44. 柱の解析
私が柱を発見してから、ドクタースリーは柱の解析をメインで行うようになった。
考古学ギルドからも数名やってきて柱の解析を行っている。
私も透過測定機を使い、残りの柱を探してきた。
柱の数は全部で32本。
きれいな円形の穴の中に等間隔で配置されている。
ドクタースリーにすべての柱を確認してもらったが、どれも作られた年代は一緒のようだ。
ただ、一部の柱には亀裂のようなものが入っており、どうもそれが気になるらしい。
ただの経年劣化ではないそうだ。
『明らかに外部から圧力をかけられて柱に罅が入っている。これだけの強度がある柱に罅を入れるだなんて相当な力だぞ』
「殴ったとかじゃなく?」
『おそらくは一瞬の衝撃によるものじゃなく、継続的な力をかけたことによるものだ。柱が崩れ落ちていないのは、致命的な傷が入る前に要因を排除できたからだろうな』
要するに、柱を壊そうとした何者かがいるけど壊れる前に追い払えたということらしい。
柱の周りを軽く調べた限りだと、岩以外のものは確認できなかった。
透過測定機を使って柱の外側を調べても特になにも見つからない。
結局、具体的になにがあったのかはわからず終いというわけである。
ほかの傷が入った柱も調べたけど、ほとんどが同じような傷であり変わったところは見つからなかった。
ただ、1カ所だけほかと異なる柱が見つかる。
それだけは柱の傷がかなり高い位置まで伸びているのだ。
ちょっとこれは気になる。
『ふむ。こいつは少し様子が違うな。圧力をかけてへし折ろうとしたあと、なにかを叩きつけて折ろうとした可能性がある』
「それってどこで見分けてるの?」
『あそこだ。あの一部だけ亀裂の入り方がひどい。あそこになにかをぶつけて折ろうとしたんだろうな。あそこを透過測定機で調べてもらえるか?』
「わかった。……あそこの外側は柱が欠けているみたい。やっぱり誰かが折ろうとした?」
『だろうな。しかし、巨人族の街にケンカを売ろうとするやつってのは一体何者だ?』
巨人族を襲おうとするような存在か。
巨人族っていうのはヒト族の何倍も大きく、力もそれに見合うだけの強さがある。
現在だと高度な文明を持っている巨人族は知られていないけど、かつてはこの遺跡のように発達した文明を持っていた巨人族も少なくなかったようだ。
考古学ギルドしても、この遺跡はいろいろと発見があるらしい。
『うーむ、さっぱりだな。もう少し手がかりがあればいいんだが』
「これだけじゃ無理そう?」
『正直お手上げだ。街の中を探せば文献などが見つかるかもしれないが、巨人族の文字は解読する必要がある。クラウピアに残っている史料と一致するものだったらいいが、そうでなければ最初からだ。この遺跡の安全性を確認するためにも早めに脅威度の測定を終わらせたいんだが……』
ドクタースリーでもいまのところはどんな危険が存在しているかわからないらしい。
遺跡があるということはこの場所で昔は巨人族が暮らしていたはずなんだけど、それがいつの間にかいなくなっているわけだ。
巨人族に限らず、街を放棄するにはそれなりに理由がいる。
ドクタースリーとしては、この柱を傷つけた存在がこの街を放棄せざるを得なかった原因だろうと推測しているようだ。
しかし、その原因が何者なのかはいまのところ見当がつかない。
ドクタースリーの考えでは巨人族にとっての脅威となるであろうモンスターを考えているようだが、街を放棄するほどのモンスターとなるとかなり数が限られる。
そして、そんなものが存在する地域にヒト族の街が成り立つはずもない。
わかりやすくいえば、エッセンスの街ができている以上、現在はそのような脅威はいないだろうし、エッセンスの街の周辺にある遺跡はヒト族のものだと推測されているからその年代には脅威がなくなっていると考えられるわけで。
正直、頭がこんがらがってきた。
モンスターがいるなら倒せばいいんだけど、そのモンスターがいるかどうかもわからないからなにもできないわけだ。
物ごとは単純には行かないね。
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