ。
俺は、番犬だったが色々役にたつぜ」動物型ロボット リリク。
「私だって、力はないけど飛ぶことが出来るから色々役にたつわ」今は絶滅した、鳥というものらしい。セント。
「さあ。マネと人間のおねえちゃんは、少し遠くに避難して俺たちに任せておきな」
と言うと彼らは作戦に数分も要しただろうか。それからはそれぞれが、キビキビと役割を果たしていく。
◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■
「あの赤ちゃんは君の赤ちゃんなの?」見た目には8歳ぐらいのマネは、緑色の瞳で見つめる。
「えっ。あっ、いや。そういう訳じゃあないけど」
「どうして、他人の赤ちゃんを助けるの? 僕は、父さんに捨てられたのに…」
「ううーん。私だって、わからない」そう、そうわからないのだ。両親が生きていたらきっと、周りよりも自分達を最優先にしていたのかもしれない。赤ちゃんの鳴き声さえも聞こえていなかったかも。それを、マネにいうのは酷というものだ。
「人間も、僕の父さんみたいに子供を捨てるの?!」
「人間にも、色々なタイプがいるのよ。だけど私は今後、命にかけてもあの子を守るわ」なあんて。家も何もかも失ってしまってからは、マネに偉そうなことを言っても正直どうなるか分からないけれど‥。
◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■◇◇■
「おーい、見つけたぜ」ミショの声で、再び近くまでいく。
見つけた赤ん坊をメイドロボのアンナ、ベベリッヅィ、アラクレカラーが愛おしそうに抱いている。
「ありがとう。本当に。感謝しきれないぐらいよ」赤ん坊を、受け取とるとその軽さに驚いた。
「あんたさ、赤ちゃんの育て方知ってるの? 今、この子の状態も…」
「いえ、何も…」
アンナはやれやれと言ったそぶりで、周りに集まってきていた人達に(同じく途方にくれた人間達も、周りに集まっていた)向かって、大声を出していた。
「この赤ん坊に、ミルクと哺乳瓶と布と水がいるの。誰か持っていないかしら?」
「私の赤ん坊のためのものだけど。こういう時だもの半分あげるわ」そういって、若い女はミルクの粉が入っている小型の哺乳瓶を一つくれた。
「これは、大判のスカーフだからこれを好きに使って」大柄なおばさんは、首からスルスルとスカーフを外すと手渡した。
「この水も使って」皆残り少ないものを、親切に分けてくれた。
「ありがとう」そして、アンナ…は受け取ると、手際よくミルクを作り赤ん坊に飲ませながら。スカーフの一部を切り裂き身体を拭いてやり、残りでおしめのようにあてた。
赤ん坊は、ミルクをひたすらに美味しそうに飲み始めた。それを、周りのものは嬉しそうに見つめていた。
ソマはアンナの手際の良さや、自分が何を赤ん坊にしてやったらいいのかを何も知らなかったことを恥ずかしく思った。
「はい。あんたが育てるんでしょ。何も知らないのは、経験がないんだから仕方がないわよ」そんな気持ちを見透かしたように、アンナは再び坊やをソマに預けた。
そして、助けてくれた周りの人々やロボット達は去っていった。
「私は捨てられたゴミだけど、まだまだ、役にたてると思うの。あんた達と、一緒にいさせてくれないかな」アンナは、少しトーンが落ちた声で言った。
「僕も…」その時、マネの手もソマの手にそっと触れていた。
「力自慢の俺は、何かと役にたつぜ」ケラス
この時から、三体のロボットと赤ん坊一人は私の家族になった。
それから何時間か経ってやっと国が動いてくれ、食べるものや仮に住むところなどを手配してくれた。
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