46. 脅威の排除に向けて

 いざという時はマーシャルワンの判断が必要ということもあり、マーシャルワンにも遺跡へと来てもらった。

 数日空けていたけど、巨人族の遺跡の周りの様子は特に変わってはいない。

 大きな問題は起きていないようだね。


『お、ルリ。戻ってきたか。マーシャルワンも一緒か』


 再び拠点へと戻ってきたワイルドアンクレットを見つけてドクタースリーが声をかけてきた。

 私がいることは当然なんだろうけど、マーシャルワンがいたことには少し驚いているみたい。

 マーシャルワンが直接出てくるとは思わなかったのかな?


『お言葉ですね、ドクタースリー。私はなにかあれば、まず現地を確認することをモットーとしているのです。今回もその方針に従っただけですよ』


『わかったわかった。それで、俺が送ったデータは確認してもらえたのか?』


『巨人族の遺跡を襲った何者か、ですね。少なくとも私には見当がつきませんでした。竜種などではないのでしょうか?』


『竜種がいるところにこれだけの遺跡群ができあがるとは思えねぇ。もっと別の……隠れ潜むのがうまいなにかだ』


 隠れ潜むのがうまいなにか……それだけでも十分に怖い。

 そんな存在がこの近辺に隠れ潜んでいるとしたらどうすればいいんだろう?


『マーシャルワン。航空偵察兵を出してはもらえないか? あいつらなら雲の上からのスキャンで地中にいるものだって見つけるだろうよ』


『確かに、それも可能ですが却下ですね。いまのところ大人しくしているのです。高空からとはいえ、なにかの刺激を与えた結果、暴れ出してしまっては元も子もない。危険性は私も認識しますが、もう少し穏便な手段をとりましょう』


『穏便な手段? これよりも刺激を与えない方法があるのか?』


『遺跡から透過測定機を使い、その何者かの痕跡をたどります。透過測定機の方が穏便に済ませられるでしょう』


『それもそうか。で、ワイルドアンクレットに搭載されている透過測定機の出力じゃ全然足りないはずだが、そこはどうする?』


『工作兵を使います。彼らに大型の透過測定機を持ち出してもらいましょう』


 どうやら話はまとまったみたい。

 ただ、話はまとまってもすぐに動き出せるわけではなく、一度クラウピアに戻って透過測定機の準備などが必要なようだ。

 そのため、私はマーシャルワンをクラウピアへと送り届けた。

 クラウピアに戻ったマーシャルワンは、機械兵たちに指示を飛ばし、急いで準備を始めさせる。

 大体2日もあれば準備が整うらしいので、迎えに来るのは3日後となった。

 それまでは、巨人族の遺跡側で待機だ。


『よう。準備の方は始めてもらえたのか?』


「ドクタースリー、始めてもらえたよ。迎えに行くのは3日後」


『3日か。それならそれまでの間、考古学ギルドの発掘は中止させるか』


「いいの?」


『危険な存在がいるかもしれないのはあちらも承知済みだ。俺たちの手でその存在の状況を確認し、可能であれば対処することも伝えてある。3日程度の遅れは気にしないだろう。どうせ、いままで集まった発掘内容のまとめもしなくちゃならないしな』


 なるほど、発掘したらそれで終わりじゃなく史料として残す必要があるんだね。

 そのためにも一度立ち止まって内容を精査する必要がどこかであるし、その間にクラウピアで脅威の排除を行ってくれるなら儲けものと。

 クラウピアばかりに負担がいっている気がするけど、マーシャルワンやドクタースリーにもなにか考えがあるんだろう。

 とりあえず、危険な存在が出てこないでほしいね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る