第14話 感情【ノヴァ視点】
……魔力切れ、か。
静かに眠るエヴァには魔力がほとんど残っていない。それ以外の異常、傷や呪いなどはないようだ。
さっきの強い魔力の気配はエヴァの魔力だったのか。ひとまず安心だが、どうしてここまで……。
『……この子には感謝しないとね』
感謝? 感謝されることはあっても、滅多に感謝をすることはない
「それは、どういうことかな?」
『エヴァはわたくしたちの愛し子を救ってくれたのよ』
「……愛し子?」
『ええ、そうよ。わたくしたち妖精が愛してやまない、そんな存在。愛し子は生まれた時から愛し子で、全ての妖精に愛されるの』
妖精の愛し子、全ての妖精に愛される存在。
それはかなり危険な力を持っていることになるのではないだろうか?
妖精に祝福されるとその妖精の力を使えるようになる。祝福される者は何かしらの理由で妖精に愛されている。
つまり全ての妖精に愛される愛し子は、全ての妖精から祝福をされる可能性があると言っても過言ではない。
人の世界でこのことがおおやけになってしまったらほとんどの国が愛し子を狙うだろう。
その力を手に入れた国は世界の均衡を壊すことさえ可能だ。
ヴァンパイア、ハイエルフ、龍人、エルフ、ドワーフ、獣人、そして人間の順で強いとはっきり分かっているからこそ保たれている世界の均衡。
これが壊れてしまったら世界は争いまみれになるだろう。
『……ノヴァ、あなたが危惧していることも分かるわ』
レジーナに心を読まれた。
妖精は意識すれば他人の考えていることが分かる、だったか。
『ええ、そうよ。ごめんなさいね。……話を戻すと、遥か昔まだあなたが生まれていない頃、実際に起こったのよ。愛し子を始まりとする争いが、ね。だからわたくしたちはその後、迂闊に祝福を与えないようにしたの。でも、そうしたら
レジーナにつられてエヴァの腕の中にいる黒猫に目をやった。
ノクティと呼ばれた黒猫はすやすやと眠っている。
『ノクティを救ってくれたエヴァには全ての妖精が感謝している。これからたくさんの妖精がふたりに祝福を与えにくるわ。もう二度と愛し子を失うという不安に苛まれないようにするために、愛し子を救ってくれた
「……そうか」
この事実が知れたらエヴァもノクティも狙われるようになるだろう。
ならば私は守り抜こう。一度この手で奪ってしまったものを、あの笑顔を守るために。
『ノヴァ、あなた……』
レジーナは驚いたように言った。
「何かな?」
『エヴァが大切なのね』
「……! 確かにそうだね」
レジーナの言葉でふと気づいた。
何かを、誰かを大切だと、失いたくないと思ったのはいつぶりだろうか?
『ふふ、エヴァはあなたに良い影響を与えているのね』
「……うん、エヴァには感謝しないとだね」
嬉しそうに笑うレジーナにつられ、私も自然と笑顔になった。
これにレジーナが驚いたのはまた別の話。
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