第6話 街ですよ! 最弱職!
「ここだよ! この門の先が私たちが目指していた街『オリスクタウン』よ!」
それはすごく巨大な壁だった。全長何mあるかも想像がつかないほど巨大な壁。壁には門が埋め込まれていて、ユニコーンやドラゴンなど様々な装飾がされている。
「すごーい! ビルぐらいあるんじゃない? この壁!」
上まで見ようとしたら首が痛いくらいだ。
「ふふふ。テンション上がってるねー琴音!」
由紀がニヤニヤしながらこっちを見てる。
なんか恥ずかしいな。子供っぽいって思われたかな。
「だ、だってこんな光景、日本じゃ見れないじゃん! テンション上がるよ!」
自然な反応だったかな?
「だよね! さ、入ろ入ろ! 街はもっと凄いよ!」
由紀はそう言うと私の手を強く握る。
「ちょっ!?」
ほんと、すぐこうやってスキンシップするんだから。
「うん。いこ!」
私は由紀の目を見て深く頷いた。
そう言った私を見ると由紀が走り出す。どんな街なんだろう。なにがあるんだろう。
たのしみだ。
***
そこはまさに非現実の世界だった。
「す、すっごーい!!!」
空を飛ぶ絨毯! 空を飛ぶ自転車! 獣人にエルフ! すごい! すごい!
「すごいよ由紀! 見てほら! 絨毯が空を飛んでる! 人が乗ってるよ!」
私はそう言って空を指さす!
「ほらあっち! 猫耳の女の人がいる! 耳が動いてる! あっち! 耳が長い! エルフだよエルフ! すごいすごい!」
「ちょ、落ち着いて琴音! ほら、行くよ! こんな門の前で止まってたら迷惑だよ」
由紀はそう言うと歩き出す。
「ちょっ! 引っ張らないでよ! 私たち手を繋いでること忘れた!? あいたたた!」
「覚えてますー。だから歩いてるの! ほら、案内するから行くよ!」
「わかった! わかったよ!」
「うん! それなら良し!」
そう言うと由紀は力を緩めてた。
「まったく。すぐ力づくで動くんだからー」
私はそう言いながら手を撫でる。
「それで由紀。どうやって新イベントの情報を集めるの? なにか当てがあるの?」
「ふっふっふー。それがあるんだよ! ま、街の案内をしながら教えるよ。着いてきて!」
情報集めと観光スタートです!
***
門から真っ直ぐに広い道が続いていた。その道を挟むように色んな店が並んでる。まるで商店街みたい。
「すごい! お店がたくさん!」
右と左どっちにもお店があってどの店にもエルフや獣人がいる!
「そりゃそうだよー。ここは商店街なんだから! ま、といっても食べ物関係が多いけどね。この辺りのお店は。食材が欲しい時はここで買ってるかな」
「なるほどねぇ」
ん? てことはここにある物みんな買えるってこと? てことはまさか……。
「食材を売ってあるってことはまさかこれを調理できるってことなの?」
「もちろん! それに買えるのは食材だけじゃないよ! 違う場所に行けば装備も家も! ここでは何でも手に入るし何でも出来る! まさに夢の世界だよ!」
そう言って由紀は手を大きく広げ最高の笑顔をした。
「すごい! ということはこの街でも手に入るってこと!?」
「もちろん! 装備屋が多い通りや飲食店街もあるよ! オススメの喫茶店に後で連れて行ってあげるよ! すごく雰囲気いいお店があるの!」
「飲食店! 装備! すごい! ワクワクしてきた! 早く行こ! 街って感じがして来たよ!」
「よーし! 色んなお店を紹介しちゃうぞー! 行こー!」
由紀が前を指さしてそう言った!
歩いて数分だろうか。店の雰囲気が変わり、街を歩いている人の格好も鎧やローブを着ている人が多くなってきた。
「ここが装備屋が多いエリア! 服や武器、ポーションなどなど! 冒険に役立つ便利アイテムが売ってるよ!」
「すごい! みんなカッコいい装備を付けてる! わぁ! かわいいローブ! 大きな杖! 私もあんな魔法使いになりたいなぁ」
「お金が手に入ったらここに来ようよ! 一緒に装備を買お!」
「ほんと!? その時は由紀が選んでよ。私の装備!」
「もちろん! さ、次行こ! オススメの喫茶店に案内するよ!」
「やった!」
***
「着いたよ! ここが飲食店街! なんでもここで食べるんだ!」
すごい! ゲームなのに匂いを感じる。
「そういえばゲームなのに味とか感じるの?」
「もちろん! このゲームは匂いや味まで再現してるんだよ! さ、食べに行こ! オススメの喫茶店に連れて行ってあげる!」
「たのしみ!」
数分が経っただろうか。
「ん? なんだろうあの子」
不思議な女の子を見かけた。
「あれは……ケーキ屋さんのお客さん……?」
彼女はボロボロの服を着た白銀で長髪の女の子。その服装とは裏腹に長い金髪と黒いドレスが特徴的な綺麗な人形を抱えていた。ケーキ屋さんショーケースをじっと見つめている。
すると店からエプロンを着た男の人が出てきた。
「また来たのかい。悪いけどお金が無い人にはケーキをあげれないんだ。すまないけど帰ってくれないか?」
女の子は静かに頷くと何処かへ行ってしまった。
あ、店員さんと目が合った。
「あぁ、冒険者の子かい? すまないね。変なところを見せちまった」
由紀と私は見つめ合う。なんと言っていいか分からない不思議な光景を目の当たりにしたからだ。
「あの……あの子はいったい……?」
「あぁ。あの子か。この辺りをよく彷徨いてる
女の子さ。かわいそうに。ろくに飯も食えないんだろうな」
店員さんは腕を組み考え込むように話してくれた。
「まぁ、だからってただでうちのケーキは食わせれねぇけどな。うちだって商売だ。タダで食わせちまうと赤字になっちまう。」
「なんか……悲しいですね。まさかあんな子がいるなんて……」
「仕方ねぇさ。さ、仕事仕事。気が向いたらウチのケーキを食べてくれや」
店員さんはそう言うと店に戻って行った。
「ま、とりあえず喫茶店に行こうか! 情報を集めないと……!」
「そ、そうだね!」
いよいよ、由紀の喫茶店だ!
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