35. 北東の遺跡
いろいろと難所は多かったけど、その日のうちに北東にある遺跡へとたどり着いた。
そこでは十数人の調査員たちが夕食の準備をしている。
ただ、調査用の車両みたいなものが見当たらないのが気がかりだな。
これくらいの人数がいれば、大なり小なり調査用の魔導車がいるはずなのに。
ともかく、リーダーさんを見つけて物資の引き渡しをしなくちゃ。
「すみません、ここの調査班のリーダーさんはいますか?」
「ん? それなら俺だ。エクスプローラーズギルドの者か?」
「はい。補給物資を届けにきました」
「ようやくか。ここ、道が悪いからな……」
「途中に落石もあって道が塞がれていましたからね。そのせいもあると思います」
「なにっ!? それは急いで撤去してもらわないと」
「私が戻ったあと相談してみます。とりあえず、持ってきた物資はどこに置きましょう?」
「ああ、そうだな。こっちに来てくれ。物資置き場がある」
リーダーさんに案内されて物資置き場に来ると、ほとんどの物資が空になっていた。
調査班の人たちが降ろしていく補給物資もほとんどが食料品であり、だいぶ食事に困っていたみたい。
こんな場所で食事に困るのはちょっとつらそう。
「……よし、受領のサインも書いたぞ。それにしてもアンクレット系列の魔導車とは、随分と豪華な車に乗ってるな。その分、ここまで来るのは楽だっただろうが」
「この魔道車でも結構大変でしたよ? ぬかるみは多いし、急な坂道を上り下り必要がありましたし」
「ああ、なるほど。それは補給物資が届かないわけだ。ところで、その車にはサポートシステムが付いているのか?」
「付いています。それがどうかしましたか?」
「ちょっと年代を確認してほしいものがあるんだ。セントラルシステムのデータに残っていれば嬉しいし、いまわからなくてもデータを持ち帰ってくれればセントラルシステムからデータを持ってくることができるだろう? 俺たちはまだこの場を離れられないからな。頼むよ」
うーん、これって勝手に引き受けてもいいものなんだろうか?
一応依頼になるし、そこのところを確認すると、謝礼は払ってくれるそうだ。
それなら問題ないだろう。
出発は翌朝ということなので、遺跡のそばで夜を明かし、リーダーさんに確認してほしいものの元まで案内してもらう。
この遺跡、魔導車が通っても大丈夫なくらい道幅が広いんだよね。
その辺からも、この遺跡を使っていた時代は少なくとも馬車はあっただろうと推測されているらしい。
馬車ってかなり昔から使われていた交通手段だからそれ自体は珍しくないんだけど、屋内、あるいはアーチの中を走るように設計されていたのは珍しいんじゃないかと想像されているみたいだ。
私にはさっぱりわからない。
「着いたぞ。この壁画だ」
「この壁画……上の方が砕けてわかりませんが、それ以外は保存状態がいいですね」
「だろう? 屋根が崩れ落ちて少なくとも数百年は経つと考えているんだが、この壁画はあまり色落ちなどがしていないんだ。どうだ、該当するデータはあるか?」
『検索してみましたがヒットする項目は見つかりませんでした。ただ、描かれている壁画の特徴として約4000年から5000年前の文明の物が似た傾向を持っています。これ以上はセントラルシステムに照会をかけてみるしかないでしょう』
「わかった。それじゃ、その方針で頼む。あと、今度来るときは研究用の移動型魔導車も連れてきてもらえると助かるな」
「それは私の一存では……」
「わかってるって。ほれ、依頼書だ。エクスプローラーズギルド経由で考古学ギルドに手紙を回してもらえるようにしてある。任せたぞ」
「そういうことでしたら。私たちはもう出発してもいいですか?」
「ああ。ここまでご苦労さん。帰りも気を付けてな」
うーん、この遺跡の謎か。
色あせない壁画とか結構ミステリアスな感じだね。
考古学ギルドがどう動くかわからないけど、しばらくここの物資補給を引き受けることにしよう。
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