第7話

 アイラ。

 私は夢遊学者になりたかった。

 すべての人々に幸福の夢をあたえ、彼らの中心となる、姫となりたかった。

 だけど、私のまえには、つねにあなたがいた。

 あなたの描夢力をまえに、私の力など、微小なものだった。

 あなたがいては、私は、姫にはなれない。

 私はあなたを嫌いになりたかった。

 だけど、あなたは私を友達として友好を示した。

 あなたのみせる夢に、すっかりおぼれ、愛してしまった私がいた。


 あなたの夢を愛した私は、自分の夢が嫌いになった。

 私の作る夢生動物は……歪で、醜くて、くだらない下等な生き物にみえた。

 あなたの作る動物たちのように、彼らは呼吸をしていない。

 羽や足の動かし方もしらない。

 あなたの作る夢生動物とくらべれば、私の物はただの「愚作」だった。


 そんな気持ちをしっていたのか、あなたは私の動物を好きだといった。

 あなたは私になりたいといった。

 その言葉は私を苦しめる呪縛であった。

 ひどく、侮辱されているとかんじた。

 私が――嫌いで嫌いでしょうがない、この愚作たちを好き?

 アイラはきっと、私を嘲笑しているのだ。

 どれだけ背伸びをしても、私の才能の足元にも及ばない、下等な生き物。

 たまには「褒めたふり」でもして、よろこぶさまでもみて、愉悦にひたるとしようか――。

 きっとアイラは、そんな風に私を侮辱したのだ。

 ほの暗い感情が胸をうずまき、私は気づけば走り出していた。


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