41. 古代巨人族の文明

「はい、さっぱりわかりません」


 私たちがなんとか山の中の遺跡からお皿の破片を発掘して帰ってきた数日後、考古学ギルドの使者が私を訪ねてきて調査の状況を教えてくれた。

 わかりやすくなにも進展がないと。


「そもそも、あの彫刻が既存の物と一致しないんですよね。似た模様もこれまでの史料にはないですし、かといって様々な検査をしたところ間違いなくかなり古いものであることは確実なようでして。研究しがいはありますが、実際に調べてみないとわからないという結果になっています」


「古いってどれくらい昔なんですか?」


「山の中にあった、という特殊な保存状況のため正確な年代を割り出すことはできていませんが、おおよそ5000年以上前だと推測されています」


 5000年以上前、そんなに古かったんだ、あそこ。

 それじゃあ、私が調査してもなにもわからないよね。


 それで、考古学ギルドとしては本格的な調査を行うかどうかを決めるため、先遣調査隊を派遣することに決めたようだ。

 私はその先遣調査隊の先導をしてほしいらしい。

 リザーブが記録していたナビゲーションルートは提出済みだけど、それだけじゃ不安もあるみたいだ。

 報酬もそれなりに多かったので引き受けておこう。

 出発は3日後の朝で、その時に私の魔導車に運んでいってほしい物も積み込むようである。

 主に周囲を照らす照明だね。

 広さに合わせて結構な数を持っていくみたい。

 私自身が用意するのは念のための携帯食料くらいなので、早めに買って用意しておこう。


『よう、ルリ。早かったな』


 出発日当日、考古学ギルドに行くとなぜかドクタースリーがいた。

 なんでいるんだろう?


『俺か? 俺も今回の調査に参加するんだよ。マーシャルワンの許可も取ってある』


「ドクタースリーって考古学にも興味があったの?」


『俺というか、ドクターワンからの依頼だな。巨人族の遺跡を調べてなにか脅威になる物がないか調べてほしいようだ。俺らの目的は考古学ギルドにも伝えてある。考古学ギルドとしても危険性のある遺物が残っていないかどうかは知りたいようで、俺たちの協力を受け入れるそうだ』


「なるほどね。調査はドクタースリーが単独で?」


『有毒ガスなんかの可能性を含めると俺だけの方がやりやすいな。人間は脆すぎる』


 まあ、機械兵から見ると人間って脆弱だよね。

 考古学ギルドも遺物はほしいけど危険のある物には近寄りたくない、そんな考えを天秤にかけたようだ。

 ドクタースリーも本当に危険なもの以外は破壊しないだろうし、そこはうまくやってくれるだろう。


 あと、念のためクラウピアから増援を呼ばなくてもいいのか確認したけど、いまのところは必要ないそうだ。

 クラウピアで『研究』に関するものは、すべてドクターシリーズの専門分野でそれこそ機械兵の開発から花の育て方まで研究していたとか。

 そのため、クラウピアから増援が必要な状況は、力技による解決が必要になったときのみであり、よほど危険なトラップが仕掛けられてない限りは問題がないんだそうだ。

 本当に意外と万能なんだよね、ドクタースリーは。

 ともかく、遺跡発掘に向けて頼りになる助っ人も加わったことだし、考古学ギルドの準備ができ次第出発しますか。

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