第11話

刺された僕は、出血の量が多かったこともあり気絶してしまったようで、

目が覚めた時は遊園地付近の病院にいた。


足元に重みを感じて見てみると、泣き腫らした顔で恭子が眠っていた。

時間は既に夜の11時半と

とっくに閉館時間をすぎていた。


まだ脇腹の痛みはおさまらず、

どくどくと血液の流れを感じる。


病院に備え付けられている黄ばんだテレビには、僕を刺した覆面が逮捕されている映像が

流れていた。


「どうしてもお金が必要だった。

何も方法が思いつかなかった。」と供述している。

後々警察から聞いた話だが、妻である香織という女から裏切られ、多額のお金を騙し取られたらしい。到底払いきれる金額ではなかったようだ。


愛する人から裏切られる気持ちというのは

計り知れないが、きっと、自暴自棄になっていたのだろう。

まぁ、そんなことどうだっていいのだが。


ぼーっとした顔でテレビを眺めていると、

「お兄ちゃん…!!!!」と声が聞こえる。

目が覚めたことに気づいた恭子が目をうるうるさせながら僕の顔をみる。


まるで僕が死んでしまったのかというくらい、大粒の涙をぼろぼろとこぼした。


「よかった、死んじゃうかと思った。

恭子がお兄ちゃんを1人にさせたからだ、、」


「無理やり連れて行けばよかったんだ。そしたらこんなことにならなかったのに…」

と続ける恭子の姿はやけに小さく見えた。


「違う恭子のせいじゃない。」

「ジェットコースターでしんどくなって休みたいと言い出したのは僕だし、悪いのはそもそも僕を刺した覆面だろ。」


でも、でもと恭子は続ける。


「大丈夫、それにほら死んでない。

多少傷が痛む程度で生きることに支障もない

だから、恭子安心して?」


「お兄ちゃん…。」

恭子の声が震えている。


「怖いよ、お兄ちゃんが死ぬと思ったら恭子はこれからどうすればいいんだろって、お父さんのことはもちろん好きだけど、

でも私が家族だと思えるのはお兄ちゃんだけなんだよ!、一生そばにいるって約束して…。」


「恭子をひとりにしないで…。」


「恭子をひとりにしないよ。ずっとそばにいるから。」



僕は、恭子とそばにいる。

永遠の誓いをした。


どんなことが起きようが変わらない不変の誓い。


いつまでも貴方の傍にいる─────。

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