第2話 友達ですよ! 最弱職!

「やばい! 寝坊しちゃった!」


 ドタドタ! 私は慌ててリビングに行く。


「お母さん! ご飯できてる!?」


「あー。やっと起きたわねー。まったくー。いっつも寝坊するだからー」


「ごめんなさい! 反省したから!」


 私は席についてご飯を食べる。


『次のニュースです。今世界中で流行っている大人気ゲーム「MAGIC・WORLD」』


「あら、これ昨日あんたが買ったゲームじゃない?」


「ごちそうさま!」


 ドタドタドタ! 私は慌てて部屋を出た。


「まったく。人の話を聞かないんだから」


***


 キーンコーンカーンコーン。やばい! まだ校庭なのにチャイムが鳴ってる!


「あー! やばいやばい! 遅刻しちゃう! 五分前予鈴のチャイムが聞こえてきた!」


 ガラガラ! 私は勢いよく教室の扉を開ける!


「ギリギリセーフ!」


「おー。今日もギリギリですなぁ。琴音は」


「由紀! おはよ! 今日は何分前だった?」


「一分前だよ。まるで測ったかのようなギリギリ具合だねぇ。知ってるー? 琴音。『MAGIC・WORLD』で昨日、凄いことがあったんだよ?」


「凄いこと?」


「ま、お昼休みにでも話すよ。じゃ、また後でね」


「ほらー。席に着けお前らー。ホームルームを始めるぞー」


 なんだろう。凄いことって。


***


 お昼休み。由紀とご飯を食べながら話をすることになった。


「で、そういえば朝言ってた凄いことってなに?」


 そう言って私は卵焼きを一口かじる。その言葉を聞いた由紀が食べる手を止めた。


「あ、そうそう! それだよ! なんと、エリアボスが討伐されたんだよ!」


「エリアボス?」


「そう! 凄くない!?」


「えっと……なに? そのエリアボスって」


 私はトマトを口に入れる。


「ふふふ。よく聞いてくれました! エリアボスっていうのはそのエリアで最も強いボスってこと! しかもエリアボスはただボスじゃなくて、次のエリアの解放に必要な重要なボス。そのボスを倒した人は皆から感謝されること間違いなし! つまりそのボスを倒せた人はちょー凄いってことよ!」


 ん? おかしいな。同じ日本語なのに何一つ理解できなかった。


「えっと? つまり……どういうこと……?」


「よーするにボスが倒されたから新しいエリアに行けるようになったってこと。誰が倒したかまでは分かんないんだけどね」


 私は水筒に入れたお茶を飲む。


「なるほどねぇ。だからみんなに感謝されるってことか。で、そのエリアボスってどんなやつなの?」


 また一口お茶を飲む。


「そのエリアボスはー。『デビルラビット』よ!」


「えほっ。えほっ! え!? 『デビルラビット』!?」


「なになに!? どうしたの? そんなに驚いて!」


 私は水筒を机に置く。


「そいつ倒したの私なんだけど……」


「えぇ!?」


 大声を上げながら由紀は立ち上がった。


***


(夜、通話するから絶対出てよ!? とりあえず、今の琴音の状態を知りたい!)


 って言ってたけどなんか実感湧かないな……。私が倒したあの敵、本当にそんなに強かったのかな。たしかにめんどくさい相手ではいたけどそんなに強かったイメージは……。

 その時、スマホの着信音が鳴る。


『もしもし! 琴音!? 昨日、どこでログアウトしたの?』


「スタート地点の森からから少し離れた木の近くだけど……」


『おっけ! 「誕生の森」ね! 森の中を探してみるからそこで待ってて!』


「わかった! また後でね!」


 私は通話を切った。


「さて。始めますか」


***


『ようこそ「MAGIC・WORLD」へ』


 ここは……。うん。昨日いた場所だ。といっても相変わらず木ばかりで、違う場所に変わってても気が付かないと思うけど……。


「由紀はここで待っててって言ってたよな。その間、暇だなぁ」


『複数のモンスターが接近しています』


「え!? モンスター!? しかもいっぱい!?」


 ガサガサ!

 茂みが動いてる……。もうそんなに近くまで来てたの!?


『複数のモンスターが接近しています』


「「「「ゴァァァ!」」」」


 えっと……。これは夢……?


「な、ナビゲーターさん。これ、何が何体いる?」


 私は知っている。こういう時の対処法を。


『ゴブリンが五十体います』


 それは。


「こんなに倒せるかー!」


 にげる!


***


「「「「ゴァァァ!」」」」


「ひいいいいいいいい!」


 ヤバいヤバい! あんな数で襲われたら即死だよー!


「誰か助けてぇぇぇぇ!」


 ドスン! うそぉ!? 空からなんか落ちてきた!


「は、はは……嘘でしょ!?」


「ゴガァァァァァァァァ!」


「でっかいゴブリン!?」


 空から巨大ゴブリンが降ってきた。


「や、ヤバい。これどうしよ。詰んだ?」


 前には巨大なゴブリン。後ろには五十体のゴブリン。ヤバいどうしたらいいんだこれ!


「まったく。ホントあんた私がいないとダメだねぇ」


「え、だれ!?」


「『フレイムアロー・ツイン』!」


 その言葉が響いた刹那、巨大なゴブリンに炎の矢が二本突き刺さる。


「チェックメイト」


 その言葉とほぼ同時にゴブリンの体が弾け飛んだ。爆風が辺りに吹き荒れる。


「うわっ!」


 その言葉の主は木の上に立っていた。


「さぁ、開戦といこうか。悪魔殺しのルーキーさん」


 最高の友人の登場だ。

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