第2話 相容れない二人
その頃、ミヒャエルはというと…
少し表情を曇らせながらも、隣国の王子としてすれ違う貴族たちに笑顔を振りまいていた。
「どうしたら、彼をこの手に収められるか…あのバカ王には、勿体ない代物だね。」
ミヒャエルは、レドが騎士団長をしているクリスタ王国の隣に位置する王国…グレイハムの王子。
今回は、視察兼観光としてクリスタ王国を訪れているのだ。
そこでレドを見つけ、口説いていたというわけだが…
彼には、この王国に来ることになったもう一つの理由があった。
それは…
「おい、ミヒャエル…やっと見つけたぞ!我が城を歩き回ってやったのだ。礼を言え。」
ミヒャエルの笑顔がひきつる。
「…これはこれは、ハイター国王陛下。お会いできて、大変光栄です。」
そう…このハイターという男。
クリスタ王国の現国王である。
俺様気質で、上から目線。
そんな性格が災いしてか、政治もままならず、今は遊び呆けている。
では、レドに騎士団長の座を授けたのは誰なのか?
その人物は、ハイターの父親。前国王であり、民からの信頼も厚い。
いや、厚かった。と言うべきだ…
彼は昨年、病により命を落とした。
唯一の男児だったハイターはそのまま王位を継ぎ、クリスタ王国の王となった…という訳だ。
「その喋り方はやめろ。気味が悪い。それより、我への感謝はどうした?」
国王というより、子供のようだが。
「そうだね、言っていなかった。感謝するよ、ハイター。僕のことを探し回ってくれて、どうもありがとうね…」
皮肉混じりに言ったつもりだったが、ハイターは気づかなかった。
そのままついてくるよう促し、自室へとミヒャエルを迎え入れる。
ハイターの部屋に入ったミヒャエルは、頭に手をあてて呆れていた。
「はぁ…君の部屋、金ぴか過ぎないかい?」
目につくもの全てが金。
その輝きで、目が痛いほどだ。
すると自慢気な顔で、ハイターは答える。
「国王が贅沢するのは当たり前だろう?金などいくらでもあるんだからな。何かあれば、税金を上げればいい。」
自分勝手で、的外れな意見。
これには、ミヒャエルも怒りを露にした。
「民を何だと思っているんだい?国が繁栄し、豊かになるのは王族のお陰ではない。民の働きと信頼のお陰だ。それを履き違えるな。」
「なっ…我を侮辱するな!幼い頃から、お前の性格にはうんざりしていたが…つくづく愛想が尽きたぞ!」
二人は睨み合い、いつ殴り合いに発展してもおかしくなかったが…
コンコンッ
「国王陛下、レドです。部屋に入ることをお許しくださいませんか?」
レドが部屋を訪れたのだ。
ミヒャエルは握った拳を緩め、いつもの笑顔を作る。
「チッ…いいぞ、入れ。それと、なるだけ早く済ませろ。」
扉を開け、レドは中へ入った。
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