第4話 100年が経った日
甘い、香り?
「……ああ、切ってしまった」
そんな呟きが聞こえた。
闇の中に突然現れた
——喉が渇いた。
もう私を止める者はいない。
ゆっくりと、一歩ずつ、その紅に近づいていく。
「エヴァ? どうかし、……た?」
——血、血、血が欲しい。
遠くの方で誰かの声が聞こえた気がしたが、そんなもの今はどうでも良い。
私の瞳は紅以外を映していなかった。
「エヴァ!」
誰かに肩を強く掴まれる。
——ああ、こんなところに血が。
右肩を掴むその手からは甘い香りが漂っていた。
その手を掴み、自分の口元へと引き寄せる。
——喉が、渇いた。
私は紅が溢れ出しているところに思い切り咬みついた。
「っ!?」
ぷつんと牙で傷つけたところから生暖かい液体が溢れ出る。
口いっぱいに広がる鉄の味と甘さ。体の底から求めているもの。
——美味しい。
よく味わった後にごくりと飲み込む。
それは渇き切った喉を潤してくれた。
——もっと、もっと欲しい。
一度知ってしまったものはそう簡単には手放せない。
もっと、もっとと貪欲になっていく。
感情のおもむくまま、醜い欲に支配されていく。
「……エヴァ、ごめんね」
そんな声が聞こえたと思ったら、トンと額に触れられる。
私の意識は闇の中へと下降を始めた。
「大丈夫。起きる頃には全て——」
あ、れ? 私は、何を……? 父様、どうしたの? そんなに悲しそうな顔をし、て——。
そこで私は意識を手放した。
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