騎士団長の俺だが、隣国の王子に溺愛されている。

月島ノン

第1話 試練

「お前を我が国…クリスタの騎士団長に任命する。精を出して、部下の教育に専念したまえ。」


マントをなびかせながら、俺は跪き誓いの言葉を述べる。


「光栄でございます、国王陛下。この時をもって、俺は騎士団長レドとなり、生涯クリスタを守ることを誓います。」


俺の人生で、一番誇らしい瞬間だった。

同期も、後輩も、皆が祝福してくれて…


それが、こんなことになるなんて…思いもしていなかった。


騎士団長に任命されてから二年後…

俺は廊下の壁に押し付けられ、ナンパされている。

それも、隣国の王子に…


「君は今まで出会った男性の中で、一番美しくて…男らしい…素敵な人だ。名前を訪ねても?」


騎士団の中でも一番背が高い俺を、軽々と超える背丈。

その整った顔立ち。数々の女性を魅了してきたのだろう。

後ろに神でも立っているのか?光って見える。


輝かしいオーラにあてられたが、何とか答えを絞り出した。


「クリスタ王国の騎士団長、レドです。その…ミヒャエル王子、俺を試すのもほどほどになさっていただけませんか?」


そうだ。きっと俺は試されている。

視察に来たという話だったはずだ。

クリスタ王国の騎士団長として、相応しいのか…見定めているんだな。


「ふふ…僕が何の為に、隣国まで足を運んだと考える?レド殿。」


そう言って俺の顎をクイッとし、泳ぐ目を合わさせる。


トゥンク…


ってなるか!俺は男だぞ?筋肉あって、髪も短くて、女らしい要素なんて少しもない…

それにこれは試練!だがキツすぎる!


誰か…この状況から救ってくれる奴はいないのか!?


「団長、訓練の時間っすよ~!どこにいるんすか~?」


偶然、部下のアレイが探しに来た様だ。

廊下の曲がり角から、声が聞こえてくる。


「ミヒャエル王子、部下をまとめる団長として行かねばなりませんので…」


無礼とわかっていたが…手を払い、アレイの元に急ぎ足で向かった。


「アレイ、待たせたな。早く訓練所に行こう。なるだけ早く。」


「?? 何でそんな急いでるんすか?もしかして…密会とか!?」


何で当たるんだ!?故意的ではないが、ほぼ密会。

あの王子のファンが知ったら卒倒ものだ。


「…そんな訳ないだろ?俺は剣が伴侶だからな。」


自分で言ってるが、何だか悲しいな…


「これは嘘っすね~。あんなにも縁談を断り続けてきた団長に婚約者が…!」


俺とアレイは、急ぎ足で訓練所へと向かった…

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