第2話 神隠し

???side

雨が降り注ぐ

あの時と、何かしら似ている

…体に蝕まれる草木が鬱陶しい

この痛みは、いつ解放されるのだろうか

こののろいは、いつ無くなる?

俺は、俺自身の右頬に植え付けられている草木を片手で撫で下ろす

500年……700年…

どんだけ時が経っても、変わりはしない

この呪いから逃れることなど不可能だ

強くならなければならない

魂を集めなければならない

そんなことを考えながら、森の中を彷徨う

ある程度歩くと、見覚えのある鳥居が見えた

ボロボロで、使い物にならない鳥居

この森に、奴らをおびき寄せる

あの結界は厄介だ

だからまず、"外のヤツら"が先だろう

俺は古い札を取り出す

そして、鳥居にかざし……


「……梦見渾沌ゆめみこんとん


そうぽつりと呟く

すると、地面からゆらりと黒く、渾沌こんとんの形をした怪しい煙が現れ、その規模はどんどんと膨らむ

やがてはこの森を包み込むように飲み込むのだろう

ふと、高い木の上に飛び移り、街を見下ろす

休日というのもあるのだろうか

親と子で出かけている者

大切な相手と出かけている者

友人と出かけている者

くだらん

見ているだけで憎たらしい

どうせこの世界も、簡単に壊れる

何度魂を殺しても、この呪いは解かれなかった

何度試しても、変わらなかった

しかし、今回は違う

あれだけ強いやつが沢山いるんだ

アイツらを使えば────

きっとこの呪いから解放される

きっとこの痛みから……逃れられる



「覚悟しとけ……」


この世界も、食らい尽くしてやる




青娥セイガside


買い物からの帰り

雨の中、傘をさして歩く


「にしても…買い物帰りに雨って……運悪いなぁ」


ポツリと言葉を零す


そう考えていると、ふと聞こえてくる


「ミャーン…ミャーン……」

 

チリン……

 

「……ん?」


小さな通路から聞こえる猫の鳴き声と鈴の音


気になり、ゆっくりと覗く

そこには蹲り、服も髪もボロボロの状態で倒れていた一人の子供


黒く染まった短い髪に、灰色のパーカーを着た小さな体

近くには壊れてしまった杖

そして、子供のそばで頑張って鳴く、白く染った子猫の姿があった

「え?!おいッ…!ちょっと大丈夫か?!!」


荷物を近くに置いて急いで駆けつけ、子供の体に触れる


「冷たい……が、息はあるな…」

「ミャーン」


子猫は子供の近くで小さく鳴いた

「何だこの猫……にしても、どうするんだこれ…今の状態じゃ連れてけないしな…」


雨は降ってるし、買い出しの荷物もある


みんなは任務にいってるし……


「ん?青娥?こんなところで何しとるんや」

考え込んでいたその時、ちょうど黒鉄が通りかかった


とてもいいタイミングだ
そう思いながら、黒鉄をこちらに呼ぶ

「黒鉄!ちょうどいいところに。ちょっと手伝ってくれ」

「えぇ……ちょうど任務終わって帰ろう思うたんに……って………どないしたんその子!怪我しとるやん…」

「嗚呼…わからないが……ここに置いていくなんて、流石にできないだろ…」



???side

2つの人物が、彼を見つけた

冷えきった彼を、オレンジ髪をした者が彼を肩車し、白髪の者が持っていた大きな荷物を持ち歩き出す

見てわかる

この者達は不思議な力を宿しているのだ

次元や世界によって違いはあると主様は言っていたが、ここまで違うとは、不思議である

そんなことを考えながら、だらりとしている彼を見て、着いていく


────小さく、白い体を動かしながら


…やはりこの体は慣れないものだな



風樹side

寒い

痛い

薄らと見えるのは、地面にポツポツと落とされる冷たい雨

変わりのなく、何も無い景色

横になって、蹲る

力が入らない

……お家に帰りたい

そう思っても、帰る場所なんてどこにも無いんだろうな


「……?!……ぉいッ…!…………大丈……………!!」


誰……?

何かが、ぼんやりと見える

一つは白、もう一つはオレンジ

はっきりとは見えずにいた


僕は、ゆっくりと、意識を手放す


「…………ん…」

目が覚める

先程までの寒さはどこへ行ったのか

とても……暖かかった

ゆっくりと、体を起こす

「……ッ…」

まだ全身がズキズキと痛むな

周りを見渡すも、誰もいない

……行かなきゃ

僕はそう思いながら、起き上がろうとする


「おや?お目覚めですかな?」


上から逆さまの状態で、顔面が目の前に知らない人が居た

両頬に刺青のようなものがあり、オッドアイがとても特徴的な……人?

「?!ひッ……!」

でも僕は怖くなって、ガタンッと音を立て、ベッドの中に潜る

同時に、扉の開く音が微かに聞こえた

「何しとるん……」



黒鉄side

「いや~この方が起きたので、ご挨拶にと」

子供の様子を見ようと中に入れば、鏡虹が天井からぶら下がった状態でそう言う

ベットに寝っ転がっていた子供は怯えながら毛布にくるまっておった

「挨拶にしては怖すぎるやろそれは……まだ子供なんやから、怖がるのも無理ないやろ」

呆れながら言ったあと、僕は子供に近づく

「大丈夫やで~!ここに怖い人は居らへんから」

そう言っても、子供は潜ったまま

それもそうや

知らんうちに、知らん場所に居るんやから

そりゃ困惑するわな

これは………どうしたもんか……

「さて、私はこれにて失礼しましょうかね」

鏡虹はそう言って、その場を後にする

「嵐のように去ってったな……」

ふと、何やら別の気配を感じた

「ん??」

子供の方に目線を向ける

やけど、そこには子供以外誰もおらんかった

子供はゆっくりと体を起こし、姿を現す

そこには、弱った体と、悲しげな表情

「………ッッ…」

痛みに耐えながら、起き上がる子供

「待て待て待て。君は怪我人やろ?」

僕は子供に近づき、手を伸ばし、止めようとした

すると、子供はビクッとして僕の手を振り払い、怯える

「あっ……ご…ごめんなさいッ………」

子供は静かに言った

「……いや、大丈夫や」

何かしら、事情があるんやろう

雨の中で倒れてる子供を、ほっとく訳にはいかんしな…

それに、子供の左足は駄目になってもうとる

治すことも難しいやろう

可哀想な子や

そう考えていると、僕の足元に白い子猫が現れる

「ミャーン」

子供の近くに身を寄せ、グルグルと喉を鳴らした

子供はそのまま、子猫を見つめる

確かこの猫、子供にずっと着いてきたな

「君。名前は?」

僕がそう聞くと、子供は子猫を撫でる

しばらくの沈黙


「……僕は…」


バンッ!!

「たのもぉおおおおおお!!」

子供が名前を名乗ろうとした時、勢いよく扉が開かれた

僕はびっくりした後、彼女に言う

「びっっっくりした………どうしたん"らいちゃん"…休んどる子がおるんやから静かに入り」

そこには、元気な姿で三本のしっぽをゆらゆらと揺らしながら居る、らいちゃんが立っていた

「クロガネ〜!神主が呼んでるよぉ〜!あと、"その子も連れてきて"だってぇ〜」

らいちゃんはそう言いながら、子供を指さす

「神主が?なんでこの子も連れてくん?」

僕が聞いても、らいちゃんは首を傾げた

「さぁ?わっかんないけど、行こぉ!」

らいちゃんはそう言って、先に行ってしまう

「しゃーないな…」

僕はそうぽつりと言いながら、子供を連れて、神主のところまで行くことに

「起きて早々すまへんな。車椅子用意するから、少し待っとって」

僕は1度、部屋を後にする




風樹side

車椅子を持ってくると言って、彼は部屋を出る

僕の体のことを考えてだろう

左足を動かそうにも、当たり前だが、一向に動かなかった

起きて早々、酷いことをしてしまったと思っている

親切な人の手を、振り払ってしまったから

「みゃおーん」

白猫は、僕にスリスリと体を擦り寄せる

なんとなくだけど、「大丈夫」だと言ってくれているようだった

さっきの人もそうだけど、ここは人間では無い人もいるみたい

僕は昔から、”人間ではない人”にも懐かれる

だから、さっき見たネコさんにも、驚きはしない

それに───

さっきの人たちに、

……悪い人では、なさそうだ

「戻ったで~」

彼はそう言いながら、車椅子を持ってくる

「あの……」

「ん?なんや?」

僕が声をかけると、彼は僕のほうに視線を向けた

「名前…風樹……です」

ぼそぼそと、先ほどの質問に答える

少し間が開いた後、彼は僕の目線に合わせるようにしゃがむ

「風樹くんか。僕は黒鉄陣。よろしゅー」

黒鉄さんは、笑顔でそう言った

「…はい。よろしくお願いします…あの、黒鉄さんが僕を助けてくれたのですか?」

そう聞けば、あーそのことかと言って、答えてくれる

「僕は任務の帰りやったんけど、ちょうどもう一人の仲間が風樹くんを見つけてな。体の状態もひどかったもんやから、連れてきたんや」

黒鉄さんは話しながら、僕の体をもって車いすに乗せた

「そうでしたか…ご迷惑をおかけしてすみません……助けていただき、ありがとうございます」

車椅子に乗ると、僕はそう言って、頭を下げる

「いやいや、こっちこそ、突然知らんところに連れてきてしまってすまへんな。まぁそこらへんのことも聞きたいから、とりあえず神主のところまで行こうか」

黒鉄さんは、僕が乗っている車椅子を押し、神主という人のところまで向かうことにした

この人は、何かお兄さん身を感じるのかもしれない


『おいで……おいで…』


大人、子供問わず

僕の耳元に、色んな声が聞こえてくる

また、聞こえてくる


鬱陶しい───



ホシグマside

俺は神主に呼ばれ、事務所に向かった

今回の任務での話らしいが……

「誰だ?」

知らない子供が車椅子に乗り、それを黒鉄が押している

「こらこらおじいちゃん。怖がらせたらあかんで?」

黒鉄は俺に向かって言う

「いや怖がらせてねぇよ…それで?お前さんh」

「わあああ!それらいのお菓子ーー!!」

俺が子供に聞こうとしたが、らいの大声でさいぎられる

らいは慌てながら、事務所を走り回っていた

「ダメだっての!!これはみんなのお菓子!らいちゃんだけのじゃないから!!!」

お菓子が入っているかごを高く持ち上げる青娥

まぁ…なんとなく察しはつくが……

「あいつら…何やってんだ……」

俺がそう呟けば、いつの間にか足元の近くにいる赤竜が前へ出る

「お2人共〜。そうしていると転んでしまいますよぉ〜」

赤竜は二人にそう言いながら、軽く注意をした

「あ、紹介するわ。あそこで駆け回って、さっき乱入してきた猫ちゃんがらいちゃんと青娥。あと、おじいちゃんの近くにいる小さい竜が赤竜」

「おじい……?」

黒鉄が子供にそれぞれのメンバーを紹介していると、俺のことをおじいちゃんと呼んだせいなのか、子供は首をかしげる

「…俺はホシグマだ。よろしくな」

俺は子供を見て俺自身の名前を言う

すると、子共は背筋を伸ばし、俺を見た

「風樹です……よろしくお願いします」

「なーん!」

「?!」

風樹が自己紹介をしていると、車椅子の横からひょこっと顔を出す一人の娘

彼はびっくりして、目を丸くしている

「りゅーがちゃん。あかんで~驚かせちゃ」

黒鉄は、りゅーがに向けてそう言った

「え〜?うち驚かしてないもん」

りゅーがは少し頬を膨らませて言う

後に黒鉄から事情を聴けば、雨の中倒れていた風樹くんを青娥と黒鉄で保護したとのこと

「なるほどな…それでここにいるっつうことか」

俺は事の経緯を理解した

「なーん」

「そう。そんで神主が風樹くんも来てほしいっちゅうことやったから、今ここにいるんやけど……」

黒鉄がそう言いながら、とある二人に目線を向ける

「お菓子いぃぃぃ!」

未だ、らいは叫びながら青娥の持っているお菓子を追いかけているのが目に入った

すると、少し離れた場所から声が聞こえる

「お前ら騒ぐな。遠くからも聞こえていたぞ」

神主は、呆れながらそう言った

らいは神主に気付いたのか、急いで神主のところへ向かう

「あ!神主!!聞いてよぉ!せーががお菓子を渡してくれないの!」

「俺が悪いみたいに言わないで欲しいなぁ……」

青娥は呆れながら言い、らいを見る

「らい。お前は数分前に私が黒鉄と連れてきた子供を呼んで来いと言った時……菓子を食べてなかったか?」

「ギクッ…!た……タベテナイモーン…」

神主の言葉に、らいは心当たりがあるようだ

「全く…相変わらずだな。あの猫は」

任務終わりの夜桐は、その様子を見ながら言った

「ほんまやで…これじゃ話が進まへんわ」

黒鉄も同様

風樹くんはポカンとした状態で眺めている

「ミャーン」

白い猫が、風樹くんの膝の上に乗り、ゴロゴロと喉を鳴らして擦り寄り、甘え始めた

「その白猫…お前のか?」

夜桐が彼にそう聞けば、少し間が開いた後に、彼は口を開く

「えっと…小さい頃からの……友達です…」

微笑みを浮かべながら、彼は白猫を撫でる

そんなこんなで喋っていると、そろそろ本題に入ろうという赤竜から提案で、やっと話が進むようになった

なんでも、依頼が入ったらしいのだが、それを俺たちにお願いしたいとのことらしい

「最近のニュースについて、お前らは知っているか?」

神主がみんなにそう聞く

しかし、全員あまり知らない様子だった

「ざっくりとになってしまうが、ここ最近、行方不明者が多発しているらしい」

いわゆる人探しってところか

神主は話を続ける

「そこで、明日お前たちには依頼主の所にって現地調査をしてほしい」

場所は、ここから少し離れた街にある森と海

「行方不明者が多数ってなれば、警察とかに任せられるんじゃない?」

俺の後ろから突然声が聞こえ、俺は少しばかりびっくりする

「レドナ?居たのかよ」

振り向くと、そこにはレドナの姿があった

「ううん?さっき帰ってきたばかりだよぉ」

レドナがそういうと、神主がレドナに気が付く

「帰ってきたか」

神主がレドナに向かって言った

するとレドナは、ニコリと笑顔で返す

「ただいまぁ~。神主ちゃん。言われた通り、あの森と海に結界貼って来たよ」

「嗚呼、ご苦労だったな」

結界?

そこまでする事なのかと疑問に思ったが、神主が話を続ける

「話を戻そう。今回の騒動は、警察でも対処ができないらしい。何せ、一度調査に向かった者の連絡が途絶えたらしいのだからな」

警察でも太刀打ちができない

神主自ら向かってみれば、只者ではない気配を感じたらしい

だからこそ、依頼が来たのだろう

「ふむふむなるほど。これはまた大事おおごとの予感がしますねぇ」

上から声が聞こえたかと思えば、天井からぶら下がった状態の鏡虹が居た

「お前いつからそこに居たんだよっっ!!!」

俺は鏡虹に向かってツッコミを入れる

全然気づかなかった

「はい??皆様が来てからずっといましたよ?」

鏡虹はポカンとしながら言葉を返す

「そこにいると天井が濡れちゃいます。掃除するの大変なんですから、降りてください鏡虹さん」

赤竜がそういえば、らいも降りろと言い始めた

それを聞いたからなのか、仕方ありませんねぇ…と言いながら鏡虹は天井から地面へ降りる

相変わらずの光景だ

またらい達が騒ぎ出す

これでは話が進まないな

「皆様。お疲れ様です」

騒がしくしていれば、書類を持って来た宝泉の姿があった

らいは……向こうに夢中で気づいていないようだ

「お疲れさん。その書類どうしたんや?」

黒鉄がそう聞くと、宝泉はこの書類について話し始める

「実は、経理を終わらせた後に、神主から頼まれまして。今回の依頼でまとめたものなんですけど……内容が不可思議なことばかりでございましてねぇ」

話を聞けば、調査対象とされた森や海の所有者からの依頼らしい

俺たちは他の奴らが騒いでいるを止めようとしたが、いつの間にか、らい、りゅーが、鏡虹、青娥の四人はどこかへ行ってしまった

それ以外のメンバーはその場に残り、静かに書類を覗く

内容はこうだ

いつもは沢山の人々が気楽に遊びに来て、賑わっていた

しかし、大人や子供問わず、遊びに来る人は減り、さらには行方不明者まで出てきた

原因がわからないままでは、今後も影響が出るかもしれないと考え、所有者がこちらに依頼を送ってきたらしい

書類の内容を見てみると、いくつかの共通点が見つかる


一つ、行方不明者である子供が ”誰かに呼ばれた” と言っていたこと

二つ、老若男女問わず、 ”知らない者の誘い声が聞こえる” ということ

三つ、森と海、どちらも ”同じ笑い声が聞こえる” ということ

四つ、 ”居ないはずの人物” がその場に居たということ


まるで、何か狙っているかのような


何かを、招いているような



「………」

風樹がぽつりと呟いた

「何か知っとるんか?風樹くん」

黒鉄がそう聞けば、彼は小さく頷く

しかし、何やら言いずらいようだった

「知っているのなら、話してはもらえないか?」

神主が優しく声をかける

すると彼は、ぽつりぽつりと話し始めた










たたりもっけside

今日もまた、配達を終わらせ、私の持っている大きな羽を広げながら空を飛び回る

夕日の景色は、いつ見ても美しい

この次元に住む者たちも、羨ましい限りですね

私は地獄出身であり、あまり様々な世界を覗きに行くなど考えてもみませんでしたが……

「それにしても、あの方々の術式や能力、共に凄まじいものでございますねぇ…主様からもお伝えされましたが、これは私が手を出さずとも、やり遂げてくれますでしょう」

現に、森と海に張られた結界も素晴らしいものです

天界人の方々の力も素晴らしいですが、これまた違うお力

興味が湧いてきましたね

宵ノ鎮守ヒノシズムという組織

そして月の神…ですか

この世界の神々にもお会いしたいところですが、私には叶わないことですね

そう少しばかり考え事をしていると、感じたことのある気配を感じました

「おや…?これまた懐かしい方でございますね」

それも、珍しい方も率いている

私の目線には一人の少年と、一匹の猫様

「まぁ……何があれど、あの方がいらっしゃれば、問題ありませんか」

私はそう言いながら、空を飛ぶ

『おい。聞こえておるのか?たたりよ』

耳元から、主様のお声が聞こえてくる

恐らく地獄からの連絡でしょう

そういえば、今日の報告をすっかり忘れていましたね

すぐさま御札おふだを耳元に貼り付け、飛びながら話を始めた

「はい。聞こえておりますよ。”イグニス様”」




地獄にある屋敷にて

一人の管理人が、和室の中で肘をつき、地獄にある街並みを眺める

炎の大悪魔と、大妖怪の間に存在し、地獄の頂点に立つ者

彼女は小さなため息をしながら、片手に持っている瓢箪ひょうたんを持ち上げた

中にあるのは、地獄でしか手に入らないマグマしゅと呼ばれる1万度を超える酒

それを飲みながら、彼女は部下と連絡を取っていた



イグニスside

『連絡が遅れてしまい申し訳ありません。我が主様。任務は順調に進んでおりますので、ご安心くださいませ』

宙に浮いている古き御札から、たたりの声が聞こえてくる

たたりからの報告が遅いと思い連絡してみればこの返答だ

「お主のぉ…また何か企んでおるのではあるまいな?あまり妾の仕事を増やすでないぞ」

妾は呆れながらそう言えば、奴はクスクスと笑う

『まさか。そのようなことは、何一つ考えておりませんよ』

こやつは何を考えておるのか、たまにわからなくなる

しかし、今回の事は慎重に動かなければならない

早速だが、本題に入ることにした

「そんなことはよい。それより、あの者たちとの接触はできたのか?」

妾がそう聞けば、気になる情報が耳に入る

『えぇ…しかし、天界の方々も目をつけてるようで、珍しい方があの少年についているようでしたよ』

「ほぉ…?その者が誰なのか、わかっておるのじゃろうな?」

大体予想はつくが、一応聞いておこう

『はい。主様もご存じかと思われます』

後にその名を聞けば、案の定そうであった

『それと……本題に入るのですが…やはりあの二人が関わっているようです。それも、を連れて』

のろい子

その言葉に、妾は少しばかり気に食わなくなった

「そうか…あやつにかけられた呪いは、あの者たちでも難しいものだと思う。じゃが…あの少年と……今は子猫じゃったか?あやつらが居れば、何とかなるじゃろう。呪い子に関しては、その次元共に任せるとする。そして、妾たちの標的は…」


”あの悪神あくしんなのじゃから”


『はい。承知しております。それでは、引き続き調査いたしますね』

連絡を切ろうとした部下を、妾は止める

「待てたたり。もう一つ」

『はい?』

「決して、

『……承知いたしました。我が主様の、思うままに』

たたりはそう一言残し、連絡を切った

それと同時に、御札は焼け焦げ、風に流される

あやつらが何をしたいのかは分からないが、良からぬことは確かだ


全ての世界に存在することわりを、崩すわけには行かぬ




現世

遠くに離れた都会街

街中に歩く人々は、いつも通りの生活を送る

そんな中で、こんなニュースが入ってきた

『最新情報をまとめてお伝えします。〇〇市付近にある森や海沿いで行方不明者が多発しているとの情報です。警察によりますと、2週間ほどで行方不明者数が15名ほどになるとのこと。付近の学校はこの件に伴って休校するなどの対策をしています。住民の方々に話を聞きました』

女性のアナウンサーがそういえば、画面が変わり、住民のインタビューが始まる

子供を外に出すことが怖いという恐怖心を持つ者

今後どうなっていくのかという不安を持つ者

そんなもの自分には関係ないと感じる者

様々だ

だが、一部の者はこういった


───にあったのだと


『警察は、事件性があると見て、捜査を進めています』








森の中、海の中から聞こえる沢山の笑い声












複数の口が、ニタリと笑い、怪しく誘う




















おいで













              おいで













                                いっしょに


















                        ?





























…To be continued

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