29. 調査一時終了
クラウピアの調査が始まって10日が経過した。
その間、調査団はクラウピアの様々な場所を調べて回っていたらしい。
私はというと、基本的に調査には加わらせてもらえないので、どんな場所があるのかを見て回っていただけだ。
ただ、それも立派な調査として認めてもらえたようで、かつてクラウピアが栄えていた頃の文化を知る手がかりとなったみたいだ。
今回の調査では文化レベルまで調べる予定はなかったらしい。
結果として、娯楽にもかなりの技術を注ぎ込んでいたことが判明したようでなによりだ。
そんな調査も今日で一旦終了となる。
持ってきた食糧の問題もあるし、報告をあげる必要もある。
モルターズさんだっていつまでもクラウピアにいるわけにはいかない。
そういう訳もあってクラウピアから去ることになった。
ただ、帰りもマーシャルワンは一緒である。
「マーシャルワンはクラウピアにいなくても大丈夫なんですか?」
『マーシャルツーに任せてありますからね。定期的に戻る必要はありますが、基本的にはいなくても大丈夫です』
マーシャルワンも今回帰還したことにあわせて機能追加をしたらしい。
ワイルドアンクレットと同じように、どこからでもクラウピアへ来ることができるようになったようだ。
そのため、もし私と別行動になったとしてもマーシャルワンには問題がないというわけだ。
『それよりもドクタースリーが気になります。彼を10日間も放置してしまったため、なにかしでかしていないか心配で』
「ドクターシリーズってそんなに問題があるんですか?」
『問題があると言いますか……知的好奇心が先行しているタイプです』
それは心配にもなるね。
私は、また調査団一行を連れてエッセンスの街へと戻った。
今回も何往復もすることになるが、前回多額の依頼料をもらっているのであまり気にはならないかな。
全員を運び終えたら私の仕事は完了である。
エッセンスの街に戻ったら調査団一行は、今回の調査について資料をまとめるために研究施設へと帰っていった。
私とマーシャルワンはモルターズさんに呼ばれてエクスプローラーズギルドのギルドマスタールームに直行である。
「さて、まず今回は有意義な調査だった。未発見の遺跡……と言っていいのかわからないが、人跡未踏の地にある古代の街を発見できたことは評価に値する。お手柄だぞ、ルリ」
「はい。ありがとうございます!」
「それで、マーシャルワンからの要求はあの土地を独立した国家として認めてほしいということだったな」
『そうなります。クラウピアへ移動する手段は非常に限られており、いまのヒト族では私たちが招かない限り到達できないでしょう。それに、あの土地は険しい岩山の奥地にそびえ立つ高山の頂上にある場所、この国でも所有権を主張などできないはずです』
「まあ、俺はそう思う。だが、貴族連中の考えることは別だろう。たとえ険しい山の上でも税が搾り取れそうな土地があるなら手放さないだろうさ」
やっぱり、そのあたりは難しいか。
そんな都合よく話が進むはずもないよね。
でも、あの土地の領有権を主張したところで、自分たちでは行くこともできない。
そこはどうするんだろうか?
「税を取るにしても取る手段がないなら一緒だと俺は考えるんだがな。どうにもお貴族様ってのはそうでもないらしい。エッセンス領を治めるエッセンス伯爵は物わかりがいいんだが、クラウピアの座標から計算すると隣の領地にも一部が引っかかってるんだよ。そっちの領主は金に汚いことで有名でな」
『ふむ、お金の問題ですか。私たちの街には貴金属などの資源はありませんね。そういったものは、副葬品にされているか、昔のヒト族が出ていくときに持ち出したか、あるいは私たち機械兵の一部になっているかです』
「そうだろうな。それに、国土が減るとなれば国の問題でもある。国のお偉いさん方がどう動くかが最終的な決定になるだろうぜ」
『国王ですか。なるほど、確かにそうかもしれませんね』
やっぱりマーシャルワンの要求はそんな簡単ではないらしい。
国としては意味のなかった土地であっても、今後利用価値が生まれるなら話は別だそうだ。
そんなことを言い出しても、クラウピア側が交流を持とうとしなければ関係なんて生まれないのにどうしてそうなるんだろうか?
お偉い様たちの考えることってわからないな。
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