第5話 身勝手な理由による陰険な暴行

「車へこませやがって、この野郎!!!」


首尾よくターゲットのチェイサーを袋のネズミにしたはいいが、窮鼠猫を嚙むがごとき急にバックしてきたチェイサーに自分たちの車を傷つけられた小島たちは激怒した。

近藤にいたっては組のおっかない上役から借りた車なのである。


「オラ!降りてこいてボケ!殺したろか!!!」


不良たちはチェイサーの車体を鉄パイプや木刀で乱打してフロントガラスを割り、逃げられないと観念しておっかなびっくり降りてきた昭善を木刀で殴り、突き、拳で叩きのめし足蹴りした。

木刀や鉄パイプを手にした見るからに暴走族風の4人による手加減なしの暴力なんだからたまらない。


「すいません!すいません!勘弁してください!」


無慈悲な攻撃に耐えかねた昭善は懇願したが、車を壊された不良たちの怒りが収まるわけはなかった。

「てめえ、俺らの車どうしてくれるんじゃ!!」と、自分たちが悪いにもかかわらず昭善の顔にパンチを叩き込み続け、所持金の11000円を奪った上にチェイサーも腹いせとばかりに鉄パイプで破壊する。


そして女である須弥代の方を担当するのは、金城ふ頭での一件と同じく龍造寺と筒井の不良少女二人だ。

「はよ降りてこいて!ボケ!糞女!」と、助手席で泣きべそをかいておびえ切っている須弥代の髪をつかんで外に引っ張り出す。

金城ふ頭同様に二人は木刀で須弥代を殴打し、ハイヒールを履いた足で足蹴にするなどしたが、今回はより陰惨な仕置きをした。

「オラ!服脱げて!」と上半身裸にしたのだ。


露わになった女の乳房を目の当たりにして男たちは黙ってられない。

昭善を相手にするのもそこそこに「この女犯ってまおうぜ!」と近藤が提案、女である筒井も「犯ってまえ!犯ってまえ!」とけしかける。

須弥代は襲撃現場から少し離れた場所まで連れていかれ、そこで徳丸と近藤、高志に輪姦された。

小島だけは筒井と付き合っていたので参加できなかったが。


昭善は自分の女の前でぶちのめされ続けたばかりか、目の前で彼女を蹂躙されるという男として最悪の屈辱を味わわされたのであるが、6人もの不良相手にたった一人で自分の女を守り切れる男など滅多にいない。


不良たちは現金ばかりかチェイサーの備品、須弥代のアクセサリーなども奪い、幸せな時間を過ごしていた者たちを一転して奈落の底に落とすというカップル狩りの醍醐味を堪能し尽くしてはいたが、自分の車を壊されたことを理由にした暴走はまだまだ続いた。


レイプを終えた徳丸たちは上半身裸の須弥代を連れて駐車場に戻って来たが、今度は龍造寺と筒井がより恥ずかしい記憶を刻みつけてやろうと須弥代を全裸にしてヌードリンチを始めた。

極悪少女二人はシンナー(彼らの多くは日頃からシンナーを吸っていた)を須弥代の陰部に注ぎ、髪の毛をライターで焼き、タバコの火を背中や胸に押し付ける。


「熱い!熱い!あづいいい~!!やめてくださいいいい!!!」


須弥代は泣き叫んで哀願したが、女の涙は女には通用しないことが多い。

特に龍造寺と筒井のような奴には逆効果だった。


「泣きゃええっちゅうもんちゃうぞ!!」「ぶりっ子するなて!すんでれえムカつくわ、この女!!」と、余計に暴行に拍車がかかる。

無抵抗で泣くことしかできない須弥代の体にタバコの火を押し付け、髪を引っ張り回し、足蹴にし続け、男たちも「テメーらみてーなカップルは見てるだけでムカつくんだよ!!」などと吠えて血だらけになった昭善を殴る一方で、須弥代へのリンチにも参加した。


昭善と須弥代への暴行は午前6時まで続いたが、そろそろ明るくなってきて人が公園に入ってくるかもしれない時刻である。

さっきも見ず知らずの車が駐車場に入ってこようとして小島と近藤に追っ払われていた。

そろそろ時間だ、退散しようか。


だが、両人とも長時間の苛烈な暴行により金城ふ頭で被害に遭ったカップル以上にひどいケガを負わされていた。

このままここに置いておいたら、後で間違いなく通報される。


不良たちはズタボロにされた二人をひとまず連れて行くことにし、昭善を近藤の車の後部座席に、須弥代を小島の車の後部座席に押し込んで現場を離れた。


手ひどい暴行で呆然自失の二人をそれぞれ乗せた二台の車は港区の空き地まで行って停まり、小島と徳丸、近藤が車を降りて今後について話し合う。

だが、この時点で彼らが一番心配していたのは近藤が組の上役から借りた車を傷つけられたことだったようだ。

どう考えても暴力団幹部ともあろう者が怒らないはずがない。

あのカップルにしたみたいな目に今度は自分たちが遭わされるかもしれないではないか。

現に小島は組員だった頃に兄貴分の車を傷つけてしまった結果、こっぴどくヤキを入れられた経験がある。


二人については「やりすぎちまった。どうする」と話題に出はしたが、この時点では二の次だったのだ。

誰かがハッタリ交じりに「男は殺して女は風俗にでも売り飛ばそう」などと言い出したが、それは当初、言った本人も含めて誰もが軽口と受け止めていた。

この時までは。


そしてその軽口は後に言霊以上の力となって彼らを暴走させ、事件がより最悪の結末を迎えることとなることを彼ら自身も予想していなかった。

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