第8話
おかしな事件が起きた。
大阪市で起きた有る殺人事件なのだが、父親と息子、娘の3人家族で、父親が息子を殺したと、警察に連絡し逮捕された。
ここまでは普通だが、(殺人を普通と呼ぶのはおかしなことかもしれない)、その後に娘も同様に兄を殺したと、警察に向かったという。
この職に就いて今まで、ニュースに乗るほどの捜査や取り調べをした事がなかった私にとって、この事件の経緯はとても興味深いものだった。
娘は自白するまでの間、事件に関する小説を執筆していたらしく、それは大きな話題となり、発売されてすぐにそれはヒットした。
内容はまさに殺人事件の内容を表したもので、父親から取り調べて聞いた話と似たようなものだった。
事実として異なるのは
誰が殺したのか、ということ。
各種SNSでは、
この事件の真相について、あらぬ噂や予想を書き込み、世間を騒ぎ立てている。
父親の罪を被るために娘が起こした感動秘話として賞賛する声や、父親と娘の歪な関係性について書き込んだものまで。
事件の真相を歪みに歪ませた。
息子の友人や娘の友人に取り調べしてみると、2人の兄妹はとても仲睦まじく、理想の兄弟像だったという。
そして、包丁についた指紋には父親の指紋しか検出されなかった。
父親が殺したと判断する声が多くあがっているが、どちらも譲らず「私が殺しました。」と言い張るばかりで、事件の真相は横ばいになる一方だ。
職業柄腕が鳴るといえば聞こえは悪いかもしれないが、事実だけを追い求めて調べていこうと思う。
それぞれの真実があったとしても事実はひとつなのだから。
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