40. 山の内部の都市

 機械兵が掘ってくれたトンネルを使い、山の中にある遺跡へと向かった。

 トンネルは3日で掘られたとは思えないほどしっかりとした作りをしている。

 さすがはクラウピアの機械兵である。

 この技術力はまだこの国にはないだろう。

 少なくとも、エッセンスの街まで見た限りではなさそうだ。


「トンネルを抜けた先は……うん、真っ暗だね」


『ライトの光量を上げましょう。この地下空間でしたら特に問題にもなりません』


「リザーブ、お願い」


 前方がさらに明るく照らされると、ようやく街の影が見えてきた。

 トンネルを抜けた部分は、まだ街まで距離があるようで入り口付近までしか照らせていない。

 それでもわかることは、この街の門の大きさがかなり大きいことだ。

 なんというか、こう、全体的に横幅がある。

 門自体は崩れ落ちてしまっているけど、その痕跡からすると現代の街の門に比べて3倍近い広さがあった。

 これはなにを意味しているんだろう?


「リザーブ、あの大きい門に該当するような遺跡のデータはある?」


『該当結果なし。そもそもヒト族のサイズであれだけ大きな門を管理するのは非効率だと推測します』


「そうだよね。とりあえず、行って調べるか」


『十分に注意してください。この周囲の空気中に有害なガスは発生していませんが、別の場所もこうであるとは限りません』


 有害なガスか、そこまで考えてなかった。

 ここは山の内側なんだから有毒ガスが発生している可能性もあるのか。

 気を付けて進もう。


 門を超えて街に入ると、やはり街並みにある扉のサイズがヒト族のそれとは違う。

 どの建物もワイルドアンクレットごと入ることができるし、中にある家具や階段の高さも高い。

 壊れていない椅子があったんだけど、私の身長よりも高い位置に座面があるのだ。

 もちろん、テーブルはもっと高い位置にある。

 ここは巨人族の遺跡だろうか?


「これじゃあ年代とかも特定は難しそうだね」


『私は遺跡発掘専門ではありませんからね。巨人族の遺跡についてもデータはありますが、具体的な年代特定などは不可能です』


「だよねぇ。なにか積み出せそうな物を探して持ち帰ろう」


 私はこの遺跡の調査を早々に断念する。

 はっきり言ってリザーブのデータに頼るしかない私が、ヒト族ではなく巨人族の遺跡を調べるなんて不可能だ。

 でも、持ち帰ることができる物ってあるかな?

 トンネル自体は通ることができそうだけど、森を通れるだろうか?


 いや、待てよ。

 私にはチャオの作る『幻獣の抜け道』があるから、帰りは森を抜けることを想定しなくてもいいのか。

 トンネルを抜けることができる物を持ち帰ればいいんだよね。

 うっかりしてた。


 それで、持ち帰る物を探してうろうろ走り回るんだけど、なかなかいいものが見つからない。

 戸棚の中にしまわれたお皿のような物は見えるんだけど、それを取り出す方法がないのだ。

 私の力だと巨人族サイズの家具は重すぎる。


「なにかこう、いい具合に小さい物ってないかな……」


『それでしたら街の外周部を探索してみるのもよろしいでしょう』


「街の外周部?」


『ゴミ捨て場のような場所があるかもしれません。壊れた家具などが廃棄されている可能性もあります』


 なるほど、それでゴミ捨て場か。

 私はワイルドアンクレットを街の外周に走らせ調査した結果、街壁の外側にそれらしき場所を発見した。

 そこにはリザーブの提案通り壊れた家具も捨てられている。

 匂いなどはしないし壊れたお皿の破片を持って帰ろう。

 一部しかないけど、特徴的な模様が描かれているしなにかの研究材料になるだろう。

 うん、来た甲斐があった。

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