第12話

どくどくどくどく。

刺した部分から赤黒い血が流れる。

死と隣り合わせの時間が続く。


────────

数日前の出来事。

僕は恭子に好きだと伝えた。

よく分かってないような不思議そうな顔で

首を傾げている恭子を愛おしく思った。


好きだとか愛してるだとか、そんなつまらない言葉で表現するのは好きじゃないが、恋愛に疎い恭子にとっては、十分すぎるほどの言葉だったと思う。


その日から恭子は少し、距離が遠く感じるものの普段と変わらない様子で、数日を過ごした。



幸せな日々が終わりを告げたのは相棒である、直哉の一言だった。


「お前たち兄弟じゃないらしいな」


正直動揺した。

僕と、恭子が兄弟じゃない、、、?



【⠀キ ョ ウ ダ イ ジ ャ ナ イ 】



兄弟じゃないと言われ、まず脳裏に浮かんだことは、法律の上でなんのしがらみもなく、恋愛ができるという、喜びよりも

それを恭子はどう思うのか、だった。


今まで兄弟だと思っていた僕のことをどんな風にこれから接していくというのだろう。


いくら恭子のことを愛していても、

その事実は簡単に喜べるようなことではなかった。


そして、恭子はそれを。

その関係性を、

異常なほど拒絶した。



僕を見る目はまるで汚いもの、醜いものを見るような目で、今まで通り話しかけても、気持ち悪そうな顔をして逃げていく始末だ。


日に日に恭子がおかしくなっていくことを僕はどうすることもできなかった。


僕がそうさせた。させてしまった。

あんなこと言わなければよかったのかもしれない。だがもう遅い。


そして、今。

恭子は僕の部屋にいる。


「お兄ちゃん!!!!」と元気な声で呼ぶ姿は何処にもいない。


体はゆらゆら揺れて今にも倒れそうだったが、手に握る包丁は固く握られていた。



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