第19話 赤いガラスの宮殿
りおたちがいたのは、空中の円形の広間だった。
床も赤いガラスでできていて、宙に浮いている。
ガラスのソファ、ガラスの
光り
りおたちは、不安げに辺りを見回した。
みーくんは、ガラスのソファに
「このソファ、ガラスなのにふかふかだみよ」
皆は、おかしくなって笑った。
次いで 「おお!」と、言う、レヴァンの声が
レヴァンは、飾り棚から何かを取り上げている。
手にしていたのは、ガラスの
「シンデレラのガラスの靴!」
「すごいね。本物を初めて見たよ。
「やめなよ!ガラスだよ」と、りおが
「そーっと
ガラスの靴の
「なんて変わった…目覚まし時計?ガラスなのね」と、りおの目が
それは、
「こんなに小さいのに、すごく
りおは、しゃがむと
「何か話したいみたいだけど。ごめんね、何言ってるか分かんないわ」
しゃがんだりおの足元から、
そこにいたのは、
若夫婦が幸せそうに語り、老人が座り、びっこの少女がたたずんでいる。
「下に誰かいる」
「さっきまではいなかったのに」
たったそれだけの
何も
「メロウ、どうした、何を怖がっている?」と、レヴァンが
「くる」
「くる?」
「赤いガラスの宮殿には、
「ハデスって、鏡の国の王ではないの?」と、りおが言った。
「赤い夕陽を受けた、赤いガラスの宮殿は、冥府の世界になるの」
赤い輝きは、突然、黒い何かに
大きな
「ハデス」
そう言うと、メロウがレヴァンの後ろに
「久しぶりだな、シルバードラゴン・メロウ。この者らに入国を許可したのはお前か」
「違う!
「何?鏡の国の王が?」
天井の赤いガラスに、そのやり取りの
「ふむ、影の鏡か。ひなの、とか言ったな。本当に見るのか、お前ごと粉々にくだけるかもしれんぞ?」
そう語るハデスのまがまがしさは、まるで死神のようだった。ひなのの
『浦島太郎さんは、意志を持ってフタを開けたのだと思います』
そう、そうなんだ。私もそうなんだ。
「私は、見ます」
ハデスは、宮殿の天井まで飛び上がった。
「いいだろう!鏡を見よ!」
赤い広間は、瞬く間に球状になる。ソファも飾り棚もアールに
「いやよ!やめて!私は出して!」と、メロウが叫んだ。
「影に何も持たぬ者には、何も起こらぬ」
「だめよ!いや!影があらわになる!」
ひなのとメロウの影が、
球状の鏡に何かが映し出される。それはメロウだった。
幼いメロウ。
ウミヘビの兄弟たちにいじめられている。
「なんだよ!お前!短い尾っぽ!
兄弟たちが、友人たちにいじめられている。
「ウミヘビめ!なんだよ!おまえら!こっちくんな!」
醜い醜いウミヘビの中で、一番醜いのが自分。
醜い醜い私。
ハデスの声が響く。
「メロウよ。お前はどうしたいのだ。醜い醜いと
メロウの影が形を作っている。
影は、やがて色を成し、中から現れたのは、クリスタルの人魚だった。
誰もが息をのんで
「クリスタルメロウ。その姿が、お前にとって、
メロウは、
わずかに
メロウは、
『メロウ、メロウよ』
メロウは、ピクリとも動けずに、その声をただ聞いていた。
『メロウ。その
メロウは、心の中で答えていた。その声は、よどみなく
『恐れ。そう、恐れた。人から
『なぜ、人の言葉を恐れる。お前はずいぶん
『見栄っ張り?醜いことの何が見栄なの』
『自分はこんなにもかわいそう。こんな自分でさえなければという、おごりがあるのだ。』
『おごりなんてない。私は・・・』
メロウは、後の言葉が続かなかった。
『
メロウは、突然目覚めると体を起こした。ハデスの視線をしっかりと受け止めてから、わずかにレヴァンを見たような気がする。
「ありがとう」
そう一言だけ言うと、ざぶんという波音と共に、メロウは消えた。その先には、かすかにクリスタルの海が見えた。
「メロウ」
レヴァンが小さく
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