第5話 肉体美

レドの予感は的中し、ミヒャエルから訓練を頼みたいと言われてしまった。


「ですが、他にも指導しなければならない者がいまして…」


「副団長がいるだろう?大人数に教えるのは疲れるだろうし、少しの息抜きと思ってさ。」


と言いながらも、欲望むき出しである。

しかし、レドはあまりにも鈍感…気づかない。

これにはミヒャエルも頭を抱える。


どうしたら、自分の本当の気持ちに気づいてもらえるか?

幼い頃からレドのことが好きだが…肝心の本人は覚えていない始末。


『このあたたかい気持ちは、自分だけ。』


そう思うと胸が痛くなる。

恋というのは、そういうものだ。


「ここが訓練所?広いところだね。」


「素振り…実戦形式…準備運動…色々ありますから、広く造ってもらったんですよ。騎士団の者に、ミヒャエル王子が参加することを伝えるので、前へ来てください。」


ミヒャエルは嬉しそうに、レドは少し気が重そうに前へ出る。


訓練所がざわざわとしだす。

マッチョだらけの場所に、爽やか金髪イケメンが現れたら騒ぐのもわかるが。


「皆の者、静粛に!今日の訓練には、グレイハムの王子、ミヒャエル様も参加する。指導は副団長に任せるから安心しろ。では…戻れ!」


全員でミヒャエルとレドに敬礼をし、訓練に戻った。


「ミヒャエル王子、訓練に移ります。いきなり素振りを始めるのは体に良くないので、準備運動から。」


「わかったよ、団長殿。」


『団長』というワードに少し照れるレドを、満面の笑みで見つめるミヒャエル。


この二人の光景を見た騎士たちは、思わず恋人かと疑い、目を擦る。


先ほどレドを呼びに来たアレイは、二人が婚約しているのでは?と妄想を膨らませた。


意外にも、妄想好き。


「俺の動きを真似してください。まず腕立てから。俺は50回やりますが…ミヒャエル王子はどうです?」


「僕を侮らないでもらいたいね。これでも動ける方なんだよ?」


そう言って、マントを取ると…


その場の全員が唖然とするほど、いい感じに仕上がっている筋肉が登場した。


これには、レドも開いた口が塞がらない。


「鍛えているんですか…?」


「まあまあかな。君と比べたら、だけどね。」


新米騎士と比べても、あまり遜色ない筋肉。

他の騎士も、ミヒャエルの肉体美に見惚れている。


「ふふ…あまりじろじろ見るものじゃないよ?団長殿。」


見入ってしまったレドは、慌てて目を反らす。

それを見たミヒャエルは好感触。


「もう少し鍛えたいんだけど…どこをやればいいのか、わからずじまいでね。触って教えてほしい。」


手を差し出すミヒャエルに、レドは混乱する。


騎士同士のやり取りならわかるが…王子の筋肉を触って確認するなんてできない!!


と、心の内で叫んだ。

断らないといけないと焦り、咄嗟に返答する。


「無理ですよ!自分のならまだしも、人の筋肉なんてわからな…」


これで一安心。と思われたが、騎士たちの一言で全てが変わったのだ…

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