第2話 狂って死んだ姉を見た
お姉ちゃんはお化け屋敷に行ってから、おかしくなった。
お姉ちゃんは趣味で小説を書いているのだが、その小説のレビューや感想が来るととても喜ぶ。それはそれでいいのだけれど、おかしなところはここからだ。
「もっとだ。もっと書かなきゃ。読者様の、思う、面白さを」と言って、狂ったように食事も摂らずに書き続けるのだった。
いくら私やお母さんが中断するように言っても、姉は書くことをやめない。
これはおかしいぞということで、精神科の受診をするように言っても聞いてくれる耳がない。
変だ。お姉ちゃんはこんな人じゃなかった。
少なくとも、人の話を聞いてくれる人だったのに。
そう思っていたら、ある日お姉ちゃんは、遺書も何もなく、涙を流して笑みを浮かべ、首を吊り死んでいるのを私が見つけた。
「お、お姉ちゃ……ん……」
『なんで死んじゃったの? お姉ちゃん! 一緒にまた遊園地行こうって言ったじゃない! そうだ、あの薬屋……!』
また、私は過去に同じことがあったような気がした。そして自分で言ったことのないことを言っていた記憶が蘇って、ぞっとした。
でも、気になるのはあの薬屋という言葉。
もしかして、私があの薬屋に行けば何かわかるかもしれない。
少なくとも、お姉ちゃんの死については……。
お葬式の後、私は車に乗って遊園地に向かっていた。
両親には「お姉ちゃんとの最後の思い出だったから」と言っておいた。
両親は苦い顔をしながらも、行くことを許してくれた。
車を運転していると、私は、お姉ちゃんのいなくなった世界を、何度も繰り返している気がしていた。
これも、何度も感じている感覚で非常に気持ち悪い。
でも、行って、それも確かめればいい。
きっと、何かはわかるはずなんだ。
私は遊園地に着くとすぐさまお化け屋敷に向かっていった。
あの空の薬袋を持って行って。
二度目のお化け屋敷だから、もう何度も怖がるほど、私は子供じゃない。
そしてあの薬屋のところに行き、薬屋のお兄さんともおじさんとも言える不気味な人に話しかけるのだった。
「完走しました。今回も」
「……この前の。どうした。死の臭いがするが」
「お姉ちゃんが、亡くなりました。お願い、まだ使えますか」
「使えるが……」
「また、お姉ちゃんを生き返らせてください」
言っていて、違和感を感じた。
『また』とはどういうことだろう。
それに、あの薬屋さんも「またそれか」と言っていた。
「どういうことですか。何か知っているんですかっ
。お姉ちゃんの死について! 何度も繰り返しているこの世界について!」
『答えてよ! お姉ちゃんが死んだのは、もう何度目かわからないんだから!』
……あ、まただ。そうか。やっぱり、繰り返してる。
きっと、そうだ。
「お前の言う通り、お前は繰り返している。何度も、姉の生きる道を探して繰り返している。でも、おかしいんだ。こんなの。俺も、初めてなんだよ。こんなにも願いの薬が効かないなんてこと」
「あなたは、一体……」
「俺は薬屋。あやかし、妖怪の類だ。お前と会うのは何度目かわからないが、こうして話すのは初めてだな」
そう言われた。
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