運命の出会い???

爽太郎

第1話

中三の春の事だった。


その日俺の所属するサッカー部はS区のK中学校に遠征する予定になっており、電車で行くため最寄り駅に集合と言う事になっていた。


俺は、自転車で駅に来るのは禁止になっていたにも関わらず、自転車に乗って駅に向かった。


季節は五月だったと思う。

暑過ぎず寒過ぎず丁度いい、心地よい気温だった。

長袖では若干汗ばむような、陽射しの強い日だった。


(ね? いかにも運命の出会いが始まりそうな雰囲気でしょ? 学園ドラマなんかでw



半袖の白いワイシャツに黒の学生ズボン。

黒に青のスポーツバッグを自転車のカゴの上に置き、俺は駅へと向かった。



その時俺は若干遅刻気味で、かなりスピードをあげて自転車をこいでいた。

そして見通しの悪い十字路を猛スピードで左に曲がった。


その時だ!


ガシャーン!!



曲がり角の所で、何かと衝突した。

あまりの勢いに俺は自転車ごと転倒した。


半身を起こし起き上がろうとすると、俺の自転車の近くに同じように転倒している人がいる。


青のGジャンに白いワンピース姿…。

女の子だった。



俺はすぐさま立ち上がり、「大丈夫ですか!?」

と声をかけた。

女の子は

「大丈夫です」

と言ったものの、Gジャンの上着が少し汚れてしまった。

俺はもう一度、


「ほんとにごめんなさい」


と謝った。

するとその女の子はとても急いでいたのか、起き上がるとすぐに自転車に乗って走り去ってしまった。

起き上がる瞬間、顔を見た。


可愛かった……。



『トゥクーン!』(恋におちた音)



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駅に着いても、俺は上の空だった。

遅刻の理由を仲宗根に訊かれても、河津に今日のフォーメーションを尋ねられても、生返事だった。

さっきぶつかった、あの女の子の事をずっと考えていた。


(あの女の子、幾つくらいなんだろう…。見た感じ、一個上か二個上みたいな雰囲気だったなぁ…。

たぶん何処かへ出掛ける予定だったんだろうなぁ…。

おしゃれしてたから。

転ばしちゃって服を汚させちゃって、悪いことしたなぁ…)


そんな事をボーッと考えていた。


(ボーーーーッ) 🚢※船の音




ふと左を見ると、同じホームに、何とさっきの彼女が!



運命だ……。



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運命!

これは絶対運命!


よくあるじゃん学園ドラマなんかで!


通学途中の十字路で出会い頭にぶつかって二人ともイテテテなんて転倒して


で、女の子のが男勝りな子で「痛いわね! 何処見て歩いてんのよ!」


とか言うと、男の方も、

「そっちこそ何処見てんだよ」

みたいな言い合いになって…。


で、女の子はこんなヤツ構ってらんないわって先に行っちゃって…。


で、男の方は教室に入ると顔にバンソコ貼ってあって、眼鏡をかけたクラスメイトに、

「オイ剣崎、どうしたんだその傷?」

とか聞かれて

「いや、なんでもねーよ」

とか言って。


だいたいこーゆー時の男の名字は剣崎とか少しカッコイイ系の名字であるという(笑)


やがてメガネをかけた担任の男の先生が来てみんな席に着き起立、礼をして。


で、担任の先生がいきなり「今日はこのクラスに転校生がやってきた。キミ、入りたまえ」


とか言って。


すると一人の女の子が教室に入ってきて

「はじめまして。星野綾香です」

とか挨拶して


で、剣崎が、あーーっ! とか指差して


担任の先生が

「席はそうだなぁ…。剣崎。お前の隣空いてるな? よし、じゃあ星野くん、剣崎の隣に座ってくれ」


とか言うと、星野が剣崎の席まで歩いていって、

「星野綾香です。よろ……、あーっ! アンタはさっきの!」


とか言うと、

「なんだ、お前ら知り合いだったのか? じゃあ話しは早い。剣崎。星野くんに教科書見せてやってくれな?」


とか言って、お互い顔を見合わせると、フン。とそっぽを向くみたいな、そんな学園ドラマ。



ん? こんな事を書くんだったか?

違う違う! 運命の出会い!


で、俺は彼女との再会に運命の出会いを感じた。

俺が彼女に.さっきは大丈夫だった?

と話し掛ければ、あ、あの時の! みたいになって、そこから恋に発展するかも知れない。




と言う俺の淡い期待は次の瞬間、脆くも崩れ去った。



彼女の前に彼氏がやってきたのだ…。



終わった…。



いや、始まってもいなかったから終わった事にすらならねーか。

ま、そんなもんだよね。


でも、デートで着ていく服を汚してしまったのは悪かったな…。


え? 試合?


そりゃもう、コテンパンにやっつけてやったよ!




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運命の出会い??? 爽太郎 @soso-sotaro1207

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