第3話

「あぁ、俺の家が…」

「なんでそんなに悲しそうなのよ…、それに正確にはあなたの家じゃないし、」


鈴野杏奈は平屋が解体されているのを見て悲しそうな顔を浮かべている斎藤優希、いや、結婚して苗字が変わった鈴野優希を見て静かな声で言った。

そう、鈴野杏奈とは、第2話のラストで優希に対して「ねぇ、あんた、私と結婚しなさい。」と、とんでもないことを言っていた女性である。

ただ、なぜ浮気されてバツ1となった優希と第一声でアニメのキャラでも言わないような台詞を言ってのけた杏奈が結婚したのか、振り返る形で解説しよう。


遡ること3ヶ月前…


「ねぇ、あんた、私と結婚しなさい。」

「は?」


やばい奴がいる…本当に世の中にはやばい奴がいるもんだな…


優希は杏奈に最初に話しかけられた時、素直にそう思った。

そして完全に杏奈を無視して、家に帰ったのだ。

ただ、優希が杏奈を無視した2時間後に大家から優希に電話があり、土地を売却する可能性があるから話がしたい、近くの料亭で話せないか?と提案された。

大家から直接連絡が来ること自体疑問に感じたし、せっかく住み始めたのに土地を売却するなんて、そんなことがあるのか?と疑問だった。

しかし、この平屋に住むのは気に入っていたし、可能な限り住み続けたいと思っていたのでこの話し合いにも応じた方が良いだろう。


そう思った優希は次の日、夜勤明けの日の翌日で休日だったため、昼に大家と会うことになった。


介護士の夜勤には8時間勤務と16時間働く2つのパターンがある。

8時間で働く場合は次の日に続けて勤務できることもあるのだが、優希の場合は16時間勤務だったため、次の日は自動的に休みになるのだ。

正直いうと夜勤明けの次の日はゆっくり睡眠をとった後に配信をしたかったのだが、大家が迎えにきてくれるとまで言っているので、断りきれなかった。

しかし、迎えを寄越すと言われていたので、タクシーで迎えにでも来るのか?と思っていたところ、家の前に泊まっていたのはどう見ても超高級車。


こんな高級車に乗るのか…


見たことのない車が目の前に止まったことで優希が言葉を失っていると後部座席の窓が空き、前日に自分と結婚しろと言ってきた女性、杏奈が顔を覗かせた。


「乗りなさい。」

「あなたは、昨日の…」


昨日のヤバいやつだ!え?もしかしてちょっと危険な人だったか?無視したのはまずかったか!?


優希はドキドキしながら車に乗り込んだ。

車に乗って少しの間、気まずい無言の時間が続いたが、突然杏奈が口を開いた。


「昨日はなんで私を無視したのかしら?」


杏奈は優希を見ることもなく、不機嫌そうに尋ねてくる。


「初対面の人にいきなり結婚しなさいなんて言われたら誰だって…。それに付き合ってもないのに結婚って…」


優希は至極当然のことを言ったまでだ。

ただ、若干恐怖があったことでモゴモゴ話すことしかできなかったが…


「そう、では丁寧に。私は鈴野杏奈です。斎藤優希さん、私はあなたに結婚してほしいと思ってあなたの元を訪ねました。今日はその話をするために料亭で話をしようと思ったのです。何か質問は?」

「はい!?今日は不動産の話じゃなかったんですか?その話じゃなければ帰って配信したいんですけど…」

「あなたが住んでいる平屋は私の親が大家です。結婚の相談にあたってその話もしますので我慢してください。」


優希はその後も色々質問していたのだが、杏奈はめんどくさそうな顔をするだけで全て無視された。


なんで無視するんだよこの人…

ん?結婚って言った?何を言っているんだこの人は!?


料亭にて…


「うわー、こんなお店初めて入りました。こんな格好で良かったんでしょうか…」


優希は大家と軽く話すだけだと思っていたので、一応ジャケットのようなものは着ていたのだが、料亭に入るのに相応しいかは不安だった。


「問題ないと思いますよ。髪型も格好も清潔感はありますし、まぁ、及第点ってとこですね。」

「褒めてるんですか、それ。で、さっそくですが、なんで僕と結婚なんですか?鈴野さんは綺麗ですし、わざわざ僕のようなバツ1を選ぶ必要はないと思いますが…」


優希は若干『バツ1』というワードを強調していった。

あっちの人でなければ杏奈はそれなりに良い家の人間だということだ。

そうであれば、自分が「バツ1」といえばすんなり諦めてくれると思った。

しかし、杏奈の答えは優希の全く予想していないものだった。


「あなたに離婚歴があることは知っています。確か、本田真波とか言う公務員に浮気されたんですよね?一度実家に帰ったようですが、介護施設から復帰の要請があって戻ってきた。違いますか?」


優希は杏奈の話を聞いて血の気が引いた。


「!?なんでそこまで知っているんですか!?」

「少し調べさせただけです。それと、何か勘違いしているようですが、私はあなたに惚れ込んで結婚を申し込んでいるわけではありません。私は後継を残すために結婚相手が欲しくて、その理想的な条件にあなたが当てはまっただけです。」


杏奈は29歳になった今年まで結婚できていなかったのだが、後継を埋めないというのは問題だったようで、母親から30歳までに結婚できなければ当主にしないと言われていた。


ここで、優希がヤバいやつだと思っている鈴野杏奈について簡単に解説する。


鈴野杏奈は簡単にいうと、地主の娘で家は超お金持ちだ。

つまり、優希が心配しているような危険なタイプの人ではない。


地主の家がお金持ち、という話はよくあるだろう。

ただ、杏奈の祖母が当主になるまでは特別お金持ちというわけでもなく、なんとか鈴野家が途絶えずに続いているという状態だった。

しかし、祖母が当主になって少しすると、近くの地域で自動車産業が盛んになったことで大勢の人が流れ込んできたのだ。

これに伴い、鈴野家が所有していた土地の多くが高騰し、一気に鈴野家は大金持ちになった。

さらに、なぜか今まで子どもが生まれにくかった鈴野家だったが、祖母は子どもを7人も生み、その子どもたち(つまり杏奈の親戚)も全員結婚して子どももを産んでいることで鈴野家は今までにないほど大きくなりつつある。


そんな中、杏奈は次の当主として決まっていたのだが、後継を作るという目的からか、30歳になる前に無理やり優希と結婚しようとしたのである。


「理想的な条件…なんとなくですけど、普通はお金持ちの息子だったり、家柄が良い人を選ぶんじゃないですか?僕の家はごく普通の一般家庭ですし、僕の職業は介護士(しかも正社員じゃない)ですよ?どこが理想なんですか?」

「いつまでもぐちぐちと…、私は結婚相手が私のすることに干渉せず、鈴野家の名を汚すことなくただ子作りをしてくれれば良いんです。もう無駄話は必要ありません。結婚しなさい。」


優希は杏奈の質問に答えずに考え込んだ。


読んでいる人の多くは、ここまで偉そうな態度を取られれば『いくらお金持ちで美人でも結婚なんてするか!?』という感想や『結婚をなんだと思っているんだ!』という感想を持つだろう。


優希ももちろん最初はそう思った。


ただ、浮気されて離婚することになった優希は少し違う考え方も持っており、そもそも愛のない結婚をすれば、万が一別れることになっても傷つかずに済むのではないかと考え始めていた。


「子どもが欲しいというあなたの要望はわかりました。でも、僕にとってその結婚にメリットはありますか?」

「あなたの言うことは最もです。ただ、結婚してくれるのであれば老後の心配は不要になるでしょう。それに、こちらの条件を飲んでいただくのですから、あなたの家族が金銭面で困ったときは支援することもお約束します。」

「別に、老後の心配はあなたに面倒を見てもらわなくても大丈夫でしょう。今のうちに貯金をしておけば…」

「どうでしょうね…独身貴族だったり、結婚しても子どもを産まずに生活に余裕があれば良いなどと考えている人も多いようですが、実際に身寄りのない人間が介護施設で虐待を受けていたり、自宅に訪問介護に来た人間がお金を盗んでいたという事例もあります。あなたも介護士なら知っているでしょう?お金さえあれば誰でも老後も安心というのは間違いです。」


杏奈は表情を全く動かさずにスラスラと話した。

まるで優希を説得するための言葉を事前に考えていたかのようだ。

ただ、これに対して優希は何も言い返せなかった。

気持ちとしては1人の介護士としてキッパリと否定したかったが、実際に訪問介護が窃盗をおこなった事例や介護施設で行った暴行が原因で逮捕されている事例があることは事実だ。


もう誰も信用できないと思っていたが、そもそも信用していない結婚というのもありかもな…


優希は杏奈の話を聞いて、少しだけ心が動いていた。


振り返って考えると、普通の人間であればこの程度の話だけで考えが揺らぐことはないだろう。

ただ、優希は立ち直った、と言っても働けるようになっただけで本質的に心の傷が修復されたわけではなかったかもしれない。

そもそも浮気による心の傷が癒えることなどないかもしれないが…


そして、最終的に優希は結婚の要望を受け入れ、数日間、2人は様々な交渉をすることになった。

打ち合わせの内容を文字に起こすと長くなり過ぎてしまうため、最終的に2人が出した結婚の条件を簡単に説明しよう。


優希が出した結婚の条件

・子どもの教育は2人で話し合って決めること

・家族のことで問題が起きたときは助け合うこと

・浮気はしないこと

・結婚後、必要になったときは夫婦として話し合うこと


杏奈が出した結婚の条件

・結婚したらすぐに子作りを始めること

・基本的に杏奈がすることに口出しせず、命令に従うこと

・外出は問題を起こさないために杏奈が同伴・監視をする

・話し合いには応じるが、最終的には杏奈の言うことに従うこと

・立場は杏奈の方が上だということを忘れないこと


優希が出した条件に関しては、結婚したい相手に求める人も多いと思う。

その一方で、杏奈は出した条件は見るだけで結婚したくなくなるような条件だ。

しかし、優希はこの条件を受け入れて結婚してしまった。


物語を描く立場としては、浮気された後に幸せになる展開として結婚するまでの仲の良い2人の様子や結婚式などの場面を幸せいっぱいに描きたかったのだが、この2人は交際期間0日、結婚式なしで入籍だけ済ませて新婚生活をスタートさせた。


もちろん、優希の両親へ報告はしたのだが、表向きにはただのスピード婚だと説明した。


優希の両親はどちらかというと「結婚は慎重に相手を決めて、、」という考えだっため、優希が初めての結婚であれば反対したかもしれない。

ただ、優希が前の離婚から立ち直って幸せになろうとしている姿を見てながら真っ向から反対することはできず、半ば優希と杏奈に押し切られる形で結婚を認めた。


次に杏奈の両親だが、杏奈の両親は特に反対はしなかった。

まず、杏奈の母親だが、杏奈の母親は杏奈がこの程度の手段をとって来ることは予想していた。

そのため、結婚を報告した時も「あぁ、そう。じゃあ事前に子どもを産める男かは確認しておきなさいね。」としか言われなかった。

次に杏奈の父親の場合も反対はしなかった、と言うかできなかった。

杏奈の父親は優希と同じような立場で婿養子だ。

しかも、杏奈の母親と結婚する条件は家の借金を肩代わりしてもらうというものだったため、杏奈の母には頭が上がらず、杏奈の母親が問題ないと言えば反対することはできなかったのだ。


そして結局両家の顔合わせも滞りなく進み、一時的に優希は杏奈の実家の離れに住む

ことになった。

元々住んでいた平屋を優希が買い取る形で購入し、平屋を潰して新しく新築の家を建てることになったのだ。

ちなみに、優希に売るために家と土地はかなり安い値段で売ったし、新築を建てるためにかかるお金は全て杏奈の両親が出した。


さすがお金持ち、と言ったところか…


また、結婚に伴って優希は夜勤専従のアルバイトを一旦離れることになり、配信活動も活動を休止することになった。

そして、杏奈の実家に住み始める1日目、杏奈の実家に荷物を運び、杏奈の両親に改めて挨拶に行く。


「杏奈さんの家広いですね…。」


離れに荷物を運んだ後、杏奈の両親が待っている部屋に向かっている優希がつぶやいた。


「そうね、一般的な家よりは随分と広いでしょうね。それよりも、あなたは挨拶で余計なことは言わないで質問されたことだけに答えれば良いから。わかった?」

「はい、大丈夫です。」


杏奈は優希が言っていることに真面目に答えることもなく、釘を刺した。

優希は、またか、という表情でため息をつく。

杏奈にとって優希の雑談などに興味はなく、自分の言っていることのみが大切なのだろう。

ただ、優希はいくら愛のない結婚とはいえ、この杏奈の態度には不満を隠せなかった。


「お母様…夫を連れてきました。失礼します。」


杏奈が挨拶をして大きな和室に入ると、大きなテーブルの奥に義両親が並んで座っている。

優希も挨拶をして入ったのだが、杏奈の母親は優希をじろりと見ただけで何も言わなかった。

目の前に座ると、すぐに義母が話し始める。


「優希さん。まずは、娘と結婚してくれてありがとうございます。さっそくですが、なぜあなたが娘と結婚することを許可したかわかりますか?」

「はい…言うことを聞いてくれそうだったからですかね…」


優希は自身なさげに答えたが、その答えを聞いて義母は満足そうに笑顔で話し始めた。


「その通りです。よく自分の立場がわかっていますね。私は義母としてあなたに求めることはただ1つ、でしゃばらないことです。当主が杏奈に変われば、鈴野家に必要なことは全て杏奈が行います。あなたは杏奈のすることに意見せずに、サポートに徹しなさい。わかりましたか?」

「はい、わかりました。自分の立場は重々承知していますので、ご心配なく…。」


義母と優希の挨拶はこんな感じだ。

義父はほぼ空気みたいなものだったし、杏奈も特に話すことはなかったようだ。

15分ほどで挨拶を終えると、優希と杏奈は部屋を後にし、離れに向かった。

杏奈は優希と特に会話しようとはしなかったが、優希が杏奈の指示に黙って従うと言っていたのを聞いて満足そうだったのは確かだ…


その後、夕食は杏奈と優希の部屋に運ばれ、風呂も2つある内の一番近くの風呂を使うことになった。

この時運ばれた夕食は美味しかったし、大きな風呂を1人で使うことでまるで王様になったような気分だ。

ただ、家の中でできること以外、全て監視されるような環境になることに若干の窮屈さを感じていたことも事実。

少しの不安を抱えながら、優希は風呂から上がり、慣れない浴衣を着て離れに戻って行った。


部屋で2人で過ごすなんて気まずいけど、たくさん置いてあった小説を読んでいれば気も紛れるかな?


優希はこれまで筋トレやゲームをしてきたが、元々本を読むことも好きだったので本に囲まれた部屋に戻ることにワクワクしていた。

優希が離れに戻り中に入ると、部屋では先に風呂から上がっていた杏奈が布団の上に座って本を読んでいる。


綺麗な人だ…


優希は杏奈をみて素直にそう思った。


「随分と遅かったわね。男がこんなに風呂に時間をかけるなんて…、まぁ良いわ、さっさと始めましょう。」

「始める?何を?」


優希がキョトンと答えたのを見て杏奈は一瞬驚いた顔をしたが、すぐにいつも通りの顔に戻り、冷たくいった。


「結婚前にお互いに子どもができる体だとわかったんだから、子作りするに決まっているでしょ。早く脱ぎなさい私も脱ぐから…」


そういうと杏奈は部屋の電気を消し、優希の袖をひいて布団に座らせた。

優希は最初は驚いたものの、すぐに状況を理解して服を脱ぎ始める。

ただ、ここで優希は内心焦りを感じていた。

優希は浮気されてからというものの、ストレスのせいか性的なものに全くと言って良いほど惹かれなくなっていたのだ。

さらに、お互いに愛し合っているわけでもなければムードなんてあったものではないこの状況に優希は興奮するはずもなく、ただただ戸惑うばかりだった。


通常の結婚であれば疲れや緊張でできない日も軽く流して終わりだろうが、この結婚は子作りが最も重要な目的だ。できなければ色々と困る…。


「杏奈さん。するのは初めてですよね?やり方はわかりますか?」

「バカにしないでくれる?子どもができる仕組みくらいわかってる。早くして…」


杏奈は強気で応える。


「でも、いきなりはできませんよ。」

「いきなり?」


杏奈は、言っていることが理解できなかったのか、不機嫌な雰囲気で質問する。


「はい、無理やり始めれば痛みを感じるかもしれませんし、性刺激が多い方が妊娠しやすいようですので、痛みを感じながらするのはよくないかと…」


優希は妊活をしている時の知識をフル活用して無理やり杏奈を説得しようとする。


「じゃあどうするのよ?」


杏奈はイライラしているような言い方で優希に尋ねた。


「とにかく早くしなさい。これに関してはあなたに拒否権はないのよ。」

「あぁ、はい…」


こんな感じで2人の行為は戸惑いながら半ば無理やり進んでいった。

ただ、行為の中で杏奈には痛みがあるような様子が多く見られたため、優希は思わず切り出した。


「杏奈さん、今日はやめておきませんか?」

「はぁ…え?何で?」

「痛いんですよね?今日は初めてなわけですし、無理する必要はありませんよ?僕は男ですから杏奈さんがしたいときはいつでもできますし…」

「いや、でも…」

「大丈夫ですよ、1日くらいしなくても出産の時期は大きく変わりません。また、明日にしましょう?ね?」


優希は愛がない結婚と思っていたが、目の前で女性が痛みに耐えている姿を見て平気だと言うわけではない。


「わかったわよ…、じゃあ今日は終わりね。」


急に杏奈はそう言うと、プイッと背を向けて寝てしまった。


まじか、この人…。いくらなんでも無茶苦茶すぎる…


次の日…


日曜日だったが、優希は朝7時ごろに目が覚め、朝のシャワーを浴びるために風呂に向かった。

寝ぼけた頭で昨日のことをぼーっと考えながら着替えるために洗面所に入ると、そこにはちょうど裸になった杏奈が立っていた。


「ちょっと!ノックぐらいしなさいよ!!」


杏奈は叫ぶとすごい勢いで戸を閉める。


「あぁ、すいません!あ…そうだ…」


優希は何かに気づくとまた無断で戸を開け、杏奈に話しかけた。


「ちょっと!!」

「あの、昨日血が出ていたようですけど、大丈夫ですか?」

「血ぃ!?」


杏奈はほとんど叫ぶように答えている。

しかし、優希は心配が勝ってしまい、杏奈の様子も気にせずに話し続けた。


「少し血が出た程度なら大丈夫ですが、もし大量に出血していたり、次の日も血が止まらないようなら…」

「大丈夫!大丈夫だから!!」

「一緒にお風呂入りますか?」

「何でよ!!」


杏奈はまた戸を勢いよく閉めると、そのまま風呂に入ってしまう。

その日、杏奈は優希と口を聞いてくれず、1日中目も合わせてくれなかった。


その日の夜…


1日中無視されていても特に問題はない。

ただ、寝るために布団に横になあると、どうしても前日の夜に痛みに耐えていた杏奈のことを思い出し、気になってしまう。


優希は話しかけるべきではないことはわかっていたが、心配性な性格のせいでどうしても我慢できなくなり、とうとう話しかけた。


「杏奈さん。少しお話ししませんか?」

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