おまけ① 全階級層の代表者によって行われし公正かつ公平な会議
__1796年10月8日(日)、インディファティガブル艦長室
「……と、言うことで、ネルソン代将より七五門艦に移乗するという提案をいただいたわけだが、君たちはどう思う?」
そう言って俺は艦長室に集まった全士官、准士官代表と海兵隊隊長、下士官代表、水兵代表計一二名のインディファティガブルのほとんど全階級の乗員たちを見回した。
「艦長、俺たちゃあ色々良くしてくれてる艦長の命令なンらその戦列艦にも移るでさぁ。でも、俺たちゃあこの住み慣れたインディファティガブルからは離れたくねぇってンのが俺たちの意見で。どうかその辺を加味して考えてくンとうれしぃでさあ。」
水兵代表の上等水兵、ロナルド・アーノルドがドぎついスコットランド訛りで話す。
「なるほど、他、誰かいないか?」
「では私達の意見を言わせてもらいます。結論から言うと、私達は艦を移ることには肯定的です。理由はインディファティガブルの銅板が剥がれてフナクイムシが湧いていますし、ところどころ傷んでいるところもあります。艦のためにも、私たちは一度移ったほうが良いかと。」
下士官代表の防火管理などの責任者、衛兵伍長のリサ・コールマンが言う。どうやら下士官にはこの話は割と好評らしい。
「ふむ、確かに試験航海時よりも今回の航海は船足が遅かったな。次は?」
「私たちは反対派です。海兵隊は、異なる艦の乗員が一緒くたになることで、乱闘騒ぎが起きることを懸念しています。」
海兵隊の少尉、つまり隊長になったシアが機械的に話す。あまり海兵達のことに構っていられなかったので、上手くやれているか不安だったが、元々同じ艦の仲もということもあり、特に問題なくやれているようだ。
「なるほど。乗員の乱闘は確かに一理あるな。士官は最後に協議の際に意見を出してもらう。それじゃ、准士官代表、頼むよ。」
「ああ、皆んな不安ではあるみたいだけど、特段嫌がりはしてはなかったよ。ただ、
そう言って軍医のメアリーが態々しなくても良いほどにたわわに実ったモノを引き寄せて強調する。目のやりどころに困るから止めてくれと前々から言っているんだが、どうもそれが嬉しいらしく、一向に止める気配がない。
「ふしだらですっ‼︎」
毎度のことだが、赤面したソフィーがそう言ってメアリーの頭にチョップをかまして、無事撃沈した。
「お、おう、とりあえず士官以外は一度出ていってくれ。結果は決まってすぐに皆に報告する。」
「「イエス・サー!」」
床で目を回して伸びているメアリーと士官を除いて、会議に出席している全員が俺に敬礼してから、部屋を出た。メアリーは引き摺られた。
「……さて、現在賛成派が若干多いが、君たちはどうだ?」
「私は代将の言葉に甘えてもいいんじゃないかと。艦の艤装なんかの改修をしてくれるのなら、願ったり叶ったりかと思うのですが……」
ソフィーが若干遠慮しがちに言う。幾ら覚悟して来たと言っても、彼女はこの国の皇女だ。3Kならぬ、キツイ、臭い、苦しい、危険、給料が安い、風通しが悪い、空気が悪い、結婚期を逃す、暗い、怖い、キモい、航海が長いの12Kの艦内での生活を少しでも改善したいのだろう。
「そういう面では良いのか……なるほど。他は?」
「不衛生が」
「改善するなら」
「喜んで」
「賛成するよ!」
「し、士官は全会一致と言うことだな?」
俺は四人の息を合わせた言い方に、若干圧倒されつつ答えた。
「とすると、賛成派三、反対派二か。では、本議会はインディファティガブル乗員全員のキャプテンへの移乗を可決する。」
皆んなから少し歓声が上がる。女性なりに苦労してたんだなぁ………
「それじゃあ誰か、代将に会議の結果を伝えてきてくれ。」
「「「私が!!」」」
ソフィー、メイ、ハンナの三人が勢いよく手を挙げる。ルナは相変わらずケラケラ笑っているが、ちょっ、三人とも近い!圧が!圧が怖い!!助けて!!
「お、おう。それじゃ、三人でじゃんけんでもして決めてくれ。」
「なんです?それ。」
「あ。」
じゃんけんを三人に教えたところ、永遠にグー・パー・チョキであいこを出し続けたのでシャーロットに行ってもらった。決着は日暮までかかり、途中から参戦したルナが一人勝ちした。
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イスパニアの大艦隊との海戦に巻き込まれることとなったアルフレッド達!彼らは無事に乗り越えることができるのか!
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次回、数vs質その二 お楽しみに!
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