第3話 蜘蛛の糸
「俺に一つ提案がある。蜘蛛の糸を掴むような話で、大層現実味がないし難しい話だ。それでもお前の姉を助けることが出来る、最後の手段だ。乗るかい?」
「乗る。乗るよ。お姉ちゃんがいなかったら、私が生きている意味がないよ!」
「そうか。だったら話が早い。俺と一緒に地獄へ来てくれ。そこで、この繰り返しの世界を作っている元凶を倒せばお前の姉は助かる」
「……え、元凶? それって」
「人ではない。人もいるが、それはお前の姉に嫉妬したやつだな。元凶となったやつはその人間に唆したやつだ。願いを言えとな……。俺の、遠い昔の親友だったやつだ。途中で道を違えた馬鹿だがな」
それってつまり、全部この薬屋達が悪いってこと?
お姉ちゃんは、嫉妬されて死んだってこと?
何それ、何それ!
「そんな勝手な話、あっていいわけないでしょ!? なんでお姉ちゃんが死ななきゃならないの! 大体妖怪の話は妖怪で片づけてよ! 人間界に持ち込まないで!」
「元々は妖怪も人間だったのさ。仕方がない」
「……っ」
「とはいえ、申し訳ないことをしたとは思っている。では、行こうか」
包帯だらけのその手を差し伸べられる。
「怖いか?」
「お姉ちゃんの手を離す方が、よっぽど怖い。今は、ううん、今回は、この手を取って、蜘蛛の糸を掴む。ちゃんと手伝ってよね!」
「いいだろう。だが、人を殺せるか?」
「……それは」
「わかった。それは俺がやろう。もう、相手は人間ではない可能性が高いからな」
薬屋の店の奥にある障子を開けると、そこには赤や黒でぐちゃぐちゃの謎の空間が待っていた。
「行くぞ」
「うん……!」
待っていてお姉ちゃん。絶対に、なんとかするから……!
そして地獄に落ちた。否、堕ちた。
薬屋と一緒に空中から、下の草原みたいなところに降り立つ。
薄暗くて気味が悪い。
空気が悪いのか、あまり居たいと思える場所ではなかった。
早く、相手を見つけてやめなさいって、説得して、お姉ちゃんを助けなくちゃ。
「言っておくが、変な期待はしない方がいい。死ぬだけならまだしも、ここは地獄だ。苦しんでも死ねない可能性がある。……戻れないしな」
「……は?」
戻れない? どういうこと?
それって、つまり、お姉ちゃんと一緒にいられないってこと?
それって……意味、あるのかな。
そう思いかけた。でも、お姉ちゃんの笑顔を思い出すと、お姉ちゃんだけでも生きていてくれるなら、お姉ちゃんさえ生きていてくれれば、それが私にとっては何よりだと思えるんだ!
「戻れなくて、いいよ。上等だ。やってやろうじゃん! もう怖いものはない! 絶対に、お姉ちゃんを助ける!」
「その気持ちを、忘れずにな」
薬屋と、地獄を歩く。
目的のモノ達を探して。
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