第22話 宇宙に続く冷蔵庫
こけこっこー
「えっ?やばい、一番鳥?いつの間に寝ちゃったんだろう」
りおは、がばっと起き上がった。
虎のベッドがゆらゆら
「皆!起きて」
猫足の家具の足は虎の足に戻った。
こけこっこー
「二番鳥よ!」
虎のマットレスが、トランポリンのようにぽよんぽよんし始める。
皆がさすがに目を覚ました。
「おはよう、りおちゃん、これ、止らないのかな?」と、ゆたぽんが、あちゃこちゃ飛び上がりながら言った時、虎はすっかり虎に戻った。
虎がラインダンスを始めた。一列になって順に広間を出て行く。どこに行くのかと見ていると、出るなり
こけこっこー
「三番鳥だ」
ハデスの言った通り、ポケットのお
動きは
宙に浮いている広間の端までくると、お箸虫は、くるんと
皆は
「えっと、進んでるようには見えないけど」と、ひなのが言った。
「まあまあ、長い目で見てあげるとどうだろう」と、りおは答えた。
だが、その動作は3周目に入る。
「これは、だまされたわね」と、ひなのが言う。
りおが、いい
辺りがいきなり、
「また洞窟だ!」と、ゆたぽんが
「どこだみ、ここは」
「これ、きっと
目の前をお箸虫が進んでいる。
「行こう」と、レヴァンがお箸虫の行く道を指さした。
食糧庫の近くまで来た時、通路に光が
「なんだろう?」
中をのぞくと、
「宇宙だわ」と、りおが言った。
「宇宙?」と、ひなのが返す。
「冷蔵庫の中は、宇宙なの」
「宇宙?金星の…?」
ひなのが立ち止まる。
「ひなの?」
そして、食糧庫へ入っていこうとするのだ。
ひなのは、振り返りざま「りおたちは、お箸虫を追って」と、言った。
「だめよ、ひなの。嫌な予感がする」
「大丈夫よ!はやく行って。お箸虫を見失うよ」
りおは、後ろ髪をひかれながらも、お箸虫を追った。
気になって、何度も振り返ってしまう。
食糧庫からもれる、強い光が、静かに消える。
りおは、思わず立ち止まった。
「宇宙に、行ったんだわ」
『お前も来るか?扉を開けて待っていてやるぞ』
りおは、ハッと息を呑んだ。
「
「罠?」
「ハデスが
りおは、お箸虫に
◆◆◆
「金星がこんなに大きく見える」
冷蔵庫の前に立つひなのの目の前に、金星が広がっている。
「ひなの」と、父の声が聞こえた。
「お父さん?」
「ひなの」
「おばあちゃん?」
やがて、ひなのの目の前に、大きな
星の海をかき分けながら、笹船が進む。
やがて、それは金星の海に
金星は雲が低く、それはまるで、天界の世界であった。若い夫婦も、老人も、びっこの少女もそこにいた。
ひなのの父も、ひなのの
「お父さん!おばあちゃん!本当に本当に生きていたのね」
ひなのは、ふたりに駆け寄り、その胸に飛び込んだ。
「おばあちゃん、ごめんね。ごめんね」
「何を言うのひなちゃん。おばあちゃんはね、幸せだったよ。ありがとう、ありがとうって、ずっと思ってたの」
「ほんと?」
「もちろん。それにね、ひなちゃんには幸せでいてほしいの。哀しんだりしてほしくないわ。おばあちゃん、ひなちゃんが笑ってるのが一番好き」
ひなのは、おばあちゃんを抱きしめた。
「守ってやれなくてごめんよ、ひなの」
「うううん、お父さん」と、ひなのは父を見た。
「ひとりで
「うん、わかってる。もう、わかってるよ」
「そうか。じゃあ、もう行きなさい。仲間が待ってる。ここに長く居てはいけない」
ひなのは、父を抱きしめた。
「急ぎなさい」
ひなのが、入り江の笹船に乗り込むと、父が言った。
「決して振り返ってはならない。わかったね」
ひなのはうなずいた。
笹船は進む。
進む。進む。進む。
宇宙に、扉が開いた。そこから、「ひなのー、ひなのー」と、呼ぶ声が聞こえる。
「りお?まさか、魔法小道具の部屋に行かなかったんじゃないでしょうね」
すると後ろの方から、「ひなのー、待ってくれ、たのむ、行かないでくれ」という、父の声が聞こえてきた。
「お父さん?どうしたの?振り返ってもいいの?」
「ひなのー!こっちに戻って!急いで!」と、りおが呼ぶ声がする。
「ひなの!お父さんを見捨てないでくれ」
笹船は、もう扉の
「ひなの。もう二度と会えないのに、お父さんを見捨てるのか(ダメダ、ヒナノ、オトウサンハ…)」
「お父さん!」
ひなのは、思わず振り返ってしまう。
笹船はものすごい
引き戻される
「無理よ、りお、手を
ものすごいスピードで、笹船は地獄に向かって吸い込まれていく。
りおはギリギリ笹船に乗り込むと、反転の時計を取り出した。笹船はもう。地獄の穴に
りおは、急いでその針を、反時計回りに三周回した。
ものすごいスピードだった世界は、急にスローモーションに転じる。りおとひなのを残したまま、
「りお、
「うん、鏡に
「
「怖くていい。私はれんれんが好き。それ以外のことは分からないのよ。分からない事を解ろうとして苦しいの」
反転の時計が
それと同じように、りおとひなのも、ちりぢりに、離れ始める。
「りお!ありがとう!ありがとう!ありがとう!」
「ひなの!ひなのー!」
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