第15話 ギャップ萌え

サラダが…ある…!?

最近は料理の中に混ぜられていることが多かったのに…


「レド殿、食べないの…って、そういうこと。しっかり食べないと駄目だよ?僕が見ててあげるから。」


ああぁぁぁぁ、王子のあたたかい視線が痛い!

とにかく食べられると言わないと…


「言われなくてもわかってます!!嫌いだと言っても、食べないわけじゃ…」


でも生…生だぞ?何故食えるんだ?

俺だって、カレーの具材なら難なく食べられるのに…


「サラダ美味あぁ!!野菜の旨味出るわ~!」


狂ってる奴が居る。

あいつに食べてもらいたい程だ。


王子…頼むからニヤニヤしないでくれ…


「今日はあの方に食べてもらったら?」


「俺のプライドが許しませんよ。嫌です。」


ア、アレイが近づいてくる!?

何故このタイミングで…

せめて、サラダ食べきってからにしろ!


「団長、今日の居残りの件ですが…って、全然飯食ってないですね。いつもなら、お米3杯くらい行ってるんじゃないですか?」


大食いなことカミングアウトされたし。

というか、アレイの居残り…しょうがない、飲みで勘弁してやるか。


「一杯付き合え。それが居残りだ。」


「うわぁ…」


何故だ。一緒に飲むだけの方が楽だろう?

そういえば、酒飲むと記憶飛ぶんだよな。

どうしてだろう…


「団長、めっちゃ酒癖悪いじゃないですか…それが一番辛い…」


「俺が弱いわけないだろ。言い訳はするな。」


まったく…俺が弱いものはない!

この世に1つも。

それより、サラダをどうするか…


「ふふ…レド殿、食事が冷めてしまうよ。僕が食べさせてあげようか?」


「結構です!!自分で食べれます。」


久しいな…サラダよ。

きっと食べられるようになってる。そうだ。


シャキッ…


無理。ヤバい!マジで無理だ!

口を押さえないと…


ギュッ


「あれ、団長…野菜苦手なんすか?」


違う!決して違うんだ!

とにかく首を振らないとっっ!


「子供の頃からそうなんだよ。苦い野菜とかが特にね。」


アレイもきらきらした目で見るなぁぁ…

絶対言うなよ?他の奴らに。


「皆ー!団長、野菜苦手らしい!」


終わった。何もかも。


「え?そんなことある?団長に嫌いなものが…それも、子供みたいな?」


「ギャップ萌えだな。ますます推せる。」


ざわざわ


皆が集まってくる…俺の…プライドが…

粉々に失くなった。もう失うものはない。


開き直って、食べてもらおう。

思考放棄してる気もするが。


「団長、漢なら食べきるものっす!俺たちが応援しますからね!」


「レド殿、頑張って。食べられなかったら、僕が食べるよ。」


ええい、腹を括れ!お前は騎士だ!

皿ごと食う勢いで…参る!!


ズガガガガッ…シャキッシャキッ…


「いけー団長!野菜に負けるな!」


「レド殿、頑張れ!」


うっ…!?水で押し流せ、戻ってくる前に!


ゴクンッ…


はぁ…はぁ…

食った!!食ったぞぉ!!


「皆…ありがとう…だが、アレイ。カミングアウトしすぎだ、馬鹿っ!!」


「痛っっっ!?だってぇ…団長のかわいいところ知ってほしかったんすよ!」


かわい…!?こいつも王子と同類なのか!?


「ふんっ…げんこつ一発程度で喚くな!さっさと飲むぞ!」


絶対、朝まで飲み明かしてやる。

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