第9話

心臓の鼓動がはやい。

ドクドクドクドクドク──


生と死を彷徨うなか、

走馬灯のように幼い時の記憶が蘇る。



────────


寝不足でゆらゆらと首を揺らす恭子。

その隣には僕が座っていた。


ガタガタと揺れる電車は、いつも通学路で使う電車よりも人気が少なく、

この世界には僕と恭子の2人だけなんじゃないかと錯覚させられる。


いつにも増してオシャレをする恭子は、

はじめての遊園地に最初は目をキラキラさせていたが、心地よい電車の揺れで次第にその目はゆっくりとおちていった。


そこまで眠たいというわけでもなかったが、

気持ちよさそうに眠る恭子をみていると不思議と欠伸がでて、続くように目を閉じた。



──────


「起きておにぃちゃん!!!?」

何度か体を揺すられながら恭子の声で目が覚めた。

「着いたよ!、遊園地!!!!」

電車の窓からは視界いっぱいに遊園地が広がっていた。こうして何時間もかけて、遠出する機会は多くないため、少し心が高揚しているのを感じる。


「楽しみ!何から乗ろうかなぁ!」

「恭子の乗りたいものから順番に乗っていこう」

「やった!!!!じゃあこれ!」

恭子が指を指したのはその遊園地1番人気の

ジェットコースターだった。


角度はえぐれていて、みるからにスピードがはやく、乗りゆく乗客の叫び声が耳を劈く。


膝が震えるのを感じながら、

僕は縦に首を振った。


きっと、うまく笑えてなかっただろう…。


──────

くたくた。

人は疲れたり何もしたくない無気力な時に、

くたくただと言葉をもらす。


正直、ジェットコースターに乗ったことを後悔していた。

くたくたどころか、苦多苦多である。


「冗談をいう気力はまだあるみたいだね!」


恭子はどこからその元気が出てくるのかと、不思議に思うぐらい、

にこにこと笑みをこぼしていた。


「ちょっと疲れたから休憩する、

恭子は他に乗りたいの乗っておいで。

ここで座って待ってるから。」


動くことすらままならないと、僕は休憩することを選んだ。恭子には申し訳ないが、正直喉からどうやら吐き気がして、乗ったら吐くぞと言わんばかりの勢力だ。


「もー!!せっかく来たのに!

んーじゃあ乗ってくるから待っててね!!」


少し名残惜しそうな顔をして、

視界から恭子が遠ざかっていくのを横目に、遊園地のベンチに横たわった。



──────────


なんだか、胸がざわざわするような気がして目が覚めた。

ジェットコースターからくる吐き気かと思ったが瞳孔のピントがあったとき、そうではないことを思い知らされる。


遊園地でする楽しそうな声や、

乗り物の音、

遊園地のBGMの音とは違ったざわつき。



「今どき、黒覆面マスクって…」

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