22. 空中墳墓とその管理者
私はエアドローンも飛ばし、この遺跡を調査する。
だんだん日が傾き、石の壁で周囲が暗くなってきた頃、エアドローンを管理していたリザーブが変わったものを見つけたと連絡してきた。
岩山の奥に続く道を発見したらしい。
その道はいまでも使っている形跡があり、扉も風化していないらしい。
そういわれてみると、この遺跡も出入り口となる扉こそ破壊されていたが、それ以外の建物で崩れていた場所はない。
建物の中に埃は積もっていたけど、窓もガラスと思われるもので塞がれており、砂が入り込んでいる場所はなかった。
思い返してみると、なんだか不気味だ。
ちょっと怖くなってきたけど、明日はその岩山の奥へ続く道を中心に探索してみよう。
それじゃあ、シートを倒し、ベッドにして寝ることにしよう。
「キュッ」
早速チャオも抱きついてきた。
まあ、ここなら安全だろう。
では、お休み。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
『起きてください、ルリ』
「う、うぅん。リザーブ?」
『油断しました。我々はなにかに取り囲まれたみたいです』
「えっ!?」
『周りを見てください』
リザーブに言われて周りを見てみると、周囲には柱が立てられ、そこになにか紫色の光りがほとばしっている鉄線がぐるぐると巻かれており、安全に出られそうな状態にない。
いつの間にこんな状態になったのかリザーブに聞いてもわからないそうだ。
気が付いたらこの柵の中に私たちがいたみたいである。
ただ、リザーブの内部時間を確認したところ、2時間ほど空白期間があるため、その間に建てられたのだろうと、リザーブは説明してくれた。
まあ、問題はそこじゃないんだけど。
こんなピンポイントに私たちを閉じ込めておくトラップが出てくるわけがないし、誰かが意図的に仕掛けた物のはず。
それなら、その仕掛けた相手が出てくるのを待つとしよう。
「……なかなか出てこない」
夜の最中に起こされ、もうそろそろ夜が明ける時間だ。
それなのに、私たちを閉じ込めた相手は姿を現さなかった。
眠たい中、我慢して起きていたのが無駄になった感じがする。
そして、夜明けの合図である太陽の日差しが遺跡の周りを囲う石壁を照らす頃、ようやく待っていた者が現れた。
ただ、相手は人型をしているが人ではない。
ロボットだ。
せわしなく動く赤いモノアイと銀色の頭部、藍色の胴体、手の部分はまた銀色になり、足には靴を履いている設定なのか茶色く塗られている。
もっとも、それらすべてがメタリックな光沢を備えているわけなんだけどね。
『お目覚めになったか、お客人』
「夜からずっと待っていたんですけど」
『なんと。それは申し訳ない。ヒト族は夜明けまで眠り、日が昇ってきた頃に起き出すものだったので、ついそれにあわせてしまい』
なんだか、このロボットには悪気がなかったみたい。
それにヒト族の習慣に合わせていたっていうことは、この遺跡にはヒト族が住んでいたのだろう。
もう少し話を聞き出せないかな?
「ねえ、私はルリって言うんだけど、あなたの名前は?」
『私はマーシャルワン。この空中都市『クラウピア』を統括する機械兵にございます』
「えっと、一番偉い……ロボット? ってこと?」
『その認識であっております。それで、ルリ様はどうしてこの地へと?』
どうしてか。
説明しにくいんだけど、理解してもらえるだろうか?
「えっと、『幻獣の抜け道』を使ってこの……『クラウピア』? がある山にたどり着いたの。それで、この周辺の地図は私たちの情報にはなかったから調査していたんだけど、その時この遺跡を見つけて。勝手に入り込んでごめんなさい」
『いいえ。門衛を付けていなかった私たちの不手際でございます。まさか、この高山にヒト族が再び現れるとは』
「再び、ね。この都市ってどれくらい昔からあるの?」
『この時代の暦の読み方がわかりませんが、私たちの時代の暦ではそろそろ1万年程になります。ただ、星の巡りを基準にしたほうがわかりやすそうなので、そちらを基準に答えますと3万年以上ですね』
3万年以上昔の遺跡!
これはすごい価値のある遺跡かも!
「マーシャルワン、もしよかったらこの都市を案内してもらえる?」
『よろしいでしょう。昨日の様子を確認した限りでも、都市を破壊しようとはせず、調査の範囲だけで収まるような行為しかしていませんでした。ですが、表面的な都市部の調査はそろそろ飽きたでしょう。本日は地下墳墓へとご案内いたします』
地下墳墓!
これまた歴史がありそうな遺跡!
マーシャルワンは私たちの周りの囲みを撤去してくれると、私たちを先導して移動を始めた。
さすがはロボット、ワイルドアンクレットが走る速度にも負けない速度で飛んでいる。
人間にはできない行為だ。
マーシャルワンが案内してくれたのは、昨日の夕方にリザーブが発見した岩山の奥への通路だった。
正確には、ここの通路を発見したため、マーシャルワンとその部下が私たちを調べるためにあの囲いで閉じ込めたらしい。
私たちのことを信じてくれたのは、私が幻獣と契約していることがわかったためだとか。
幻獣が悪人とは契約しないことは3万年前から変わらぬ常識らしい。
天井から照明で照らされ、わりと明るい道を進んでいくと、突き当たりに大きな扉があった。
その脇にはなにか操作パネルのようなものが置いてあり、マーシャルワンが操作をすると扉が開き始める。
扉が開いた先に広がっていたのは、花が咲き乱れる庭園だった。
『驚かれたでしょう。ここが私たちを作りあげたマスターたちの墳墓です』
「うん、驚いた。どうやって花を育てているの?」
『ガーデナーロボが管理をしております。そのほか、自然光を取り入れるために、天井や側面がクリスタルとなっています』
マーシャルワンの説明通り、墳墓の天井や壁面は透明ななにかでできている。
あれがクリスタルなんだろう。
あれ、でも、あれだけ巨大なクリスタルがあったのなら、エアドローンが見逃さないはずなんだけど……。
『それは、外部からだとただの壁に見えるような処理が施されているためです。外側から見てもゴツゴツとした岩壁にしか見えません』
こんなところにも超技術が使われていた。
すごいな、この遺跡!
あと、ここは墳墓ということで、この遺跡のかつての住人たちが眠る場所でもある。
ただ、ここの住人たちは、体を灰になるまで焼き、それを壺に収めて墓の中に埋めるという形式を取っていたらしい。
そのため、副葬品も故人の私物だとか生前の記録だとかがほとんどらしい。
いわゆる貴重品はないそうだ。
ここに眠っている人たちの安寧が脅かされないならそれでいいかな。
それにしても、この空中墳墓、すごい迫力があるなぁ。
岩の中に広がる花畑、それだけでも絵になるね。
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