28. クラウピアの調査
すべての調査員を運び終えるとモルターズさんから約束通り報酬が支払われた。
報酬額は金貨10枚、人を少し運ぶだけでもらえる額としてはかなり高い。
本当にちょっとした臨時収入になったね。
「各員、これより本格的な調査に入る。まずはエアドローンを使い周囲の地形や植生、生態系を確認だ。その後、実際に現地へと足を運びエアドローンの観測内容と相違ないか確認する。ここはかなり標高の高い山の上らしい、気を抜くなよ」
モルターズさんのかけ声で調査員たちは各自仕事に取りかかり始める。
とは言っても、ほとんどの調査員はまずエアドローンで周囲を観測することから開始だ。
実際に足を運ぶのは明日以降になるらしい。
さすがに人跡未踏の地ともなれば慎重になるよね。
さて、私はどうすればいいんだろう?
「ルリか。困ったな、割り振れる作業はない。かといって帰られても我々の帰還方法がなくなってしまうからな。どうしたものか」
「うーん、とりあえず私も周囲の調査に行ってきてもいいでしょうか? 前回来たときも自分の足で調査した範囲は狭いので」
「わかった、許可しよう。あまり遅くならないうちに戻ってきてくれ」
「はい」
私はワイルドアンクレットに乗り込みエンジンをかける。
調査に行くと言ったけど、どこに行くべきかな?
やっぱり、あまり調べていない街の方を探索するべきか。
「うん、そうしよう。リザーブ、クラウピアの地図ってある?」
『以前改修を受けた時、インストールされています。どこへ向かいますか?』
「そうだなぁ。とりあえず広場みたいな場所があったら案内して」
『了解しました。このまま道なりにまっすぐ進み、突き当たりを右に曲がって進んだところに『星の庭園』とかつて呼ばれていた場所があるようです。そこへ向かいましょう』
「わかった、じゃあ、そこで」
『了解。ナビを起動します』
フロントガラスに表示されたナビはリザーブの教えてくれたとおり、この道をまっすぐ進むように示している。
マーシャルワンが案内してくれた場所は、かつての宿屋だった場所なんだけど、ここからもかなり近いようだ。
どんな場所なんだろう?
行ってみればわかるのは当然なんだけど、クラウピアにある『星の庭園』ってなんだかわくわくする。
早速出発しよう。
ナビに沿って進みながら眺めるクラウピアの景色は、前回来たときよりもきれいになっている気がした。
ひょっとすると、機械兵たちがヒト族を迎え入れるために掃除しておいたのかもしれない。
きっとそうだろうな。
そうじゃなきゃ、入り口を塞いでいた壊れた門も撤去しないだろうし。
細かいところに気が利くんだよね、機械兵たちって。
そして、たどり着いた『星の庭園』。
そこは色とりどりの花々が咲き誇る、とても美しい庭園だった。
でも、最近までこの街は管理されていなかったはずなのに、どうしてこの庭園には花が咲いているんだろう?
『おや? あなたは、確かルリ様』
「あ、機械兵さん、こんにちは。この庭園っていつの間に整備されたんですか?」
『この庭園でしたらルリ様がお見えになったあと、ガーデナーたちが整備したものです。地下プラントで育てていた花を地上へと移植したようですね』
じゃあ、この花も元々は地下で育てていたんだ。
もっと詳しい話を聞くと、花自体は地下で大量に育てているらしい。
普段はお墓に供えるためにしか使っていなかったその花を、こうして地上の庭園に植え始めたのだとか。
地下で育てているときは季節の制限は考えなくてもよかったみたいだけど、地上に移すときはそこも考慮したみたい。
やっぱりちゃんと考えているんだね。
その機械兵におすすめの場所がないか聞いてみると、『海の庭園』という場所がおすすめらしい。
こんな高山の上に海というのも変な話だが、一度行けばわかると教えられて行ってみることにした。
場所は……ちょっと遠いけど魔導車に乗ってならそんなにかからないか。
とりあえず行ってみよう。
再びナビに案内されて『海の庭園』へとやってきた。
ここはどうやら地下に広場があるらしい。
ワイルドアンクレットは道路脇に止めておいてチャオと一緒に入ってみよう。
ここはどんな光景が見られるのかな?
期待しながら階段を降りていった先にあったのは、巨大なドーム状になった広場とそのドームの周りを泳ぐ魚の群れである。
これ、どうなっているの?
『おや、ルリ様。ようこそ、『海の庭園』へ』
「あ、はい。この庭園ってどういう仕組みになっているんですか?」
『この庭園はとある海中に映写装置を沈めておき、その映像を常に映し出すものとなっております。この庭園そのものが海の中にあるのではありませんのでご心配にはおよびません』
海の中に映写装置か……。
これって遠く離れた場所に海中用ドローンを沈めておき、リアルタイムでその映像を映しているってことだよね?
こんな技術までクラウピアにはあったんだ。
本当に驚きだなぁ。
この庭園はクラウピアから遙か遠い『海』を知るための場所でもあったらしい。
研究をするためには実際に現地へ行かなければいけないけれど、どのような場所かを知るだけだったらこの庭園に来るだけでも十分だからね。
昔はクラウピアの住民たちで賑わっていたこの庭園もいまは私しかいない。
なんだか寂しさを感じるな。
もっとたくさんの人が来るといいんだけど。
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