第3話 勇者と魔王

「魔王、どこに行くの?」

地上に上がる階段を登りながら、僕は聞いた。

「余の部屋だ。地上に上がってすぐのところにある」


上がったところはまだ綺麗だった。数歩、歩いた先にある部屋に魔王は入っていった。

「勇者、入らないのか?」

「入っていいの?」

魔王は頷く。勇者は、部屋に入る。

「広い」

「少し、準備かかるから好きな本を見ていていいぞ」

「分かった」

本棚を見てみる。どの本も背表紙がしっかりしている。目についた、一冊を取り開く。

「草?」

なにやら、難しそうな文章の隣に草の絵が書かれている。

パラパラと他のページも開く。どのページにも草花の絵が描かれていた。

本を元に戻し、新たに隣の本を取る。

これもまたさっきと同じで、植物が描かれている。

「魔王、植物好きなんだ」

……

……

「行くか」

「うん…って、魔光が見えない」

(勇者、なんで魔光見えるの?なんでー!聞きたい。けど、今は駄目だな。また、後で聞こう)

先ほどの魔王の魔光は緑と金と黒が混ざっていたのだ。

だが、今は全くと言っていいほど魔光が見えない。

ドアを魔王が開くが、すぐに閉じた。

「魔王、どうしたの?」

「いた。四天王の一人が」

「えっ‥?」

そしてすぐ聞こえた。地下へ続く扉を開く音が。

「勇者、行くか!」

「うん。っうわぁ、いきなりなにするのさ」

魔王は勇者を抱え、魔王城を飛び出た。


煌めく太陽が地上を暖めている。

勇者を降ろし、空を見上げた。

「魔王、なんでいきなり抱えたの?」

「四天王らに見つかるのが怖かったから」

「ふ~ん。そういえばさ、魔王行きたいところある?」

「んー、町に行ってみたいかな?」

「町…ここからならピルツっていう町があるよ。そこに行く?」

魔王は頷く。

「魔王、気になることがあるだけどいい?」

「なんだ?」

「どうやって魔力と魔光を抑えたの?」

「これさ」

そう言って、さっきまで付けていなかった指輪を見せた。

「あー、魔導具で抑えたの」

勇者は、まじまじと指輪を見つめる。

「とても不思議な形の指輪だね」

蛇が巻き付いているような形。赤い魔石が蛇?の目らしきところについている。

「自分で買ったの?」

「違うさ、ある女性から貰った」

(本当は、要らないって投げ返されたものなんだけとな)

(あんな小さな物でも魔力と魔光を抑えることができるんだ。初めて知った)

「魔王。名前、聞いてなかった。なんて言うの?」

「余か?フリードだ。勇者は?」

「僕は、リアー。魔王、これからフリードって呼んでいい?」

「もちろん。勇者こそリアーて呼んでいいか?」

「いいよ」




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