38. エッセンスの街東部の森から山岳地帯
クラウピアで新しい装置を増設してもらった私は、翌日からエッセンスの街東部にある森へと向かった。
その森はさすが人の手がほとんど入っていないというだけあって、鬱蒼とした森になっている。
これは入るための場所を探すだけでも時間がかかりそう。
というか、ワイルドアンクレットで藪を押し分けながら進むことになりそうだ。
うん、細かい傷が心配である。
「リザーブ、この近辺に森には入れそうな場所はある?」
『透過測定機も使用してみましたが、この周囲には車が入れそうなほどの隙間はありません。ほかの場所を探しましょう』
「わかった。北と南、どちらを調べるといいかな?」
『南側でしょう。北側は北東部の遺跡を調べるとき、一緒にルートを調べている可能性があります』
「じゃあ、南に向かうね」
私はハンドルを切り、森の南側へと向かう。
でも、どこまで行っても森は森だ。
本当にこの先、森の中へと入っていけるルートがあるのかな?
『ルリ、スピードを落としてください』
「なにか見つかった?」
『はい。前方、少し行ったところに森の境目があります。そこからなら森の中へと入っていけるでしょう』
森の境目か。
見ただけじゃなにもわからないけど、リザーブがあると言っているんだからあるんだろう。
実際、リザーブの指示に従い進むと、森の中に入って行けそうな場所があった。
ここ、どうなっているんだろう?
『どうやら、この場所は北と南で植生が少々異なるようです』
「そうなの?」
『はい。木々の種類が少しだけ違います。なにか意味があるのか、それとも道を示すため故意に分けたのか。どちらにせよ、ここからなら森の中へと進めそうです』
私には違いがわからないけど、リザーブがそう言うならそうなんだろう。
ともかく、ここからなら森の中へと入れるようだ。
元は道だったのかもしれないが、いまは藪や草で覆われてしまってどこが道なのかもわからないけど。
「うーん、走りにくい。確かに、森の中に木々の隙間が等間隔にできているところがあるけど……」
『数百年に渡り放置されてきた道です。通りにくいのは仕方がないでしょう』
「まあ、そうなんだけどねぇ。これじゃ大型車両なんて通れないか」
『仕方がありませんね。ですが、小型でもパワーのない車両は通れないでしょう。しばらくは地ならしをするための車両が必要になります』
リザーブの言うことももっともだ。
私のワイルドアンクレットは藪もかき分けて進んでいるけど、普通の魔導車では確実に通り抜けられない。
まずは道路を切り拓くための魔導車を使わないことには、道と呼べるだけの道はできないな。
そのまま森の中を進み、日が最も高いところまで昇った頃、ようやく森の中を抜け出した。
その先に広がっていたのは木がまばらに生えている山岳地帯。
こちらも登るための道という物はすでに存在せず、自力でルートを開拓していくしかない。
かなりしんどそうだ。
「リザーブ、周囲の様子を確認してみて」
『了解しました。エアドローンを飛ばします』
リザーブにエアドローンを飛ばして周囲を偵察してもらった結果、山の奥へと登って行けそうな道が発見された。
やっぱり道といっても斜面に切り出されたあとがあるというだけで、草が生い茂っているわけだが。
登るしかないんだけどね。
その道を登り終えると、高い山と山の間にある丘陵地帯へと繋がっていた。
ただ、そこになにかがあるわけでもない。
うーん、ここは外れかな?
ただ、道はここで途切れているんだよね。
詳しく調べてもらおうか。
「リザーブ周辺の調査をお願い」
『了解、エアドローンと透過測定機を使い周囲を探索します』
あ、透過測定機も使うんだ。
エアドローンには搭載していなかったはずだから、私がワイルドアンクレットを走らせて調べて回るわけなんだけど、なにかあるかな?
『ルリ、透過測定機が山の内部に不自然な空洞を発見しました』
「不自然な空洞?」
『はい。山の内側をきれいにえぐり取ったような空洞です。この位置からではすべてを確認することはできませんが、山の内部になにかがある可能性は高いです』
「山の内部か……入る手段はある?」
『現在、エアドローンを使い、内部に入るための手段を探しています。ですが、めぼしい成果は出ていません。しばらく探索をしたあと、クラウピアに行き力を借りることを提案します』
「クラウピアに?」
『あの国であればトンネルを掘るための機械兵も存在しているはずです。借りることができないか交渉してみましょう』
なるほど、そういうことか。
クラウピアには借りを作ってばかりだけど、どうしようかな?
ただ、この内部になにがあるかは調べておきたいんだよね。
内部に入るためのトンネルや洞窟がなかったら、クラウピアに協力してもらうしかないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます