42. 巨人族の遺跡、再び

 その日のうちに私は巨人族の遺跡まで戻ってきた。

 機械兵の作ったトンネルの横に到着すると、考古学ギルドの人たちは手際よくメインキャンプとなるテントを立てていく。

 ワイルドアンクレットからも次々と荷物が降ろされ、遺跡内部で使うための形へと整えられていった。


 そんな中、私とドクタースリーは別の場所にテントを張っている。

 私たちの拠点用だ。

 今回は私も少しの間だけこの遺跡に滞在することにした。

 考古学ギルドから資料の輸送を頼まれたのもあるけど、ドクタースリーがなにかやらかさないかが気になる。

 つまりはそういうことだ。


『しっかし、よくこんなところにある遺跡を見つけたな? 普通の山にしか見えないぞ』


「クラウピアで付けてくれた透過測定機のおかげだよ。これのおかげで山の中に不自然な空洞があることを見つけたんだもの」


『そうか。それにしても、年代不明の巨人族の遺跡か。厄介なものが出てこないといいが』


「厄介なもの?」


『巨人族の遺跡にもいろいろと種類があるんだよ。そもそも、ヒト族は『巨人族』ってひとくくりにしているが、その生活様式や文明の発達具合には様々な段階の物がある。クラウピアが観測している範囲だけで、本当に原始的な狩猟生活しか行っていない文明もあればクラウピア並みの文明もあった。どの文明でも共通しているのは大型の野生動物やモンスターを主食にしていた点ぐらいで、あとはてんでバラバラだ』


 なるほど、巨人族ってそんな進んだ文明を築いていた種族もあったんだ。

 クラウピアの研究によると、巨人族の主食が肉から変わらなかった理由は明確で、巨人族の体格を維持できるほどの栄養を持った植物がなかったためらしい。

 そんな植物があれば、それ以降の歴史が大きく変わっていただろうとさえいわれているようだ。

 どんな進んだ文明であっても、体格が大きく食糧の消費が激しいと文明を維持できない。

 文明を維持するにはそれなりの蓄えが必要のようだね。


 やがて考古学ギルドの準備が整うと、私たちも一緒にトンネルの中に入り巨人族の遺跡へと向かう。

 トンネル内部を見る限りでは、数日前に訪れたときと変わりはない。

 恐ろしく暗いが、深い山の中にあり日光も光源となる存在もない場所では当然だろう。

 そんな中を数台の魔導車が走っているわけである。

 ちょっと不気味。


『ん、ここが巨人族の遺跡の内部か。確かに門の大きさを見る限り、ヒト族程度の大きさだと割に合わない大きさの門だな』


「やっぱり? でも、クラウピアの門も大きかったよね。あれってなんのため?」


『昔のクラウピアは上空まで結界で覆われていたらしい。そのため、ヒト族サイズのものしか通れない門だと大きなものを通せなかったそうだ。門の開け閉めが人力じゃなく機械式だったからこその荒技だな』


 物を運び込むときだけ結界を解けばよかったのではないかと思ったけどそうでもないらしい。

 結界を維持していた装置はすでに壊れているみたいだけど、一度結界を消してしまうと再展開するまでしばらく時間がかかったようだ。

 そのためにある程度大きな門を作り、大きな物資や機械兵、あるいはヒト族より大きな体格をした種族を招き入れていたそうだ。

 そんなに融通の利く装置ではなかったということか。


 ちなみに、その装置が壊れたあとでクラウピアがなくなったようだ。

 クラウピアほどの都市がなくなったのも時代の移り変わりだろうけど、この都市が滅んだのも理由があるはず。

 今回はその調査が考古学ギルドの主な目的のようだ。

 ドクタースリーの目的は前にも聞いたとおり、遺跡の中にあるかもしれない危険な存在の発見と排除である。

 何事もなく終わるのが一番なんだろうけど、そう簡単には終わらないんだろうな。

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