36. 遺跡の年代調査
帰りは『幻獣の抜け道』を通り、エッセンスの街周辺に出て戻る。
それで北東の遺跡までの道の状況をエクスプローラーズギルドに説明すると、至急落石の除去や道の補修を行ってくれることとなった。
あと、調査団一行のリーダーさんから渡された手紙も届けておく。
これで考古学ギルドに話が通るだろう。
あとは……リザーブに記録されている遺跡の壁画を鑑定することかな?
ちょっとリザーブに確認してみよう。
「リザーブ、例の壁画についてなにかわかった?」
『セントラルシステムに問い合わせた結果、4800年ほど前の文明と類似した特徴があるようです。しかしながら、特徴の一部が一致するというだけで、年代の特定には情報不足ということですね』
「うーん、セントラルシステムでもわからないか」
『この記録は考古学ギルドでも確認できるでしょう。あとは専門家に任せてみるのが一番かと』
「そうしようか。とりあえず、今日は依頼を受けてこなかったけどいいよね?」
『いまからでは時間的にも中途半端ですし問題ないでしょう』
「じゃあ、宿に向かおうか。宿を取れたら一旦洗車しよう」
この日は宿を取ってワイルドアンクレットを洗ったらいい時間となってしまった。
かなり急いで来たはずなのに、やっぱり『幻獣の抜け道』は精度がよくないな。
翌日、エクスプローラーズギルドに行くと、私に指名依頼が入っているらしい。
依頼主は考古学ギルド、依頼内容は学者2名と研究機材の運搬だそうだ。
エクスプローラーズギルドとしては、しっかりとした依頼主で身元も保証されているのでぜひ受けてほしいみたいである。
報酬的にも悪くないし、受けてみるか。
お金はもっと貯めておきたいからね。
これから行っても大丈夫だそうなので考古学ギルドに行くと、依頼主が待っていた。
考古学ギルドのギルドマスターである。
詳しく話を聞くと、やはりリザーブの記録した壁画のデータを確認したらしく、自分たちの持っている資料とも照合してみたが一致するものはなかったそうだ。
そのため、急ぎで研究員を送ることに決めたらしい。
急な依頼だとは感じたけれど、そういうことか。
事情を聞き終わったら研究機材の積み込みだ。
もっとも私が手を出すことはなく、考古学ギルドの職員だけでワイルドアンクレットの荷台に積み込む。
これも契約の範囲である。
積み込み終わったら私が固定して出発準備は完了、あとは連れて行く研究員を待つだけだ。
「ああ、もう積み込みが終わってるのね。出遅れたかしら」
「そのようだ。ギルドマスターにドヤされる前にさっさと行こう」
どうやら連れて行く研究員たちも来たみたい。
持っていく資料を集めていて遅れたそうだ。
ふたりとも大きめの背負いカバンを背負っているからね。
それは遅くなるわけだ。
そんなふたりを連れて私たちはエッセンスの街を出発、再び北東の遺跡へと向かう。
道は……一昨日よりも少しはまともになった、程度かな。
まだぬかるみがひどい。
「こんな道を行くの? 積み込んだ研究機材はかなり重いはずだけど大丈夫?」
「計器を見る限り大丈夫です。ぬかるみにはまってもアンカーとウインチで引き上げられますから」
「それならいいんだが……。こんなひどい道だったとはな。物資配達が遅れるわけだ」
やっぱり補給は追いついていなかったらしい。
一昨日届けた物資が10日ぶりの補給物資だったそうだ。
ほかのエクスプローラーが一度届けに行こうとしたことがあったらしいが、道が川のようになっていて断念したそうである。
ぬかるむだけじゃなくて水が流れるほどの地形だったんだね。
私の魔導車でも川になっていたら通れたかどうか。
ワイルドアンクレットは落石のあった道を迂回し、急斜面を上り下りしながら北東の遺跡へと向かう。
研究機材もしっかり固定されているしワイルドアンクレットのサスペンションはかなりいいから大丈夫だと思うけど、かなり揺れてるな。
壊れてないといいけど。
結構困難な道程を進み、夕方頃になって遺跡までたどり着いた。
遺跡では調査団に手伝ってもらって研究機材を降ろし、テントの中に組み上げていく。
うん、テキパキしているな。
こんな作業も慣れているんだろうか。
「よう、エクスプローラー。今日もまた来てくれたのか?」
「あ、リーダーさん。考古学ギルドのギルドマスターから依頼があって研究員2名と研究機材を運んできました」
「あー、研究機材をエクスプローラーに運んでもらうってことは、移動型研究車両は当面来ることなしか」
「途中のぬかるんでいる場所や落石で塞がれている場所をなんとかしないと無理じゃないでしょうか。さすがにワイルドアンクレットでも重い車両を引き上げることは難しいですし」
「まあ、それはそうだよな。ところで、あの壁画だがセントラルシステムにデータはあったか?」
「4800年前くらいの文明の物と一部一致するようですよ。あくまで一部なので急遽研究員が派遣されたようですが」
「ふむ、その頃の文明か。俺の専門外だからよくわからなかったが、研究員がギルドから派遣されてきたってことはその分野に強い研究員ってことだろう。これで調査が進歩しそうだ」
やっぱりこの遺跡の調査は行き詰まっていたらしい。
あの壁画を発見したのもつい最近らしいからね。
セントラルシステムとアクセスできないこの場所ではどうにもならなかったようだ。
調査は調査で頑張ってもらいたいな。
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