33. エレメントの街での仕事開始
エッセンス伯爵との会談も無事に終わり、私たちは自由に行動していいことになった。
マーシャルワンはモルターズさんと一緒にいろいろと今後のことについて決めていくことになり、ドクタースリーは研究機関で魔導技術の底上げを行うらしい。
私はといえば、もちろんエクスプローラーズギルドの仕事である。
なにかいい仕事はあるかな?
「なるほど、エレメントの街のギルドマスターから推薦状をいただいていましたか」
「はい。どうでしょうか?」
「中を拝見させていただきますね。……なるほど、真面目で勤勉なエクスプローラーだと」
やっぱり私はそれなりに評価されていたみたい。
どんな仕事を回してもらえるかな?
「よろしいでしょう。エレメントの街の推薦状もありますし、あなたには街北東にある遺跡へ物資を輸送していただきます」
「街北東の遺跡ですか?」
「この街の周りは遺跡群となっており、それらの調査が活発に行われているんです。一番活発に行われているのは街南西部にある遺跡ですが、こちらはエクスプローラーズギルドではなく発掘調査団が直接物資輸送隊を雇っています。今回ルリ様に行っていただく北東部の遺跡は、距離は近いのですが道があまりよくないので苦労しているんですよ」
なるほど、それで私の出番という訳か。
私のワイルドアンクレットなら多少の悪路は関係ない。
ちょっとした段差ならアンカーとウインチで登ることもできる。
うってつけってやつだね。
「それでは明日の朝、物資を用意しておきますので取りにきてください。よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
物資の受け取りは明日か。
それじゃあ、ちょっとドクタースリーの様子でも見てこようかな。
研究機関でドクタースリーとの面会を申し込むと、少し待たされたあとにドクタースリーがやってきた。
機械だからよくわからないはずなのに、なんだか楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
いや、気のせいじゃないな。
『よう、ルリ! ワイルドアンクレットの改造依頼か?』
「そんなんじゃないよ。ちょっと様子を見に来ただけ」
『そうか、残念だな。ここの連中に聞いてもワイルドアンクレットは名車中の名車だと言われたんだが』
「それに、改造してもらうにしてもお金が足りません」
『それくらい無料でもいいぜ? いろいろ試してみたいことがあるんだ』
お婆ちゃんの魔導車を実験の道具に使われるのもやだなぁ……。
ともかく、改造は断って魔導技術の習熟度合いを聞いてみる。
まだ初日ということもあり、そこそこらしいけど。
『ともかく、周囲の魔力を動力機関と結合させて動かすというのは面白い発想だな! 俺たちのクラウピアにはまったくなかった技術だ! 本当に学んでいて楽しいぜ!』
「それはよかったよ。でも、やり過ぎたらマーシャルワンに怒られるんじゃない?」
『そこは大丈夫だ。いまは常にマーシャルワンと同期を取っている。教えてはいけないことはマーシャルワンに監視されているから教えられないし大丈夫だぞ』
それって結構だめなヤツでは?
あんまり信頼されていないっぽいなぁ。
ともかく、こっちは大丈夫そうだね。
『そういえば、ワイルドアンクレットの助手席を取り外してガンラックにするって前に話していなかったか? そっちはどうするんだ?』
「ああ、それ? もう少しお金を貯めてからかな。改造にもお金がかかるし、改造中はワイルドアンクレットが使えなくなるからお金を稼げなくなるし」
『金の問題は切実か。まあ、がんばれ』
ドクタースリーの適当な激励を受け、私は研究機関をあとにした。
さて、明日はエッセンスの街での初仕事だ。
がんばっていいところを見せないと!
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