第四話 提督閣下の来訪
「ウィルおじさ…いえ、シャーロップ提督、早すぎませんか?」
目の前に立つ
彼には昔からからおんぶしてもらったり、良くしてくれたので、幼心にもよく残っている。それと同時に、後先考えず突っ走る猪突猛進タイプだった為に様々な場所で突き落とされたりした。不器用なだけなんだろうが、あの性格はなんとかしてもらいたいが、それ以外は人の良い男だ。
現在はウリッジ海軍工廠で基地提督をしていると聞いていたので、ウリッジ基地防衛艦隊の大型フリゲートのペルセウスに乗艦命令が来た時、会えるかと楽しみにしていた。
「先触れの使者は出したつもりなんだがな。ほら、そこの彼女。」
そう言ってウィル叔父さ…じゃなくて、提督はハンナを指差した。
「提督…先触れの使者と同時に出てこられては使者を寄越した意味がわかりません。それになぜハンナを使者に?提督なら部下が大勢いますし適任者がいるでしょうに。」
俺は疑問を全て口にしていた。や っ ちゃ っ た☆
「まあまあ落ち着きたまえよ、その、理由ってのぁ無いんだが、急ぎの用でな…それよりもだ。部下に精肉やワインやチーズを積ませた。それを使って歓迎パーティでも開こうじゃないか。ん?」提督はごり押した。これだからこの人は……
「まあ、それはいいですけど…ハンナ、高級乗員達を連れて来てくれ。艦長室で歓迎パーティ、提督も来ていると伝えてくれ。」
「アイアイ・サー!」
ハンナは乱れた制服を正し敬礼してから部屋を後にした。
「…それで提督。命令書か何かを持って来たのでしょう?」
「…どうもお前に隠し事はできんらしいな。その通りだ。
「海賊討伐ですか…まあ、ご命令とあらば。」
正直海賊には憎しみとトラウマの両方があってあまり関わりたくはなかった。上官の命令なら仕方はないが、できれば行きたくない。
「失礼します。艦長、高級乗員9名、全員連れて来ました。入室許可をお願いします。」
ハンナが艦長室の前で報告した。
「おっと、思っていたより早いな。それじゃあこれは、君がしっかり持っておくように。出港は、そうだな…今年中には出港してくれ。まあ、あと4ヶ月ちょっとだが。」
そう言って提督は俺に命令書をグイっと押し付けると、「入りたまえ。」と、一言言った。
宴会は提督の音頭に合わせて乾杯をし、始まった。
「__アルフィー、そういえば自己紹介したのかぁ?」
突然提督が言い出した。既に提督はかなり酒が回っており、顔は真っ赤に染まっていた。さては提督の飲んでいる来た酒はウイスキーか何かだな、と思いつつ、「いえ、まだですが。」と、答えた。
「なにィ?ならここで自己紹介すりゃあいいじゃねェか。よぉーし!命令だ!自己紹介しろ!俺を笑わせたやつはうーん……なんかやる!さん、にーい、いち!はじめ!」
「えーと、じゃあ、階級的に俺からか…俺はアルフレッド・ジョージ・ブラウン。24歳、階級は海佐、出身地はバークシャー州。一応スライゴ侯爵の次男だ。」
なぜだか提督の爆笑を掻っ攫った。
「なら次は私ですね。私はシャーロット・ゴール・フィッツロイ。20歳、ペルセウスの一等海尉です…出身はケント州、フィッツロイ紡績社の長女です。」
これまた提督の爆笑を掻っ攫った。
「ボクはルナ!ルナ・ルイーズ・エバン!歳は19、出身はヨークシャー!二等海尉で、航海長だよ!宜しく!」
こちらも爆笑だった。
「あ、えと、メ、メイベル・ヴィクトリア・サロウです…歳は19歳、出身はロンドン、三等海尉です…よ、宜しくお願いします。」
爆笑だった。
「…シア・グレイス・ベイカー。海尉心得。」
言わずもがなである。
「ハンナ・クロフォードです。17歳、出身はポーツマス、士官候補生です。よろしくお願いします。」
わざわざ言う必要もないが、大爆笑である。
ここからはダイジェストだが、艦の物資の管理者、主計長がアーサー・キンバリー・サマセット(47)。艦の砲を管理者、掌砲長がアメリア・ケント・フォード(31)。艦の帆を管理する掌帆長がヘクター・ウィリアム・クリフォード(49)だ。
まあ、提督が宴の参加者全員に奢る事になってしまったのは因果応報とも言えるだろうか。
翌日、俺は全乗員の前で、命令書を読み上げた。
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〇〇シャー州というのはおかしいですが、見やすさ重視のためです。ご理解のほどよろしくお願いします。
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