第8話 訪問
「レド君、覚えているかい?僕ら…幼なじみなんだよ…」
時は、18年前に遡る…
クリスタ王国とグレイハム王国…両国王は家族同士の付き合いがあり、視察と交流も兼ねて訪問し合っていた。
もちろん、訪問の際は互いの子どもたちを連れて。
「ち…父上!ここが、クリスタ王国ですか?」
「そうだぞ、ミヒャエル。私たちの国より少し小さいが、民たちは活気に満ち溢れている。とてもよい国さ…」
五歳の誕生日、ミヒャエルは初めてクリスタ王国に訪れていた。
まだ一人っ子だったので、少し寂しい思いをしていた頃…
それに気づいた父は、愛する息子の誕生日に友人を作るきっかけになれば。と共に訪問することを決めたのだ。
「お前にも良い友人ができることを願っているよ。さぁ、王城だ。」
身を乗り出して、外を覗いてみる。
「わぁ…とても美しいです…!細かな彩飾ですが、ギラギラしていなくて、職人の方々の熱意が伝わりますね!」
これには、父もにっこりご満悦。
すでに、王族としての審美眼が光り始めていた様だ。
城内に入り、訓練所の前を通りかかると…
「ははっ!ひよっこ、もっと頑張れ!そんなんじゃ騎士になれねーぞ?」
「俺だって、頑張ってます!まだ鍛え足りないだけで…」
ミヒャエルと同じくらいの子供が、騎士たちと共に訓練をしていた。
いや、からかわれていると言った方が正しいだろうか。
「彼…とても努力していらっしゃるのですね。木刀に血が付いています。すごい…」
「彼は騎士を志してから、毎日訓練していると聞いたな。友人も、よく自慢しているよ。」
彼こそが、後に騎士団長の座に上り詰める男だとは、まだ誰も知らない…
行かせてくださいと言わんばかりの熱い視線を、父に向ける。
「えーと…そういえば、お前は剣術が好きだったな。見てきてもいいんだぞ?」
「いいのですか!?父上、ありがとうございます!」
許可を得ると、訓練所の中へ走り出した。
父は、笑顔でそれを見送る。
「あんなにも行動的な子だったか?いやはや、子どもというものはよくわからんな…」
騎士たちに近づくミヒャエル。
だったが…この時の彼は極度の人見知りで、初対面の人に話しかけることを恐れていた。
咄嗟に近くの茂みに隠れ、様子を伺う。
「うぅ…落ち着け落ち着け。怖い人たちじゃないんだぞ…」
自分を落ち着かせようとするも、ドキドキは収まらない。
そこへ…
ザッザッザッザッ
誰かが近づいて来る。
恐くなったミヒャエルは、頭を抱えうずくまってしまった。
「お願いお願い…僕に気づかないで…」
ガサッ…
「あ、やっぱり居ました!おっちゃん、女の子です!」
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