43. 巨人族の遺跡調査
考古学ギルドの調査準備が進む中、私たちは先行して街の中へと入る。
私の目的は透過測定機でなにか不審物がないか見つけることとドクタースリーを遺跡内部へ送り届けることだ。
ドクタースリーも透過測定機は内蔵していないらしく、私のワイルドアンクレットに搭載されている透過測定機である程度調べてからひとりで調査を始めるつもりらしい。
なんでもできるわけじゃないようだ。
『ふむ、ここら辺には怪しい物はないな。そうなると、工作用機械兵が言っていたっていう遺跡中心部が怪しいわけだ』
「そうだね。でも、私もそこまでは近づかないよ?」
『俺だってそこまで近づくつもりはない。触らぬ神に祟りなしだ』
そのあとも透過測定機で調査を続けるが、特に新しい発見はない。
外周部には目立った危険はなさそうだ。
そうなると危険がありそうなのは中心部付近になるけど、そこまで私は踏み込めない。
ドクタースリーはどうするんだろう?
『俺か? うーん、無闇に近づいて侵入者撃退用の仕掛けを作動させるのもなんだし、俺は考古学ギルドの連中と一緒に行動してあいつらの行く範囲に危険がないか見て回ることにする』
「そっか。私もしばらくはこの遺跡にいるからなにかあったら声をかけて」
『ああ。お前も帰るときは俺に一声かけてくれ。その時までに判明している内容をデータとして記憶媒体にまとめる。帰ったらマーシャルワンに渡してくれ』
「わかった」
ドクタースリーを考古学ギルドの調査班へ届けたら、私は遺跡の外に出て山の空洞そのものの調査だ。
こっちも透過測定機を使って調べる限り危険そうな物はない。
ただ、ちょっとだけ変わった物があった。
柱だ。
それもとんでもない太さのある、透過測定機を使って内部を調べない限り柱だとわからないほど周囲と馴染んでしまった柱である。
『これはこの地下空間を支えるための柱でしょう。材質はかなり硬度のある石材をまるごとくりぬいて作られた柱のようです』
「そんな高度な技術を使って作られていたんだ。素材はなにかわかる、リザーブ?」
『私の測定装置では判別できません。ドクタースリーを頼るべきでしょう』
「やっぱりそっちの方が早いよね」
私は遺跡内部に戻りドクタースリーと考古学ギルドの調査員を連れて来た。
考古学ギルドの調査員は興味深そうに、ドクタースリーは真剣に柱を調べている。
なにかわかることはあるだろうか?
『お手柄だぞ、ルリ。この柱のおかげで遺跡の年代が判別できた。おおよそ6000年前の遺跡だ』
「この柱からそんなこともわかるの?」
『柱の材質や風化具合、付着物を調べればわかる。極めて特殊な素材を材料にしている上、ほぼ風化していないんだ。地中にあったことも考慮に入れると1万年以内の遺跡だと判別できる。あとは付着物を調べればどの年代かはわかるわけだな』
ふむ、さっぱりわからない。
村娘の私に考古学の知識なんてさっぱりだ。
とりあえず年代が判別できただけでもよかったよ。
『それにしても、この年代の遺跡が地下にある理由はなぜだ? クラウピアにあるデータでは地中に都市を造る文明なんてなかったはずだが』
「あ、そこはわからないんだね」
『俺たちだってわからないことは山のようにある。だが、この遺跡が地中にある理由は本当にわからない。そもそも、巨人族自体が地中に住むことを好まない種族だ。夜行性だったって話もほぼ聞かないし、この遺跡の成立理由は詳しく調べなくちゃだめだな』
「うーん。私にはよくわからないけど大事なことなんだね?」
『場合によってはエッセンスの街だったか? あの街を放棄することにもなりかねないな。一般的な考え方をすれば、都市を隠す理由なんて自分たちにとって圧倒的な脅威となる存在があった時くらいだ。その脅威が現代まで残っていたら本当にお手上げかもな』
巨人族でさえ脅威になる存在か……。
そんなのがいたらのんびり街で暮らしているわけにもいかないよね。
でも、それって一体どんな存在なんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます